仙蔵 「さて、残るは第一位ですが……」 文次郎 「……」 仙蔵 「もうお分かりでしょうが、『幼馴染みな俺等』の主人公ポジションにいる、六年い組の潮江文次郎です」 文次郎 「……ん、まあ、有り難うございます」 仙蔵 「投票数は二位を大きく引き離して、57票。コメントも6つと一番多いな」 文次郎 「それは有り難いんだが……」 仙蔵 「何を複雑そうにしている?」 文次郎 「……いや、その……」 仙蔵 「よく分からんが……、内4つがお前個人宛てだ。六い宛てと六いは宛てのはもういいだろう」 文次郎 「……おう」 仙蔵 「では、まとめて発表するぞ」 【やっぱり彼しか居ないでしょう!】 【大切な幼なじみですもの!文次を甘やかして怒ってもらわなきゃいけません!】 【文次郎ともっとイチャイチャしてほしい!】 【しおえもんが可愛すぎて生きるのが辛いです】 文次郎 「……コメント有り難うございます。ですが別に俺は伸一郎とイチャイチャしているつもりはありませんし、何より可愛くありません」 仙蔵 「……ああ、成る程。このコメントを見て複雑そうにしていたのか」 文次郎 「……」 仙蔵 「然し、このアンケートに限らず寄せられるコメントの殆どが『可愛い』『もっとイチャついて』ではないか」 文次郎 「それが可笑しいんだろ。確かに伸一郎は大事な幼馴染みで家族だ。あいつに甘えるのも極たまにだがあるし、隣は俺のだと自負もしている。 だがイチャついていると思われるのは心外だ。俺とあいつは適度な距離をだな……」 仙蔵 「……文次郎、お前まさか本気で自覚がないのか……?」 文次郎 「……? 何の自覚だ?」 仙蔵 「幼馴染みとはいえ男にだ、抱きつかれたり膝枕要求されたりあーんされたり添い寝されたりするのは普通じゃないだろう?」 文次郎 「そりゃあ、男にそんなの要求されれば気持ち悪いが……。 伸一郎は家族なんだから別に可笑しくないだろ?」 仙蔵 「……薄々感じてはいたが、まさかここまでとは……」 文次郎 「仙蔵?」 仙蔵 「文次郎、私はお前の将来が心から心配だよ。卒業までに常識を叩き込まなければならないな」 文次郎 「何故話がそこまで飛躍するんだ」 仙蔵 「ああ、そうか。この辺りが可愛いと思われているのだろうな。今漸く理解できたよ」 文次郎 「仙蔵、話が全く見えないんだが」 仙蔵 「ここまでお読みになって下さり、有り難うございました。急用が出来た為、ここでお終いにさせていただきます」 文次郎 「はっ、仙蔵んな急に……」 仙蔵 「それでは、有り難うございました。これからも『幼馴染みな俺等』を宜しくお願い致します。 ゛――さあ行くぞ文次郎! 貴様に幼馴染みとの距離感の常識を徹底的に叩き込んでやろう!」 文次郎 「ぐっ、せんぞ、首がしま……っ」 20130131 prev 栞を挟む next [目次 表紙 main TOP] ![]() |