◆楽しい休日◆ 土台がいい加減なヨタ話だったのだ。ウイルスとトラップをかい潜ってアングラ経路に張っている情報網に引っかかったそれは。 ―近日日本沿岸に着く船に、某国で名の知られたブローカーの密輸品が乗っていて、その中に大振りの赤い宝石がある、などと。 違法品の情報のやり取りをするには、杜撰なセキュリティで、割と見やすい話だったから、サイバー警察が介入しないのが不思議なくらいだった。 しかし、である。 うさんくささに鼻を曲げそうになりながらも、本当に予定通りに港に現れた船に忍び込んだのは、ビッグジュエルに類する宝石が怪盗KIDの獲物だからだった。 「さぁってと・・・まずは貨物庫に行ってみましょうか」 船に乗り込む時には、船内備蓄品の補充員に紛れ込み。乗船してからは素早く船員の衣装一式を少々強引な方法で譲ってもらって。怪盗は、速やかに事実確認−叶うのならば宝石確認をも行うべく行動を開始した。 割と大きな貨物船。 どこかの国の海運組織が借り切って、客船として人を運びながら日本を含むアジア圏を巡り数多の商品をやり取りする為のモノらしかった。 そんな諸外国へ立ち寄る船に、これ幸いと法的に宜しくない品物持ち込む鼠が入り込むのが世の習いというもの。 名もなき船員の姿を借りた怪盗は、第三倉庫とかかれた一室で大きくため息を吐いていた。 「模造品、粗悪品、混ぜ物、屑石寄せ集め・・・」 運んできたのか、運ぶ途中か。 そこそこ数のある美術品のなかに、ようやく宝石を安置したガラスケースを見つけた。 だが、怪盗は、その中に並んでいる石の正体を見破ってはつまらなそうに人差し指をくるくると回す。 「さぁ、本物はどれでしょうか?!答えは、私の指先が知っています」 すりー・つー・わん! ぱちり、と指を鳴らすと怪盗のお眼鏡に叶わなかった品々は、ポンと軽い爆発を起こしてアッサリと砕け散る。 見る者の無いマジックは、怪盗の落胆と同じに空しさだけが残った。 「もう少しマトモなモノはないんですかねぇ」 ふむ?と首を傾げながら、ぐるりと辺りを見回す。まだ探し始めて序盤。人の入りやすい倉庫に本当に高価な宝石があるとは考えにくいながら、確認の為に入り込んだ倉庫にこれ見よがしな美術品。場当たり的なコソ泥なら、真贋を確認しないで持ち出せるような配置である。 それ以降の第何倉庫の札と鍵の掛かった部屋も、割と判りやすい場所に高価な偽物や時には安価な本物交じりの品々が収まっていて、怪盗を妙な気分にさせ続けた。 「もう一度、船内図を・・・」 狭い船のトイレの一室で持ち込んだ小型機器で、犯行前に手に入れていた船の図面と己が実際に歩いた場所とを見比べていく。 そうして、歩いたときはドン詰まりになっていた場所の、その先にある図面の空白空間を見つけた。 「・・・もしかして、ここも倉庫、と?」 人気の疎らだった倉庫の周りに比べて、何でもない船内廊下を(ちょうど空白がある場所の周辺だ)ウロついていた堅気には思えない気配の船員。 怪盗の怪盗たる直感が、この船には何かがあるぞ、と言っていた。 おそらく怪盗を引っ掛けた情報はガセだろう。本来ビッグジュエルが動けば、その持ち主たる人物も動くのが常である。怪盗は、ごく紳士的にその持ち主に対して『予告状』となる挨拶文を贈るのがいつもの犯行スタイルだ。それが今回、徹頭徹尾隠密行為での犯行になったのは、とにかくブローカーにしても、船の持ち主にしても、コレといった名前が出てこなかったことに起因する。宝石の存在有無からして曖昧な上、持ち主も特定出来ない以上普通怪盗は動かない。 「どうしたものですかねぇ」 あまり良い予感はなかった。 しかし念の為に、と再び動き出したのは、船の出港元が小国ではあるが、そこそこ珍しい宝石や鉱石を産出する場所に、わずかな期待を掛けての事だった。 