□微分□ ■快⇒⇒⇒ 新■



最近知り合いになった男が居る。
同じ年の他校のヤツで、名を黒羽快斗という。

変な男だ。

「全国模試で一番とってるヤツでも、苦手分野があるんだな」

手渡された手紙を日に透かす。出合って、貰い始めて通算10通目。
内容はあいかわらず。

「苦手・・・?内容が伝わらないってことか」
「いんや、内容がいつもと同じってことだな」

言い方を変えても、言いたいことは何も変異がない。

「当たり前だろ。お前がスキだってことしか書くことねぇんだ」
「黙れ。・・・つーかさ、もう、それ言う時点でこの手紙の存在が意味わかんねぇ」
「言うと怒るじゃん」
「まぁ」
「でも、言いたいし。伝えたいし」
「・・・へぇ」

はぁ、とため息を吐かれた。
気持ちはわからなくもない。
しかし、コッチの気持ちもいい加減理解し受け入れるべきなんじゃないかと思う。

「じゃー、お返事いるか?」
「まてまてまて、前と同じならいらねぇ」
「・・・手紙にして渡すか」
「だから、お断りならいらねー!」

俺はヤツの顔を見つめた。
照れるな、この胡乱な視線の意味を汲み取れ。

「じゃ、なんでお前は、こんなん、寄越すんだよ」
「・・・絆されてくんないかなぁって」
「じゃー、やっぱ俺も書くべきだろ」
「なんで」
「諦めてくんねーかなぁって」

酷い!と泣きまねをして、ヤツが帝丹高校校門前から駆け出した。
追わずに、その背中を見つめれば、5メートル先でぴたりと足を止める。

「なー、ゲーセン行こうぜ」

振り返って遊びに誘う顔は笑顔だ。

「駅前のさ、新しいの入ったって!」
「ああ、行くかぁ」

警察からの呼び出しが無い時に限って姿を現わすコイツの誘いを、上手く断れたためしがない。
遊ばないといえば、家まで着いて来るし(仕方なく家に上げようものなら『帰りたくない』だのごねられる)、他の用事にも余程私的事情が無い限り着いて来る(そして、用事が終われば『じゃ、今から俺との時間ね』とか言い出す)のは経験済み。
外遊びに付き合うほうが、帰り際はサラリと別れてくれるので、俺はヤレヤレと思いながらヤツのいる方へ歩き出した。

待ち構える黒羽の顔は、とてもとても嬉しそうだった。













ライトなストーカー黒羽。
流されつつある自覚のない工藤。

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