「あのさ、俺達ってダチだったりする?」 団子と共に部屋にやって来た同室者の幼馴染みの言葉に、仙蔵は我が耳を疑った。同室者が目的だと思っていたのだがそうではなく自分だったのか、という驚きが全て吹き飛んでしまい、ダチとは一体何なのだろうかと脳が現実逃避を進めて来る。 そもそも、目の前にいる男との仲は良好とはいえないものだと仙蔵は自負していた。認めたくはないが同室者を巡り度々対立し、手は出さずとも口で大喧嘩しては原因である同室者に止められてきた。委員会の後輩からは「仲良いですね」と言われたこともあったが全く逆、仲は全くよろしくない。 なのに何故、この男は事実とは逆のことを聞いてくるのか。仲が悪いのに、友達であるはずがないではないか。 『少しは素直になってみたらどうだ? 仙蔵』 否定する脳に、何かが囁いた。不思議なことにそれは同室者の声を真似ており、跳ね退ける前に言葉を発する。 『言葉に出すのが恥ずかしいなら、態度で示せばいいだろ』 何が、恥ずかしいというのだ。何を、恥ずかしがるというのだ。 脳内で悪戯っぽく笑う同室者を手で黙らせてから、深く息を吐く。 「その団子はなんだ?」 友達であるがないだろう、という言葉が何故か別のものとなって出て来た。 意思と反するそれを仙蔵が否定する前に、伸一郎が罰が悪そうに顔をしかめながら「いやぁ」と言葉を紡ぐ。 「もしダチだったら、今までのお詫びというかなんというか、ぶっちゃけ手土産無しにここまで来るの無理っつうか……」 「要するになんだ」 「……一緒に食べねえ?」 エヘッとわざとらしく笑う伸一郎に、仙蔵は呆れた表情を浮かべた。だが折角の甘味である、例え仲が悪い相手だろうとも断るのは勿体ないだろう。 「茶は自分で用意しろ」 「へいへい」 プイと顔を背け、然し今まで作業をしていた手を止める。伸一郎は質問の答えが得られなかったが特に気にしてないらしく、何も追及してこない。 「素直じゃねえなあ、あいつら」 それを少し離れた所で見ていた全ての原因である同室者――文次郎は、呆れたようにかつ微笑ましそうに笑った。 ――――― 意地でも認めたくないのになんかこそばゆい仙蔵と、何と無く認めてしまってこそばゆい男主。全部お見通しでじれったい文次郎。 2013/12/17 栞を挟む next [目次 表紙 main TOP] ![]() |