▼キャラレス

伸一郎
「文ちゃーん! 文ちゃーん!」

文次郎
「最上級生の癖して足音を発てるなバカタレ!」

伸一郎
「見てみて! 蟹さん! 蟹さんが籠背負って春画本持ってきた!」

文次郎
「はあ? 寝言は寝て言うから寝言……」

シャキーン!(←凛々しいポーズをとる籠を背負った蟹)

文次郎
「……何これ夢? 俺いつの間に寝た?」

伸一郎
「蟹さんすっげー可愛い超可愛い! 春画本持ってくるとか偉い!」

文次郎
「……ん? おい伸一郎、籠の中にまだ何か入ってるぞ」

伸一郎
「うお? ……あっ、手紙だ。蟹さんの主人から? えーっと……」


【どうも、松平先輩。『恋愛アレコレ〜』の鉢屋三朗です。

直接お伺いして例の本を交換・交流したかったのですが…いやぁ、とんでもなく手強いガードモンスターと鉢合わせしちゃいましてね。仕方がないので蟹に本を届けさせる事にしました。八左ヱ門いわく、『キャリー(蟹の名前らしいです)は優秀』との事ですので、無事松平先輩の元に本とこのメッセージが届いている事と存じます。

それで…お約束の本ですが、同じように蟹に持たせてやってください。大事な本を蟹なんかに預けるのは不安かと思われますが、八左ヱ門いわく『優秀』との事ですので…たぶん…大丈夫だと思います。はい、途中で蟹鍋にされるかもしれませんが…。

それでは、失礼いたします。】


伸一郎
「お前キャリーって言うのか! 無事に届けてくれて有り難うな!」

文次郎
「いや他にも言うことあるだろうが!」

伸一郎
「えー、でもなあ、『恋愛アレコレ〜』の『鉢屋君』がこっちに持ってくるのは知ってたし……。
 あっ、どうも今日は! SかMかと聞かれれば精神S肉体Mな『幼馴染みな俺等』の男主松平伸一郎でっす!
 本日はこの蟹さんことキャリー君に起こされてきましたー。いやー、本当優秀だなキャリー君は」

文次郎
「誰も自己紹介しろとは言ってねえだろうが……。
 ごくごく普通な『幼馴染みな俺等』の潮江文次郎です。本日で徹夜三日目ですが、まだまだいけます」

伸一郎
「いや寝ろよ、人間の限界超えてるから寝ろよ」

文次郎
「俺の限界はまだまだ先だ!」

伸一郎
「世間ではそれを無茶と言います!」




伸一郎
「話を元に戻すけど、キャリー君が向こうの『鉢屋君』の春画本を持ってきてくれましたー! 拍手ー!」

文次郎
「テンション高いな」

伸一郎
「今までの疲れがぶっ飛ぶ位素晴らしい本でした、『鉢屋君』本当に有り難う!」

文次郎
「既に読んでいたぞこいつ」

伸一郎
「文ちゃんは読まないのー?」

文次郎
「後で貸せ」

伸一郎
「おうふ、なんて素直な……」

文次郎
「それよりも、だ。この向こうの『鉢屋』の手紙に出て来るガードモンスターは……」

伸一郎
「どう考えても文ちゃんのギャラドスだろ」

文次郎
「……? となると可笑しいな。あいつはそう簡単に侵入はさせないんだが……」

伸一郎
「キャリー君だから通したんじゃ?」

文次郎
「キャリー、お前ギャラドスと仲良くなったのか?」

伸一郎
「……頷いてるっぽいし、そうなんじゃね? 見た所水属性っぽいし波長でもあったんじゃねえの?」

文次郎
「……」

伸一郎
「文ちゃーん?」

文次郎
「……ギャラドスと一戦交えたみたいだな」

伸一郎
「なんでそうなるの!?」

文次郎
「ここ、傷が少しあるだろ? これはギャラドスの『滝登り』を受けた傷のはずだ。傷にあいつの癖が出ているから分かる」

伸一郎
「わかんない、そんなの普通わかんない」

文次郎
「ふむ……防御力が高いのか、それとも防御力を高める技を使って防いだか……。
 そういう時は『ちょうはつ』を使えって教えたはずなんだがなぁ。やっぱりあいつは補助系の技が苦手だな、今度からの鍛練はそれ中心に……」

伸一郎
「文ちゃーん、帰っておいでー」

文次郎
「あっ、悪いつい……。ともかく、キャリーはギャラドスに認められてここに入れたのは確かだな」

伸一郎
「そして生まれた友情か……。なんて少年漫画的展開」

文次郎
「それじゃあ、俺はギャラドスの所に行ってくる。あいつも怪我してるだろうし。キャリーはお前が手当てしてやってくれ」

伸一郎
「了解アンドいってらっしゃーい。手当て終わったら、手紙の返事でも書いてるわ。勿論春画本も」

文次郎
「……頼むから向こうの俺等に引かれるようなのだけは止めてくれよ……」

伸一郎
「大丈夫、『鉢屋君』は喜んでくれるはずだから」

文次郎
「……向こうの俺、こいつの本燃やしてくんねえかな……」

伸一郎
「今凄い不吉な言葉が聞こえた気がした」




文次郎
「ただいまー」

伸一郎
「おかえりー。ギャラドスどうだったー?」

文次郎
「キャリーを気に入ったのか始終嬉しそうだったぞ」

伸一郎
「それは良かった。でもなんでキャリー君を選んだんだろうなー?」

文次郎
「春画本を運ばせる為だろ」

伸一郎
「ああ、いやそうじゃなくてさ。鉢屋君の手紙読むと、最初はギャラドスを突破しようって考えていたんじゃないかって思えてきて。
 だとすると、水タイプのギャラドスに対して有効な属性を持つモンスターを出すのが普通じゃないかって思えてさ。
 ポケモンで例えるなら、フシギダネとかチコリータとかキモリとか草タイプを」