それから。 怪盗が見つけたのは、青い 青い。 ◆◆◆ ◆◆◆ 「おい、キッド!コナンはどこだ」 「これは、新一さんどうなされましたか」 声に苛立ちを交えて、この屋敷の主の部屋へやってきた相手に、白いスーツ姿の男は肩を竦め応えた。 しかし、新一はさっと部屋を見渡した後、男のネクタイを掴みあげて尋問を開始する。 もうすぐ三時。 子供 (コナン)にオヤツを与える事に余念のないこの男がお茶の準備もしていないのなら、おそらく彼の探しているあの子は此処には居ないのだ。 「どこだ」 「・・・生憎、存じ上げません」 「嘘だろ。てめ、隠すな。出せ、連れてこい」 「何かありましたか」 「聞いてるのは俺だ。正直に、キッド」 「ですから!苦しいです、新一さん」 「素直に吐いたら、三歳児の祝賀パーティーの写真だ」 一瞬、片眼鏡の向こうにある眼がぴくっと反応したのを見逃さずに、新一と呼ばれた男は畳みかける。 「背丈くらいのケーキに顔つっこんで生クリームだらけにしてたの、すっげ可愛かったんだぜ」 これでどうだ、のだめ押しに、確実に食いついてくると思っていたキッドは何故かクスリと笑う。 新一は一瞬怪訝な顔をして―そして、気がついた。 相手もまた、彼が気付いたことに気付いてニヤリと笑う。 「・・・すっげ可愛いのは、新一のほうじゃねぇ?」 「てめ、快斗!」 「新一でもすぐには見破れなかったんだ?そんな似てるのって何か複雑ー」 「るせぇ、慌ててからだろ!ってことは、コナンは」 「デート中」 「あいつシメる」 くそっと毒づいて、新一は踵を返す。 けれどもその足を快斗が止めた。 「最近コナン頑張ってただろ?少しぐらい大目に見てやれって!夕方の会食には戻るって約束してるんだ」 「衣装合わせスッポかすなら最初から言え。お陰で俺が嫌味言われた」 「あー、園子ちゃんね。あいつ、連絡忘れかよ。浮かれすぎ」 秘書の仕事の間抜けに、苦笑するのみのキッドの姿をした快斗に、新一は不審そうな目を向けた。 「・・・快斗にしちゃキッドに甘ぇな。お前らグルで何をたくらんでやがる」 もうすぐ五月なのに、この人の鈍さときたら! 「キッド」の姿を借りた快斗は、足止め役の任務を遂行するため、すぐにも部屋を飛びだして行きそうな相手を、強く柔らかく拘束することにしたのだった。 ◆◆◆ ◆◆◆ 「なぁ、「快斗」こっちの色とこっちと、どっちが新一に似合う?」 「どちらも似合う。コナンの見立てに間違いはねーよ」 「お前また・・・それじゃ、お供の意味ねーだろ!」 何件目かの店で何回目かの同じ台詞。 コナンはダンッと隣にたつ男の足を踏みつけた。 イテーよ!と男はしゃがみこんで涙目になるのを堪える。 しゃがんだことで、男を見下ろす形になったコナンは、見る者を畏怖させる眼差しを彼に送って小さな声で言った。 「聞いた事には正確に答えろ」 「はい(答えてます!)」 「(いーか、テメーは、ファミリーの中じゃ新参。弾避けの価値程度の影武者なんだ。せいぜい一緒に悩みました、つって。こんな時ぐらい、新一のご機嫌とっておけよ)」 無茶を言うなぁ、と男は思う。 ハッキリ言ってファミリーとかどうでもいいのだ。怪盗だった自分を捉えて従えたのは、唯一この少年だけで、彼は少年に愛と忠誠を誓いはしたものの、彼の傘下に下った覚えはない。彼の近くにいるための方便として、ファミリーの一員として忠誠を誓う血判を一応押しはしたが、そんなものに捕らわれる気は毛頭無いし。 「(今日は「快斗」の影武者だし。虐め甲斐があるな)」 「(「新一」にしておけば良かったです)」 小さく言葉を返し、踏まれた足を庇いながら立ち上がる。 「全く、お兄ちゃんに厳しいよね、コナンは」 「(新一はそろそろ俺らの事探し始めてる頃だろ)」 「(そうだとしたら、使えない兄ちゃんですね)」 「バーロ、新一が凄いんだ。