SS
名探偵の仮復活

※額に軽いキス描写有り注意

 安楽椅子探偵として警察に協力していた新一が、とうとう現場に復帰することになった。とは言っても一人で出歩けられるようになった訳では無い。本当はまだ庭にしか出ることが出来ないでいる。
 然し、家の中に居ては解決できない事件が起きてしまったのだ。元より新一は現場主義の探偵。決断は早かった。
「文次郎、傍に居てくれるか?」
「ああ、だが俺は現場に入る事はしないぞ」
「見えるところにいてくれるだけで十分だ」
 文次郎の車に飛び乗り事件現場に急ぐ。既に警察には連絡済みなため、今頃野次馬やマスコミ等の対応に追われているだろう。新一はまだ世間に出る訳にはいかないのだから。
 現場近くは交通整理が行われていた。文次郎の車を見た警官の一人が直ぐに連絡を取り始め、敬礼と共に出迎える。文次郎は案内された一角に車を止めた。助手席に座る新一を抱き寄せ、その額に軽く唇を当てる。
「行って来い。耐えられなくなったら、俺を探せ」
 少し早目の復帰をする新一へのおまじない。家政夫という立場を守る為に現場に入らないと決めた文次郎からの、守りの儀式。
 何よりも効果があるまじないを受けた新一は文次郎から離れ、車のドアノブに手をかけた。一度深呼吸してから、勢いよく開ける。
「行ってくる」
 一歩、外に出る。地面に足をつけた瞬間――新一の纏う空気が一変した。
 思わず膝まつきたくなるような尊厳な雰囲気に、周囲の警官がのまれる瞬間を文次郎は確かに見た。そして悟る、この事件は直ぐに解決されることになると。
 新一の蒼の慧眼は、どんな罪も見逃すことは無いだろう。そして罪を犯した者は逃げられないことを知り、彼に断罪されることを覚悟するだろう、否、もしかすると自ら選ぶかもしれない。
 断罪されるという事は、あの慧眼に映してもらえると言うことなのだから。
 文次郎の予感通り、その事件はスピード解決されたのだった。


2015/02/17 pixiv
2015/02/26 加筆修正
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