これが女の幸せなのだろうか。お気に入りのキャラに囲まれた恋歌は、フフッと上機嫌な笑みを浮かべた。 例外はあるが女の子は王子様を夢見る時期がある、愛されたいと思う者もいるだろう。恋歌も今でこそは黒歴史と笑い飛ばしているが、お姫様になりたいと思っていた時期があった。 「恋歌、これ何?」 「先生がくださったのよ。お守りだって」 「へえ……、食堂で似たようなの見かけたことあったから気になってね」 「分かるわ、どこにでもあるお皿にしか見えないわよね」 現実で叶うはずもない、王子様とお姫様の夢物語。恋歌もそれをわかっている。わかっているからこそ、『夢』を存分に楽しもうと思う。 (ここは夢の世界だもの) 周りに侍るキャラ達は恋歌を愛している。そこに恋愛感情が含まれているかは分からないが、恋歌にとってはそれは些細なことなので気にしない。 要は、愛してくれればそれでいいのだ。愛を捧げ、大切だと囁いてくれればいいのだ。 (これは夢。私の夢) 恋歌の思い通りになる恋歌の夢の世界。欲望を剥き出しにしていっても、誰にも咎められることはない。 フフッと恋歌は笑う。思い通りになる世界に少しずつ少しずつ枷が外れていき、恋歌の欲望は底無しになっていく。 (だから愛して、私を) ふと、視界にあるものが入った。忍たまの先生だという男が、お守りだと言って持って来てくれたどこにでもあるような皿。決して割ってはいけないと忠告されたが、元より恋歌の興味外なのでどうする気にもなれない。 お気に入りの中でも一等お気に入りキャラに甘えると、優しく受け止めてくれた。それに恋歌は気をよくして声を上げて笑う。 (夢の中でくらい、私を愛して) 現実では味わえないからこそ、恋歌は夢の中で望むのだ。 20130216 prev 栞を挟む next [目次 表紙 main TOP] ![]() |