間違えるな!」 「はいはい」 「さっさと選ぶぞ」 「何だって喜びそうなもんだと思うけどねぇ」 もうすぐ来るコナンの従兄弟にして、コナンを首領とするファミリーのナンバー2である新一の誕生日のプレゼントを買いにきているのだ。 新しい手帳がいいかな、読書が好きだからいつも使ってもらえる凝った栞がいいかな、そういえば万年筆のインク切れたって言ってたな、このディスプレイの服が似合いそう、と思いつくまま店を巡り、気になった物全てをキャッシュで支払い、お供の「快斗」の手はすでに荷物でいっぱい・・・に、なっていていいはずなのに、いつの間にか手荷物は手から消えているので、更にあれこれと買い物している状態だったりする。 「そりゃ、新一優しいから。でもさ、だったら、一番満足度のあるもの贈りたいじゃねぇか。何でもって、渡したら、ありがたみなさそうだし・・・」 ありがたみ・・・ぽそりと呟く内容のかわいらしさにお供の男はクラクラしてしまう。どうせここまで買い込んだ品々も、こっそり従兄弟の部屋に配置したり何気なく渡したりするのだろう。でも、どうしても一番喜びそうな物を渡したい、と思っているのだ。 本当に、かわいい。 茶のチョッキに縦ストライプの白黒シャツ、つりズボンのベルトは赤で、可愛らしい足が濃紺の半パンから延びている。その可愛らしい足は膝から白黒系タータンチェック地の靴下に包まれていて、さらに可愛らしい。 変装を意識して、茶のかぼちゃ帽子とそれにあわせた靴先の丸い濃い茶の革靴を履いた姿は、お子さまモデルもかくやである。 実際ストリートファッションの取材をしている、という業界人から声を掛けられもした。立場が立場なので、すべて同行している男が断ってしまったが。 見た目からして大変可愛らしく腕を組んで、従兄弟へのプレゼントに悩んでいるこの少年は、絶対に傍目にはマフィアのドンには見えないだろうな、とお供を仰せつかった男はしみじみと考えた。 ある国に根を張る、長い歴史の中二分化していたマフィアの、その和平と統合の象徴として選ばれた子ども。 漆黒を身に纏い陰から荒事を行っていた一派と、民衆に親しみ信頼を得て外交力で地盤を固めていた一派。そのどちらもの幹部連に愛され、年齢不相応な知識と実技を身につけ稀有なるカリスマを備えた子ども。 他からは、お飾りのお人形と思われていて、ナンバー2の従兄弟こそが真の首領だと考えている手合いもいるが、臆しも隠しもせず、コナンは巨大なファミリーの要として在るのである。 本来はひょいひょいと街中に出掛けてよい身分ではない。 けれども、コナンの実兄である快斗か、従兄弟の新一―どちらも若くしてファミリーの幹部である―が傍にいるなら話は別なのだ。 無論、誰が傍にいようとも見えない陰には、漆黒の者も潜みドンを守っている。 「色々見たけど、これぞっての無かった気がすんだよなぁ」 「ん〜・・・あのさぁ、栞がいいと思ったんだけど。さっきの紙製じゃなくてさ、鋼鉄・・・は重いけど、銃弾はじける素材で。んで、いっつも胸ポケットに入れてる小説に挟めるサイズの」 「!いいな、それ。新一がいつも持っててくれたら嬉しい」 「デザインを金属加工してる工房に持ち込んで、作らせようぜ」 「デザイン・・・?」 「勿論、コナンがするんだ」 「・・・」 うっとコナンはシブい顔をする。 彼はちょっとばかり芸術方面が苦手なのだ。 「それこそ、世界で一つだけの、コナンからの贈り物って感じじゃん。絵が下手とか関係ねーぞ。俺なら何より嬉しい」 さらっと背中をおしてやれば、コナンはそれもそうかと、と顔を上げる。 意志の強い瞳が綺麗で、「快斗」はにこりと微笑んだ。 