□番外12□


君から流れてきた言葉に焦がれて。君につむがれる言葉それ自体にすら感じた羨望。

沸き上がった醜い嫉妬。あまりに些細な別離の理由を、そのまま口にする勇気はなかった。つまらないプライド。
更につまらない―卑怯な行為をして、逃げ出した。
握り潰した原稿用紙だけが残った部屋で、彼が何を思うかなんか、気にしてやれるはずもなく。むしろ、自分をぐちゃぐちゃにした報いに、傷ついてしまえば良い、とさえ。
卑怯で醜悪な、ドロドロとした汚泥を抱いた姿を誰にも見せたくなくて、文字通り逃亡した。

   □   □   □ 

【快新の別れ話編】

途中放棄で未完・筋書きになってます。
それでも構わない方のみお進み下さい。


* なんだかんだ付き合いだして1年半経過。
* 春休みは黒羽&工藤で外国で消息を絶った京極探しに行ってます。
* 夏休みは快斗&新一で昨年快斗が行ってたリゾートバイトに短期間行ってます。
* 秋になって、白馬探さんが大学にやってきたよ! という所から始まるのです。

   □  □  □


「君、…工藤くん、ですか?」

秋も大分深まった頃、大学構内の学部棟と学部棟の間にあるこじんまりとした、ベンチが2つほど適当に置いてある小さな庭で次の講義のテキストを読んでいたら、そう、声をかけてきた奴がいた。肌寒い秋の季節に相応しい茶色のインパネコートを纏っている。その独特のデザインは、山高帽とパイプが似合う俺の大好きな物語の中の男を彷彿とさせた。一体何者だと問えば、白馬探です、と名乗った。夏休み明けの下半期から東都大学に聴講生として通っているという。白馬は、「僕は、黒羽くんと…ご存知ですよね?黒羽快斗の元同級生なんです」と言った。
そうは言われても、そうなのか、としか反応のしようがない。俺もそうだが、黒羽もまた、あまり過去について語りたがらない。お互い勝手に、いつ間にか色々知ってるということが多々あるくらいで。
長い学生の夏休みの間、同じバイトに出掛けたり、何度も互いの家を行き来し、黒羽の母親とも顔を合わせ食事をご馳走になった事もあるが、家や家族についてはふとした折に触れる事はあっても、そういえば交友関係については話した事がないな、と思った。

「実は、僕はこういう者でもあって」

スイと目の前に差し出された一枚の名刺。学生が持つにはちょっと不思議なアイテムだ。礼儀に則って押戴いてから検分する。『N-RA編集室・室長 白馬探』という大文字と、それよりもフォント2つ分落とした文字で連絡先が書いてあった。

「ん…学生企業家なのか?ベンチャーか」
「いいえ、れっきとした出版社の一編集室ですよ。まぁ、とはいっても中身はベンチャーと変わりないかもしれませんが」

なんというか、作ったようなではなく、丁寧に笑って、白馬は解説を加えてくれた。
曰く―親元は、まさに親元が理事をしている出版社であり、彼はその後継者という立場なのだという事だった。(本当は母体はもっと大きな財閥系統のようだったが、白馬は仔細に語ることはしなかった)
企業経営、経営学、経済学、雑誌編集や運営に必要なノウハウを海外留学をしながら学び、母国籍である日本に移住してきた今、腕試しとして、分室一つを与えられたのだという。それまではロンドンやアメリカ、勿論日本で必要に応じて場所を変え、居を変えて過ごしてきたらしい。

「現在、この編集室は編集長と事務員しかいないのですよ」
「そりゃ…どうやって本出す気だ?」
「書き手も読み手も発掘しなければいけません」
「大変だな。金鉱が出る事を祈ってる」
「手を貸してくれませんか?」
「…俺?」

突拍子も無い話だと思った。白馬は「話はコレに目を通してもらってからにしてもらえませんか」と言って、ざっと10枚分くらいはありそうな紙束を出してきた。読むという作業は嫌いではないが、読んだ先にある作業―彼の期待に応えられる事はないだろうと思った。受け取るべきか、断るべきか。
強い意志を秘めた目。柔らかな物腰の中に潜む生来のモノと思われる自尊心の強さ、強引さが窺えた。断るのなら早いほうがいい、という気がする。少しでも迷う余地を見せれば、切り込んでくるのを辞さない人間に見えた。
差し出されたままのソレを視界に入れながら、俺は白馬をじっと見る。白馬もじっと俺を見て、反応を待っていた。正直今はあまり時間がない。とりあえず、と受け取ってしまって後で話す…というのが妥当な対応だとは思いはしたが、相手がソレを見越しているらしいことが引っ掛かって手が出ない。
気軽に学生同士がベンチャー企業への理想を語り合う風にはならない場面を崩したのは、さっと紙束を攫っていった俺のモノではない手の持ち主だった。

