▼キャラレス

伸一郎
「あっ、俺この子達に聞きたいことあんだけど」

団蔵・左吉
「なんですか?」

伸一郎
「『稚児趣味』って言葉の意味、二人とも知ってっか?」

文次郎
「!? しっ、伸一郎!?」

伸一郎
「いや、向こうの二人は知らないみたいだったし、そもそも向こうの文次郎君が教えさせないと思うけどさ。
 こっちの二人はどうなのかなーって思って」

文次郎
「だからと言って……っ!」

団蔵
「知ってますよ。食満先輩みたいに後輩可愛がる人のことですよね?」

文次郎
「……えっ?」

伸一郎
「微妙な回答来たー!」

左吉
「間違ってましたか? よく潮江先輩が良く食満先輩に『稚児趣味』とか『ショタコン』とか言ってましたから、僕達てっきり……」

文次郎
〈しっ、伸一郎俺どうすればいいんだ!?〉

伸一郎
〈教えれば? 今のご時世知らない子供の方が少ないって〉

文次郎
〈でっ、でも、向こうの『俺』は……!〉

団蔵
「先輩? 急に黙ってどうしたんですか?」

文次郎
「……っ、あー、その……」

団蔵・左吉
「?」

文次郎
「……すまん」

団蔵
「先輩?」

左吉
「なんで謝るんですか?」

伸一郎
「……はあ、ったく。
 二人とも、文ちゃんのいうこと丸呑みしちゃ駄目だぜー。食満は純粋な後輩大好き先輩であって、『稚児趣味』でも『ショタコン』でもないんだからさ」

団蔵
「どう違うんですか?」 

伸一郎
「食満のは後輩愛、『稚児趣味』は恋愛……に近い感じだな」

左吉
「恋愛、ですか?」

伸一郎
「そっ。大袈裟に言えばだけど」

団蔵
「ならなんで潮江先輩は、食満先輩のこと『稚児趣味』って言うんですか?」

伸一郎
「食満が嫌がる言葉だから」

団蔵
「成る程」

左吉
「食満先輩の嫌がる言葉を言っていただけだったんですね」

伸一郎
「いえーす。詳しいことは授業で習うだろうから、その時までこれのことは忘れて、別の知識を増やしておけよー。
 そっちの方が勉強の効率が良くなって、立派な忍者になれるからな」

団蔵・左吉
「はい、分かりました」

文次郎
「……」

伸一郎
「子供は親の言うことをよく聞いているから、発言には注意しろよー文ちゃん。あと向こうの文次郎君もね!」

団蔵
「……」

左吉
「……」

伸一郎
「……黙っちゃってどうした?」

団蔵
「いえ、向こうの『俺』達に言われて気付いたんですけど、松平先輩って潮江先輩のこと『文ちゃん』って呼んでますよね」

伸一郎
「因みに文ちゃんは俺のことを、『伸君』って呼んでます」

文次郎
「昔の話だ」

伸一郎
「今も時々……いったあー!?」←背中を摘まれた

文次郎
「別に俺は呼ばれ方に拘りなどもっとらんし、ちゃん付けされた位でどうとも思わん」

団蔵
「ひゃー、何か意外です」

左吉
「ちゃん付け嫌がるイメージがありました」

文次郎
「……どんなあだ名も『なっちゃん』に比べればマシだからな……」

団蔵
「……はい?」

伸一郎
「『なっちゃん』とは! 文ちゃんの二つ上の双子先輩に『泣き虫だから』という理由でつけられたあだ名なのだ!」

文次郎
「もう泣き虫じゃねえよ俺は!」

団蔵・左吉
「……えっ?」

団蔵
「先輩、本当に泣き虫、だったんですか……?」

左吉
「僕達、てっきり嘘だと……」

伸一郎
「ははっ、文ちゃんは学園でも有名な泣き虫だったんだぜー」

文次郎
「……」

伸一郎
「ただ、泣き虫といっても甘えの『涙』じゃなくて、強くなる為の『涙』だったけどな」

団蔵
「強くなる為の、」

左吉
「涙?」

伸一郎
「文ちゃんが泣く理由は何時も『自分が不甲斐ない』からだったんだ。
 周りの才能に嫉妬せず、自分の弱さを周りのせいにせず。ただ自分が悪いんだと思い込んで。
 そうして泣いて、でも文ちゃんはまた立ち上がった。『涙』を『強さ』に変えて、前に進んだ」

団蔵
「ほわあ……」

伸一郎
「文ちゃんは確かに『泣き虫』だった。けれどイコール『弱虫』でも『弱者』じゃない――『挑戦者』だったんだ」

左吉
「挑戦者……」

文次郎
「……余り美化しないでくれ。俺のはそんな大層なものじゃない」

伸一郎
「そんなことないって。文ちゃんは――」

文次郎
「いいから黙ってろ。
 ――団蔵、左吉」

団蔵・左吉
「はっ、はい」

文次郎
「俺は、泣くなとは言わない。泣くことも時として必要だと、身を以って知っているからだ。
 だが、そこで立ち止まるな。何故泣いたのかを考えろ。そして二度とそのことで泣かないと自身に誓い、その為の鍛練を怠るな。
 ――そうすればその『涙』は意味のあるものに変わり、お前達の力になる」

団蔵
「はっ、はいっ!」

左吉
「頑張ります!」

文次郎
「ああ、頑張れ」

伸一郎
「頑張るのもいいけど程々にな。この忍者バカみたいになったら駄目だぞ」

文次郎
「誰が忍者バカだ」

伸一郎
「忍者バカじゃん。忍者は万能の如く何でも出来るようにならないといけないって思って、苦手だろうがなんだろうが全部に挑戦していったくせに」

文次郎
「うっせえ! 忍者に不得意はあってはならないんだよ!」

伸一郎
「それで出来なくてぴーぴー泣いてたじゃん! 努力して出来るようになったのは凄いと思うけどさ、文ちゃん無駄に頑張りすぎなんだよ!」

文次郎
「お前が頑張らなさ過ぎなんだ! ただ単純に身体鍛えておけばいいってもんじゃねえんだぞ!」

伸一郎
「脳筋って言われている文ちゃんにだけは言われたくない! 大体、文ちゃんは自分の体調管理出来なさすぎ!」

文次郎
「自分の身体のこと位分かってらあ!」

伸一郎
「分かってたら五徹六徹するわけないだろ! なんだよ文ちゃんギネス記録でも目指してる訳!?」

文次郎
「んだと! そういうお前こそなぁ――」



団蔵
「うわぁ……折角良い話だったのに台なしだ」

左吉
「仕方ない。団蔵、この間に『あれ』の準備をしておこう」

団蔵
「『あれ』? ……ああ、『あれ』ね!」

左吉
「忘れてたのかよ……」

団蔵
「うっ、うるさいな! ほら、早く行こうぜ!」

左吉
「ばっ、こら押すなっ!」




伸一郎
「……文ちゃん、照れ隠しだからってそこまで言われると、流石の俺も傷付くからな」

文次郎
「……お前こそ、余計なこと言い過ぎだバカタレ」

伸一郎
「いいじゃん本当のことなんだしさ。それに『感受性が強かった』のと『繊細だったから』っていうのは黙ってやっただろー?」

文次郎
「……ふん」

伸一郎
「別にいいと思うんだけどなー、確かに今の文ちゃんからはイメージしにくいけどさ。恥じることじゃないだろ」

文次郎
「……恥じてる訳じゃない」

伸一郎
「ふうん?」

文次郎
「……昔のことだ、蒸し返す必要はねえ」

伸一郎
「(今もだけどな……)」



続きます。


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