※ネタ帳より異能現パロ 「久しぶり、文ちゃん」 ゴウ、と激しく燃える炎の音が轟いた。周りを囲み広がったそれは、容赦なく文次郎の体力を削っていく。 タラリと汗が流れ落ちた。文次郎は左右形の異なる目を大きく見開き、対峙する青年を見つめる。 「伸一郎……」 伸一郎と呼ばれた青年は、ニッと無邪気な笑みを浮かべた。火に囲まれているというのに汗一つ流れていない。 「文ちゃんなら絶対来るって思ってた。庶務課で働いているって知った時はちょっと迷ったけど、文ちゃん変わってなくて良かったー」 ケラケラと笑いながら、伸一郎は体力が半分以上削られ片膝をつく文次郎の前にしゃがんだ。顔を覗き込み、ゆっくりと手を伸ばす。 「けど、異能者を捕まえる警察は嫌いだって言ってたよな? 何で嫌いな警察になったんだよ」 その手は頬ではなく首に伸び、そっと壊れ物に触るように添えられた。数回撫でられ、文次郎はそれが返事を促していることに気付く。 「お前を、探す為だ……」 震える唇を必死に動かし告げる。伸一郎が「俺を?」と首を傾げたので、「ああ」と反す。 「お前は俺の、家族だから……」 文次郎と伸一郎の関係を簡単に言うならば『幼馴染み』である。だが文次郎は伸一郎を『家族』の一員として見ていた。数年前、異能者を捕まえる警察とそれに反対する過激派による抗争に巻き込まれ生き別れになった後も、ずっと。 伸一郎を探す為に大嫌いな警察になり、ひたすらにその行方を追った。雑用課と呼ばれる庶務課に入ったのは、せめてもの警察に対抗する意思だった。 「伸一郎、何で……っ!」 漸く見付けた行方の手掛かり。それを頼りに探し回りやっと見付けた幼馴染み。だが、感動の再会を果たす前に幼馴染みは攻撃を仕掛けてきた。 憎しみのこもった目を、文次郎に向けて。 「俺、文ちゃんのこと大好きだぜ。大切な幼馴染みで家族だって、俺も昔からずっと思ってる」 ふわりと伸一郎は笑う。柔らかに笑ったまま、グッと首に添えた手に力を入れた。 地面に押し倒し馬乗りになり、ギリギリと文次郎の首を絞める。 「だけどな、文次郎。それと同じくらいお前のことが――」 苦しげに呻く文次郎の額に己のを当て、伸一郎は尚も笑った。笑い首を絞めながら、言葉を紡ぐ。 「――憎くて仕方ないんだ」 伸君、と呼ぶ掠れた文次郎の声に、伸一郎は泣きそうに顔を歪め。 グッと、手に力を込めた。 20121125 JAM.様へ prev 栞を挟む next [目次 表紙 main TOP] ![]() |