笑まれたコナンは、顔を少し逸らして、一瞬見蕩れたのを誤魔化すように小声で叱責する。 「(っ、・・・あー、そ、その顔、快斗っぽくねぇ・・・)」 「そか?」 「(オメーも大概阿呆顔だけど、兄貴はもっと面白がって笑う・・・絶対)」 「(へぇ・・・可愛い弟笑うようなお兄さん、ね。んー、やはり消しましょうか)」 「(バーロ!新一に命ねらわれてぇのか)」 「(今更ですよ)」 将来的にこの子を頂いていこうと思っているので、確実に狙われる日はくるだろう。と、「快斗」姿のキッドは思う。 この子の従兄弟はそれに気づいていて、時々あからさまな殺意を向けるし。兄の方も時々複雑な顔をしている。もっとも、兄の方は、彼の最愛である新一に手を出さなければ、弟の幸せを心底願っているようであるから、障害ではない。 とんでもない出会いから恋に落ちて。 怪盗らしく戴いていこうと思いながらも、直ぐに攫わないでいるのは、未成年者略取よりも愛の逃避行の方がロマンチックだな、と考えているからだった。 怪盗がこの子の手を取ったように、この子にも怪盗の手を選んで欲しい、という想いもあって。愛を育む為に、新米ながら特定の特殊人物しかできない要職に付いて、コナンの傍にいる権利を手にしているのだ。 「(?オメーの影武者案に先に乗ったのは新一だぜ。どっちかーてぇと初対面で銃ぶっ放した快斗の方がやべぇだろ)」 「(間違ってヤられる立場に乗せたほうがヤベーと思いますが。あの時の銃は、コナンの命令でしたし。問題ありませんよ)」 「なんだよ、だったら・・・」 「おいおい、不満はないぞ?言っただろ、俺はいくらでもお前に付き合うよ」 思わず、大きく出た声に、不自然にならないよう話を合わせて、「快斗」は笑う。またもその兄らしからぬ笑顔を見てしまったコナンは、デザインの本を探す!と言って近くの本屋へ駆けていってしまった。帽子から出ている耳が赤い。「快斗」は可愛いな、と口元が緩むままに笑って、後を追う。その際視界の端で動いた影に、チッと舌打ちを仕掛けて、慌ててなんでもない振りを装った。 もっともっといつだって近くに居たいが、こればかりは侭ならないのが現状だ。 ドンに深く関与する人物に造作や年恰好、声までもが似ているから、と。そんな瑣末にてしかしながら稀少な点を買われ、異例の昇進で秘書の末席に座る事ができたのだ。 あの二人がいなくては、今日のこのデートも実現しなかったんだよな、と思うと、やっぱり二人とも大事にしないと駄目かな「まだ」とも思う。 しかし、コナンの傍に快斗も新一もいる時は、かえって怪盗は近くには居られないし。どちらかと成り代わるのが手っとり早い、という考えが捨てきれないでいた。 とある船で監禁されていたあの子を助けたのが事の発端。 更に、あの子を迎えに来た人間―組織―が、マフィアだと知った時には逆に怪盗が監禁されている始末。 異常事態に混乱しながらも、しかし、出会いの初めからあの子を気に入ってしまったのは事実で、欲しくなってしまったのだからどうしようもなかった。 全く人生は何が起こるかわからない。 ◆◆◆ ◆◆◆ 「これなら、描けるかな」 「…影絵?ああ、これは」 「新一、好きだし」 デザイン画集の棚ではなく、推理小説の背表紙並ぶ棚の前にいたコナンに、おや?と思いつつその手にしている本を覗き込んでみれば、薄茶のハードカバーに黒金で箔押しされたとある人物の形。パイプを口にし帽子を被った姿は、かの英国紳士の名探偵。 「結構、細かいかも…だなぁ」 特徴的な横顔。小道具付。シルエットだけみるなら、簡素化されているようだが、写し書きでも意外に綺麗に模写出来ない類でしょうね、とキッドは思った。 「そうかな」 「やってみたら解る。