「なにしてんの?白馬。久しぶりだな」
「おや、これは黒羽君。お久しぶりです。君のほうから挨拶に来てくれるとは、意外ですね」
「別にお前に会いに来たワケじゃねぇ。新一に何の用だっての」
「…随分、親しいのですね。以前話に聞いていたのとは違うようで?」
「うるせぇよ」

本当に鬱陶しそうに言う黒羽の背中を俺は睨む。一体いつの間に現れたのか。音も気配もなく、間に割り込まれたのに驚きを隠せない。…驚かしてるんじゃねーよ!

「新一、もうすぐ講義だろ?」
「あ、ああ。もう時間だな」

1コマと2コマの合間の小休憩だった。朝飯代わりのコーヒーを、いつもように飲んでから行こうと移動の合間になるココに寄っただけなので、もうすぐ始業のブザーがなるだろう。

「白馬は?」
「僕は、午後からですね。黒羽くんは?」
「テメーに構えるほど暇でもない。が、生憎次は休講なんだ」
「では、喫茶店にでも行きましょう。忙しい時間に呼び止めてすみませんでした工藤くん。どうぞ、講義へ。…また後で」
「新一、コイツのことは気にしなくていいから、行ってらー!」

二人に促される形で、俺は首を傾げながらも、時間が押しているのもあって、小走りでその場を離れる。講義棟へ入る際に振り返ってみれば、二人が連れ立って歩いていくのが見えた。
黒羽は俺に差し出されていた紙束をめくり、白馬が隣で手振りを加えて何か解説をしている風である。ニコニコと人の良い笑いを浮かべるでもなく、素のままの態度に思えて、どうやら単なる同窓生でもないようだ、と思った。


面白くはないが、つまらないと言い切るのも微妙な講義が終わり、俺は手早く広げた荷物を纏めた。もしかしたら、の予感どおり、講堂をでると、スグに二人の姿があった。二人とも見目が良いし、多分既に色々と噂になっているらしい休み明けに現れた帰国子女の聴講生と黒羽の組み合わせは、行き交う学生達の目を引いていた。
早々に場を人気の無い、使われていない小さな教室に移す。
先ほどまで、どちらかと言えば白馬を歓迎していないようだった黒羽が、妙にウキウキとしている様子なのが気に掛かる。

「なんだ?」
「えっと、おおまかには話したんだっけ?」
「ええ、先ほど講義の前に」
「…雑誌の立ち上げってヤツのことか」
「そう!」

   □  □  □

* なんやかんやあって、三人で雑誌の立ち上げとかやりだします。工藤さんが4回生になる頃に編集室が認められて、本業として専属契約予約。(就職活動内定のような)
* 工藤さんは翻訳やルポを扱う書き手の一人、黒羽さんは企画営業、白馬さんは主に人を使う仕事担当で。
* 白馬さんは、本当は黒羽さんに執筆して欲しいと思ってます。
* 類稀なる知性と押し隠してる苛烈な精神(笑が興味深いから、何か書け書けといい続け、黒羽さんは工藤さんのことを書きます。
* それを偶々読んだ工藤さんが「こんなん俺じゃねぇ!何コイツホント気持ち悪い(超絶酷意訳)」と怒って黒羽さんの前から姿を消します。卒論だけ上げて、休学手続き取って国外逃亡。
* 探しまくる黒羽さん、ある国でやっと捕まえるものの、「ちょっとマジ距離置いてくれないと復縁とか無いから(特殊酷意訳)」と言われて、「雑誌寄稿だけはしてよ!(泣」とそれだけは了承してもらって、一人帰国して白馬の所で仕事。
* 工藤さんと黒羽さんは文通状態に。
* そろそろ帰国しよっかなーと思っていた矢先、工藤さんはコナンに出会うのです。


   □  □  □


言葉を借りて、想いを示しただけなんだよ、道具を使っただけなんだ。
それが貴方を傷つける事になるなんて、思いもしなかった。
ゴメン。
ごめんなさい。

もう使わない、とは言えないけれど。
出来るだけ、言葉じゃなくても、ちゃんと貴方が判るように伝えていくから。
だから消えないで。
どこにも行かないで。
傍に行くよ、居るよ、寄り添うことを許して欲しいんだ。







冒頭と文末の叙情文は、妄想の成れの果てに沸いたモノです。
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