※現パロで歳の差(年齢操作) ※男主→中学生 ※六い&留三郎→幼稚園生 年明けに受験を控えている伸一郎は、切羽詰まった状況にも関わらず近所にある商店街に来ていた。理由は至極単純で、お使いを頼まれたからである。 最初こそは「何で俺が」と駄々をこねたが、その訳を聞いて直ぐに己が使われることを納得した。思えば受験を支えてくれる両親が、理由もなしに邪魔してくるはずがない。 最後の息抜きでもしてこいと多めのお小遣を貰えたのも加わり、伸一郎は意気揚々と寒い外へと繰り出したのだ。 「伸にい、おそとはさむいんだな。いきがまっしろだ!」 「おー、そうだな文ちゃん。はやくケーキ買ってお家帰ろーな」 「おう!」 マフラーと手袋とニット帽という防寒完備の伸一郎は、えっちらおっちらと隣を歩く小さな存在にデレッと顔を緩めた。 今年六歳になった『幼馴染み』の潮江文次郎である。幼馴染みと呼ぶには相応しくない年齢差ではあるが、伸一郎は特に気にしていない。 この小さな幼馴染みを伸一郎はこれでもかという位溺愛している。どれくらいかと言うと、運動会やお遊戯会の時は父親集団に混じりビデオを構えて文次郎を追い掛け、七五三の時はカメラを焚きまくり、誕生日には文次郎の欲しい物を買ってプレゼントとしたり、文次郎の実の母親に「伸一郎は文ちゃんの第二のパパね」と言われる程である。 その文次郎にクリスマスプレゼントを渡さないわけがなく、受験勉強の為文次郎へのプレゼントを買う暇もなかった伸一郎を見兼ねた両親が「ついでにプレゼントも買ってきたら」と神の手を差し出した、という訳だ。 表向きは両家のケーキを買いにだが、まだ小さい文次郎がそれに気付く訳もなく。久しぶりに遊んでくれる年上の幼馴染みに始終ニコニコと上機嫌である。 「あのな、伸にい! 仙がな、ふゆやすみにガイコクにいくんだ! オレいいなっていったら、仙がおみやげくれるって! あと、伸にいにもかってくるって!」 「おー、流石立花さん家。お土産楽しみだなー」 「伸にいには、わらにんぎょうかってくるって仙いってた!」 「なんちゅうチョイス。立花仙蔵の将来が怖いぜ」 「なー伸にい、わらにんぎょうってどんなのなんだ?」 「あー、うん、使用方法に難有りの御人形さんだな」 「オレもほしい! 伸にいとおそろいがいい!」 「嬉しいけど、サンタさんに頼んだらだめだぞー? サンタさんビックリするからな」 寧ろサンタに対する嫌がらせである。 さらっとサンタの話題を出して、何が欲しいか聞き出そうと思っていた伸一郎だったが、予想に反し文次郎はえっと固まった。次いでシュンと落ち込んで見せたので、慌ててその小さな身体を抱き上げる。 「どうした文ちゃん! ポンポンでも痛いのか?」 「ポンポン痛くないぞ」 「じゃあどうしたんだ?」 上機嫌だったのが一転、ムスッと唇を噛み締める文次郎を宥め訳を聞くと、キュッと抱き着かれた。肩にグリグリと頭を押し付け「あのな」と話し出す。 「とめがな、ようちえんでな」 「とめ……ああ、食満留三郎か。とめ君がどうしたんだ?」 「……サンタさん」 「ん?」 「サンタさん、いないって……」 ズビッと、鼻を啜る音が響いた。ジワリと肩付近が湿り気を帯びたので、泣いているのだろう。 「サンタさんいなくて、プレゼント、パパとママがくれるんだって。サンタさん、うそだって」 やりやがったなクソガキ、と伸一郎の目が据わった。 どうやら、同じ幼稚園に通う友人にサンタクロースの存在を否定されて戸惑っているらしい。純粋無垢でサンタクロースがプレゼントをくれると信じている文次郎にとっては、衝撃的な話だっただろう。 サンタさんいないのか、と悲しそうに呟く文次郎の頭を撫で、伸一郎はその身体をぐっと持ち上げ肩車をしてやった。急に視線が高くなった文次郎は、丸い目を更に丸くしてパチパチと開閉する。 「伸にい?」 「あのな、文ちゃん。サンタさんはいるんだ」 「でも、とめが……」 「サンタさんはな、信じるいい子の所にしか来ない、秘密のおじさんなんだ」 その言葉に、文次郎は首を傾げた。よいしょと伸一郎の顔を上から覗き込み「ひみつの?」と聞く。 「そう、ひみつのおじさん。サンタさんにお手紙書いていい子で待っている子の所に、プレゼントを持ってくるんだ」 「じゃあ、オレのとこくるのか?」 「勿論。文ちゃんがサンタさんいるって信じて、お手紙書いていい子で待ってたらな」 「とめは? とめと仙はもらえるのか?」 「んー、どうだろうな。仙君は分からないけど、とめ君はもらえないだろうなー」 「とめ、もらえないのか……」 多少意地悪も込めて言うと、文次郎は何か考え込むようにして黙り込んだ。伸一郎は文次郎の足を握り落とさないよう気をつけながら、商店街へと歩き出す。 「文ちゃんはサンタさんに何を頼むんだ?」 「……えっとな、しゅりけん!」 「おっ、忍者かー。格好いいな」 「あと、とめのも!」 「……ん? とめ君のも?」 「だってとめもらえないんだろ? だからオレがかわりにたのむんだ!」 ニパッと無邪気な笑みを浮かべる文次郎に、伸一郎はしまったと顔をしかめた。まさかここで天使の如き純粋無垢な優しさを発揮するとは、と数分前の己を恨む。 「……文ちゃん、因みに何を頼むんだ? 同じ手裏剣?」 「くないー!」 「……そっかー。サンタさん持ってきてくれるといいなー」 無邪気で可愛い幼馴染みに、伸一郎は財布の中身を思い出し息を吐く。 どうやら貰ったお小遣は、自分の為には使えないらしい。 20121225 栞を挟む next [目次 表紙 main TOP] ![]() |