文次郎
「お前はアホか」

伸一郎
「どの辺りが!?」

文次郎
「最後だ。ギャラドスは『水』と『飛行』タイプだから、草タイプの技は効果抜群じゃないんだぞ」

伸一郎
「うそ、まじで!?」

文次郎
「……まあ、確かにギャラドスに『飛行』要素は全く無いし、なんで『飛行』タイプが入っているのか俺も不思議だが……。
 とにかく、ギャラドスに効果抜群のタイプは『電気』と『岩』。特に『電気』は四倍ダメージだから天敵と言っても過言じゃない」

伸一郎
「うぇえええ……。俺ずっと『水』と『ドラゴン』タイプだって思ってた。ドラゴン使いもギャラドス手持ちにしてるからさー」

文次郎
「……ギャラドスは『竜』だからな。そういう意味では間違いないだろう」

伸一郎
「となると、ギャラドスに対抗する為には向こうの『文次郎君』が必要って訳かー」

文次郎
「!?」

伸一郎
「いや、前に『文次郎君』は雷属性の武器を愛用してるって聞いたからさ。ピカチュウばりに電撃バリバリ落としてるって、言ってた気も……」

文次郎
「……くっ、俺のギャラドスは水タイプとノーマルタイプの技だけを覚えているわけじゃない!
 伸一郎みたいに勘違いして草ポケモンを出す奴もいるから『火炎放射』は覚えさせているし、電気タイプ対用として『地震』も覚えている! いざとなれば『ギガインパクト』や『破壊光線』だって使う!(※)持ち物も厳選済み!
 どんな相手でもあいつは負けはしない!」

伸一郎
「何熱くなってんだよ文ちゃん……。つか誰と張り合おうとしてんだよ……」

(※世界観として、公式バトルで四つまでと技の制限があるだけで、覚える技は四つ以上としています)

文次郎
「例え他所サイトの俺だろうとも、ギャラドスが負けるとは考えたくない!」

伸一郎
「あーはいはい、親バカはそこまでにしておこうなー」

文次郎
「……」

伸一郎
「ほらほら膨れっ面しないのー。それに、俺の疑問はギャラドスじゃなくてキャリー君についてなんだからな」

文次郎
「んなの向こうの『竹谷』の考えだろ。あいつも生物委員長代理だし、考えがあったんだろ」

伸一郎
「そんなもんかー。いいご主人持ったなキャリー君」

文次郎
「それで、準備出来たのか?」

伸一郎
「任せろ文ちゃん! 外装は『忍たまの友』バージョン、ただし中身は免疫ない奴だと途端鼻血を出してしまうだろう過激な春画本を準備した! 俺のとっておきです!」

文次郎
「……その表紙は元からか?」

伸一郎
「先生に見付かっても取られないよう、俺が作った。クラスメイトからの評判は上々でっす!」(ドヤ顔)

文次郎
「……本当燃やしてくんねえかな……向こうの俺に手紙書こうかな……」

伸一郎
「止めて俺の涙と汗の結晶と青春を奪わないで!」

文次郎
「はあ……」

伸一郎
「なんか凄い呆れられた」

文次郎
「……少し待ってろ。向こうへのお詫びに菓子折り準備してくる」

伸一郎
「ちょっと文ちゃん、さっきから何気に酷くない?」

文次郎
「飼い主として当然のことだろ」

伸一郎
「それがギャラドスに対してだと俺は信じている」




伸一郎
「春画本OK、手紙OK、菓子折りOK」

文次郎
「一杯になったか大丈夫か? ほら、お前用に菓子持ってきたから、道中にでも食べろよ」

伸一郎
「準備OK! じゃっ、キャリー君、向こうの『鉢屋君』達に宜しくな!」


しゃかしゃかしゃかしゃか……


伸一郎
「本当に籠背負って行った……キャリー君すげえな」

文次郎
「……後は蟹鍋にされないよう祈るだけか……」

伸一郎
「さっ、流石に大丈夫じゃね? 七松様と搗ち合うとかそうはねえと思うけど……」

文次郎
「いや、分かんねえぞ。小平太の嗅覚は野性動物並だ」

伸一郎
「……平君とかいるだろうし、流石に籠背負った蟹を食べようとは思わないだろ、うん……」

文次郎
「……なんかすげー嫌な予感するんだが……」

伸一郎
「……きっ、気のせい……気のせい……」



小平太
「いけいけどんどーん! 蟹鍋にするぞー!」



伸一郎
「もう出会ってらっしゃったー!?」

文次郎
「小平太止めろー! そいつはギャラドスの友達なんだー!」

伸一郎
「それ以前にまずその子他所様の子だから食べたら駄目ですってー!」


二人が小平太の元に駆け付けた時には既に時遅く、ぐつぐつと煮えた鍋の中に先程まで元気だった蟹が入っていたらしい……


―――
ネタ絡み有り難うございました!後日手紙をそちらに送りに参ります!


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