「ねぇ、銀時。お祭り行かない?」
「はぁ?祭りだァ?」
季節は夏。気温がバカみたいに暑く、生憎万事屋にはクーラーも扇風機もない。
部屋の中は蒸し暑くいつも以上にダラダラしていると昔馴染みであり俺の彼女のアイツが祭りに行こうと誘いにやって来た。
「今夜この近くでお祭りをするらしくてね。いつも部屋でダラダラしているよりも、少しは外にでも出て楽しみましょうよ」
「でもなァ、面倒くせェンだよな」
そりゃ、お前と行きたいけどよォ。金も無ェしこの暑さじゃ動く気がしねェしなァ。
どうしたものかと髪をぐしゃぐしゃと掻き回す。すると、ちょうどタイミング良く定春の散歩から帰ってきた神楽と新八がドアを勢い良く開け俺に詰め寄ってきた。
「銀ちゃん!私もお祭りに行きたいネ!!」
「そうですね!僕も久しぶりにお祭りに行きたいです!」
「けどよォ…」
「あ、それから。お金の事なら大丈夫よ、少しは払ってあげるから」
「よーしっ!!今日は楽しむぞ!神楽、新八っ!!」
金があるなら話は別だ。あー、楽しみだな!!あっちで俺を蔑んだ目で見てくるが気にしないもんね!アイツは「まったく、単純なんだから」と呟きながら苦笑いを浮かべる。
そして、そんなこんだで夜になり祭りを見に行った。神楽と新八は屋台を見つけるなりはしゃいでいた。まぁ、久しぶりに来たしな。その横でアイツは微笑みながら2人に駄賃をあげ、集合時間と場所を教え、「じゃあ、もう好きな所に行ってらっしゃい」と2人を促す。神楽と新八はそれを合図に駆け出した。
「ふふっ、よっぽど楽しみだったのね」
「だろうな。あのはしゃぎぶりは凄まじかったしな」
「そういう銀時も顔がにやけているわよ」
「んな訳ねェだろ」
他愛もない話をしながらいろんな屋台をあてもなくぶらぶらしながら歩く。
なんか美味いモンでもねェかなァ。とりあえず、祭りに来たにはなんか食わないとな。
そう考えていると袖をくいくいと軽く引っ張られる。何だ何だ。振り返ってみると微笑むアイツと片手には白くふわふわしたわたあめを俺に差し出していた。
「どうしたんだよ、ソレ。てか、いつ買ったんだ?」
「ついさっきよ。銀時って昔からお祭りに来るとわたあめを始めに食べてたでしょ?だから買ったのよ」
「…よく分かったな」
「そりゃあ、昔馴染みだからね」
得意げに笑うコイツには敵わないなと考えつつ差し出されたわたあめを貰う。そして、わたあめを口の中に放り込むように食べる。口の中いっぱいにふわふわとした触感と砂糖の甘い味を堪能しながら咀嚼する。すると、ふっと思った。コイツはなんも食べてねェじゃねェか。そう思った俺はわたあめを食べるのを止めた。気まずそうにちらちらアイツを見るとばちっと視線が合った。やべェ、どうしようか。すると、何かに気づいたアイツは優しく微笑みながら「別に気を使わなくても良いわよ。まだお腹が空いてないだけだから」とやんわり断った。いや、逆に俺が気を使わせた気がするんだけど。
まだ納得いかない俺は「少ししかねェけどやるよ」とわたあめを差し出す。やっぱ、俺の食べかけは嫌だろうな。けど、金がねェから奢れないしよォ。少し悩んでいるとアイツはすっとわたあめに手を差し出し少し千切りわたあめの欠片を食べる。そして、満足したように「うん、やっぱり美味しいね。ありがと銀時」と微笑んだ。その笑みに思わず見惚れてしまった。すると、花火が夏の夜空に打ち上げられた。周りの人も一段と騒ぎ出す。
「花火、綺麗だね」
「あぁ、そうだな」
「ねぇ、銀時」
「なんだよ」
そして、お前はふんわりと柔らかく微笑む。
「またずっと先も私の傍に居てね」
「ばーか、ったりめーだ」
子供還りする愛嬌