※幼馴染み主と尾浜の会話や行動に頭を痛める文次郎 「我々、甘味を愛する者一同は!」 「正々堂々、潮江先輩に甘味を強請ることを誓います!」 「誓わんでいい誓うな!」 ズキズキと痛む頭を押さえながら、潮江文次郎は深く息を吐いた。そろそろ一年は組の先生のように胃が痛くなってきても可笑しくないだろう。頭痛の原因である松平伸一郎と尾浜勘右衛門は気にせずあれが食べたいこれが食べたいと騒いでいるので尚更である。 そもそもこうなったのは、偶然町に出掛けていた文次郎と伸一郎の幼馴染みコンビと尾浜が遭遇したからである。伸一郎と尾浜は妙に気が合うらしく、妙なテンションで騒ぎ出したのだ。 その騒ぎっぷりは周りの注目を集めるほどで、先程から突き刺さる道行く人の視線も痛い。 「松平隊長! あちらの店はみたらし団子が美味しいと評判です!」 「そうか尾浜隊員! ではあそこに文ちゃん副隊長を連れていき一服しようではないか!」 「了解しました! 俺は桜餅が食べたいです潮江副隊長!」 「俺あんみつー!」 みたらし団子じゃないのか。そう人々の目は語っている。因みに文次郎も同感である。 「だからなんで俺が奢る前提なんだよお前等……」 言いたいことはたくさんあるが、文次郎はツッコまないでおくことにした。隊長や副隊長、そのノリの訳、最初の選手宣誓ならぬ甘味宣誓とはどんな関係があるのか等と言いたいことは山積みだが、これらに触れれば最後、文次郎は確実に医務室送りになるであろう。それだけはどうしても避けたい。 それ故のこの質問だったのだが、二人はえっと首を傾げる。 「そういやなんでだ?」 「なんででしょうね?」 「ノリ?」 「ノリでしょうか?」 「ノリか」 「ノリですね」 「文ちゃんこれはノリだよ! さあ文ちゃんも一緒に!」 「潮江先輩もノッて甘味を奢ってください! 桜餅とおしるこ!」 「あんみつと饅頭!」 さりげなく注文が増えている。 二人は文次郎の腕をそれぞれ片方ずつ掴み甘味処へと連行する。ズルズルと引きずられていく文次郎の目は既に涙目である、胃どころか内蔵全部が痛みだしてきた気もしてきた。 どうしてこうなったのか、文次郎にも訳が分からない。言えるのはただ一つ、伸一郎と尾浜を引き合わせてはいけないこと。 「お前等もう黙ってくれ頼むから!」 心からの悲痛な叫びに、伸一郎と尾浜は声を上げて笑った。 20130301 匿名様へ prev 栞を挟む next [目次 表紙 main TOP] ![]() |