何事もチャレンジ、だ」 「…あのさぁ」 からかうでもなく、慎重に意見するキッドに何かを感じたコナンは、伺うように、俺でも綺麗に出来るのってどんなだ…?、と口元に指を当てて呟く。普段は見られない自信の無さそうな姿である。これは困る。可愛くて大変困る。 「あんまりガキっぽいのはイヤなんだよな?」 「ああ。新一が持ってて格好いいのが良い」 「花や草葉の印章か、記号なんかを、ワンポイントにする、ってのなら、いーんじゃねぇかな」 素早くデザイン集を探しだして、そんな頁をコナンに差し出す。 「へぇ…これ、いいな」 「桜か。確かにイメージあるなぁ」 コナンが示したのは、怪盗の祖国の春を彩るのに欠かせない潔き花の花弁。 「…どんな?」 「儚げなのに、強い?…うーん、儚いは違うか?綺麗なのに物騒、かな」 「へぇ。ふーん…。あ、これ」 「お、四つ葉だな」 「オメー、こんなの何かに」 「おう。幸運の御守りってな」 「……あの、さ」 「あ、コナンはコレかな」 ―っと何か言いかけてたな、悪い、とキッドがコナンを見た。 だが、コナンは口を閉ざしてキッドの指先をマジマジと見ていた。 「これ」 「クローバー仲間。つぅか花だけど。可愛いよな。今度花冠作ってやるよ」 「…い、らねぇよバーロ」 「?コナン」 パタンと本を閉じてしまったコナンに、これは気に入らなかったかと本を戻そうとした。だが、コナンはぐいっとその本を引っ張ると、カウンターへ足を向けた。 「それでいいのか?」 「うん」 「じゃ、あとはトレーシングペーパーと・・・材料買って帰るか」 チラリと時計を見る。 耳元に付けている無線は大人しいものだが、あまりドンを待ち侘びる者を待たせては後が面倒だしな、とコナンを促す。すると、コナンはピタリと足を止めた。 「俺の用事は済んだけど・・・オメーは良かったのか?」 「?」 「オメーだって、折角の休みだったんじゃねぇか」 「コナンのお供くらい充実した休みの過ごし方って他にないだろ」 今更延々と買い物に付き合わせた事にバツが悪くなったのか。 そう言って、下から見上げてくるコナンに、心臓が波打ちそうになるキッドだ。 ―いや、駄目だ、相手は「今の自分」にとっては弟なんだから―とポーカーフェイスを保とうと、内心で葛藤する。 その沈黙をどう取ったのか、先の発言の信憑性を薄めでもしたのか益々眉を下げるコナンに、キッドは堪らなくなった。 今すぐ、抱き上げて、抱きしめて、そして。 「コナン」 手が伸びそうになるのを堪えて、ぎゅっと片手を握りしめ、もう片手でポンポンとコナンの頭を叩いた。それから、腰を屈めてそっと囁く。 「(私はコナンとデート出来て満足。コナンもたまの自由を大好きな従兄弟殿の為に使えて満足。従兄弟殿は・・・私のソックリさんに満足させてもらってる頃。ホラ、みんな楽しい一日だったと思いますよ)」 「あのな」 「帰ろう」 途端に肩の力を抜いてジト目をするコナンの手を、ごく自然にキッドは握った。 小さな手。 類稀なる天性を握って生まれ落ちたこの子は、その器を見込まれ、大きな家族を支える柱の後継者となるべく手を引かれて育った。そして、与えられた全てを呑み込んで、今は家族の導き手として家長の座にある。 今日とて、帰宅をすれば、溜まっているだろう書類を片し食事の名目での腹の探りあいの席に出なければならない予定になっているのだ。 せめて、彼が座るべき椅子に着くまでは、存分に甘やかしてやりたいな、と。 小さなドンに恋をした男は、そう思った。 はっぴーほりでー ↓リクエスト↓ ○監禁ものか、マフィアパロ。 ・・・ ・・・ ・・・ 出逢いは監禁、気付けばマフィア、というKコのお話になりました。 監禁もマフィアも取り入れみたのにほのぼのになった不思議。 リクエスト、ありがとうございました! 出逢いとかマフィア面接のオマケ風景は ⇒ |