*コナン映画・ベーカー街の〜ネタです。 ■海底より■ □快新□ 快斗は、江戸川コナンが何処かに消え、工藤新一が舞い戻ってきて暫く経った頃に、あることに気づいた。いや、気づかされたというべきか。 「新一さぁ、・・・年下に『も』人気だよね・・・」 「・・・は?」 なんだろう。帝丹小学校の元仲間や元同級生が、コナンに似ている彼を慕うというのは、理解できるんだけど。こないだ鈴木さんちのパーティー行った時にも、子供に構われてたよね?ドイツもコイツも最初は生意気な口利いてたくせに、新一が相手した途端素直になってさぁ、いや、判るよ。カッコイイ新一に見蕩れたり、憧れたりってのは。でも何でそれが殆ど男子なんだよ?!まぁそれは俺が勝手に不愉快だっただけだけど、別にそれはいいんだけど・・・ 俺の部屋の俺の机に居座って、PC画面でなにやら作業していた快斗が不意にそんな事をブツブツ言い始めたのだ。 聞かせたいのか何なのかイマイチわからなかったので、快斗の呟きには答えずに、この間って何だったっけ?と考える。旧暦で開かれた七夕会だったか。そのパーティーイベントには、マジシャンとして呼ばれて忙しかったはずなのに、よく見てたもんだ。 「そうか?まぁ、こないだのパーティーには、コクーンで同じステージ冒険してたヤツらがいたからだろ。夏休みだから子連れが多かったんだな」 「コクーン・・・ああ、あの暴走したっていう新世代ゲーム機の?俺も行きたかったんだよなぁ。新聞で見た時には製造中止ンなってたし」 「ん、あのゲームの発表試乗会に招待されたのが、どこぞの御曹司だのお嬢さんだのってヤツだったし。じょーりゅー階級の世間は狭いらしいぜ」 「ふぅん」 素っ気無い、・・・やや不機嫌な声だ。 そして、視線はPC画面に固定されたまま。 俺は開いていた本を閉じて、快斗の顔の脇から同じ画面を覗き込んだ。 「なんだこれ」 「ん〜・・ハックをね、少し」 「・・・・オイ。昨日の夜からコソコソなんかしてやがると思ったら」 「大丈夫、バレないようにはしてるよ。衛星割り込んで回線飛ばしてるし。俺くらいアタマないと痕跡なんかわかんねーって」 IQ400とかいう数字が馬鹿に出来ないのは、とりわけ数字言語に強いとか演算能力が異様に高いのを目の当たりにした時だ。 なにかと便利ではある。 「ダミー人形たまに作るじゃん?」 画面はほとんど黒い。 けれど時々波紋のような動きが加わる。ノイズか、信号か。 「アレさ、改良するのに人工知能とかどうかな、って考えてさぁ」 「ロボットKIDかよ」 以前そんなロボットが江古田に現れたことがあるらしいが、使えたモンじゃねぇと言っていたはずだ。 「オメーなら、自分で組み立てれんじゃねぇのか」 「まぁ、でも一からやると時間かかるし、どっかに落ちてないかなーと思って、潜ってみたわけ」 「で?」 「ん〜〜 HIROKIって子が」 「・・・・」 「工藤新一の弟分になれるなら、色々提供してくれるって言ってきてさ」 「弟・・・こども?」 「子供ぶってたけど、多分俺くらいの頭脳を持ってたプログラム、だな」 ヒロキという名前と異色の天才児に張れる電子頭脳、とくれば…俺の頭に浮かんだのは、箱舟にのって電子の海底で深い眠りについたハズのノアズ・アーク。コクーン関連の話の後だったので即出てきた。―俺は思わずキッと快斗を睨む。 寝た子を起こすなんて、駄目だろ。うん。 「なんて言って起こした?ソイツ、寝てただろ」 「・・・やっぱ知ってるんだ・・・!」 何故か、はぁあああと大仰に息を吐いて、快斗は自分の右手に顔を埋めた。 しばらくその格好で何やらブツブツ言った後、諦めたようにまた顔をPCに向けた。 「誰?って聞いたから少し話したんだけど」 「・・・起きてたのか」 「ん〜?いや、最初はアクセスしてくる相手に自動的に設問立てるタイプだったかな。まソコに着くまで結構なブラフだのトラップもあったんだけどさ。本人が出てきたのは―」 ―・・・ ―・・・・・ ―『怪盗KIDのFAN』 ―『FAN・・・スキナヒト?』 ―『いや、好きなら 工藤新一』 ―『クドウシンイチ』『・・・・・』 このあたりで、多分プログラムが入れ替わったのだ。 次々と新一に関するデータを問われた。 ただ、それは情報を落とさせようとする問いではなく、どれだけ正確なクドウシンイチのデータを持っているのかを試す内容。誰よりも、いっそ本人よりもクドウシンイチに対して拘りも何もかもが半端ではない快斗は全てをクリアした。 ―『アナタ クドウシンイチ スキ?』 ―『好き。愛してる』 ―『ボクモスキ』 「ンだと、コラ」 『クドウシンイチがそばにいるなら、ボクの脳を使ってもいいよ』 「?!」 不覚にも、突然の音声に度肝を抜かれた。 面白がるような子供っぽい声だった。 「・・・で、それは夕べの話じゃないよな・・?」 「そ。本当に俺が工藤新一の恋人なら、ちゃんと新一の所から訪ねてきてみろって言われた。最初ほどじゃないけど、結構時間くったぜ」 「・・・居るのか?」 「この波紋さ、PASS解いて音声変換かけると多分話せると思うんだけど」 「けど?」 そこでやっと、快斗は新一の顔を見た。 「・・・なんだよ」 「 た ら し 」 「・・・おい!」 「猫被って大人、笑顔浮かべて女子供、男なんかいわずもながに、更には電子頭脳までって!!」 俺のライバルどんだけいるんだ! すぐ隣で上がった叫び声に、新一は耳をふさいだ。 「馬鹿、うるせぇだろ!!」 手は耳を塞ぐので使えなかったので、新一は容赦なく脚を振り上げた。 結局、快斗はコレ以上ライバルなんかいらねぇ、しかも俺顔アンドロイドにして使うとかありえねぇ!と呟いて、ノアの扉を閉じた。 新一の部屋で繋いだのは、まさか本当に、と好奇心に任せて試してみただけだったという。 波紋の揺れる画面が切り替わる前に、俺は快斗に聞こえないように「おやすみ」と呟いた。 |