□夏と水分□新+←快 side:新一 暑いからもうどうでもいい気がした。だって既に汗だくなのだ。水を被ったように薄い水色だったシャツは濃いブルーになっていて、流石にこげ茶色のジーンズは更に変色して見えることはないようだったが、シャツとの境目―ベルトのあたりは湿り気を帯びて、締めている感覚がもう気持ち悪くてならない。足に張り付く布地は上半身よりもゴワついているせいか非常に鬱陶しい。こうなるとしゃがむのにだって、伸縮性が失われて動き難いったらないのだ。まだ濡れて張り付いても気にならないシャツ生地のがマシかもしれないが、いやそんな上と下の違いなどどうでもいい。原因究明がしたいわけじゃない。 「脱ぎてぇ」 ここが公道でなかったら、海とか山の中とかせめて人気の無い公園の繁みだのがあれば、いや、脱ぐだけじゃ駄目だろう。何となれば、そのあと再び着る事も考えなくては。 「何言ってんの」 呻くような呟きに呆れた声が返ってきた。ムカつく。コイツだって同じくらいに暑いはずなのに妙に飄々としてやがる。ポーカーフェイスがうんたら言うが、確かに夏場に上下の白タキシードとか着込んで大立ち回りするコイツは暑さには強そうだった。ムカつく。 「いや、今の心境。暑い」 「うーん、脱いだら直射日光で余計暑い、いや熱いと思うんだよなぁ」 言われてみて、それもそうだと肯いた。日焼け云々はともかく焼け付く日差しの方が、むうわりと立ち込める暑さよりも手酷い仕打ちをしてきそうな按配ではあった。 「とりあえず、水分」 差し出されたペットボトルを睨んで首を振る。熱中症を起こすぜ?と眉を顰めるが知ったことか。俺が暑いと洩らし、ヤツが水を差し出すこの遣り取りは既に数度。その度に中身の詰まった冷たそうな水が出てくる。一体どういう仕掛けなのかと2度目に疑問を抱いたが、暑さを静める水が喉をすぅっと通ったらどうでも良くて、更に再び暑くなってきたら完璧にどうでも良い事になっていた。だからこれが何度目かもどうでも良い。 「一気に飲むだろ、そーすっと、ぶわーって汗かくだろ」 それを繰り返した結果が今の汗だく状態なわけで。 「水で内部の熱下がるし、汗かいたら気化熱でもっと体温が下がる」 「知ってる」 でも、これ以上一瞬のスッキリ感とひきかえに汗だくになるのは嫌だった。本当に、今は。 「脱ぎてぇ」 再びの俺の言葉に溜息だけ返して来た相手を、俺は見た。ん?と視線を返してくる。そのヤツの背後に見えた建物があって、俺は思わずヤツの手を引いてそちらに向かって歩き出していた。 「え?ちょ!?」 ぐいぐいと。俺に引っ張られるまま背面方向へ連れられながら、ヤツが俺が向かう先を見て絶句した。まぁ俺だって突然隣を歩いていた友人がそんな真似をして―そんな所に向かいだしたら正気を疑うだろう。ついでに蹴り飛ばすくらいするかもしれない。だが、俺は知っている。コイツは大変ハートフルに出来ているのだ。脱いだ後の服の洗濯まで頼まれてくれるんじゃねーかな、と思う。いや別に洗わなくてもちょっと乾くくらいの間でもいいから付き合ってくれたら良い。流石に一人で使用するシステムじゃない場所なのだから仕方ない。俺の隣を歩いていたのが運の尽きだとでも思ってくれ。そもそも探偵の隣を歩く怪盗の存在自体がアレなんだと思うが、今は暑いからどうでもいい。 「休憩しよう、黒羽」 目の前の建物は妙にピンクがかった宮殿風建造物。繁華街に似つかわしくない宮殿は、その宮殿には似つかわしくない貧相な門前に、妙にくねった文字で利用案内が書いてある看板があることで、非常に繁華街の一角を占めるのに相応しい風情を醸し出している。 「って、オイィ?!え、マジで」 「何か変装しろ、年上に見えるやつ。今すぐ」 怪盗では流石に不味いだろうと暑さでボンヤリする頭でも判断できた。そうだ、あのキッド好き警部なら変装マスクを常時準備してるんじゃねーかコイツ。この際白鳥さんか高木さんあたりでも。ちょっと少年買って入るくらい余裕の年代ならいいだろう。いや駄目か。警察関係者との密会は流石にアレか。いやいや別にバレなきゃいいのだ。なんなら俺の親父でも、この際。 「黒羽、早く」 最後にシャワーを浴びてスッキリ出来れば大概のことに目を瞑れるくらい脳は茹だっていた。 side:快斗 暑いとぼやく工藤は、何でお前は平気なんだ?と無言の問いかけをしていた。本日何度目かは忘れた。俺だって暑い事は暑いのだが、コイツほどではない。言っちゃナンだが、俺は天下に名を轟かせる大怪盗なわけで普段から割りとその仕込みを忘れない。着のみ着ままで寝食忘れて突っ走ていくような、知的で落ち着いたイメージよりずっと粗野な探偵とは違って、マジシャンは人の思考を裏切る仕込みこそが命なのだ。 かの工藤新一という名探偵が暑さに弱いのは意外だった。だって怪盗の知るあのボウズときたら夏だろうが冬だろうが証拠集めに犯人確保に元気に―無鉄砲に走り回っているようなガキだったわけで。俺が変装するに当たり調べておいた彼の履歴にはサッカー少年という文字もあったから、絶対にバテたりしない凄い体力とバイタリティに溢れる夏の似合う男だというイメージがあったのだが。 「脱ぎてぇ」 なんやかんやと警察関係者と絡むことの多く、大人受けする笑顔を武器に事件に首を突っ込んでいく品行方正の筈の少年は、今は俺の隣には居ない。本当に公道のココでやったら軽犯罪モノになるような事を、かなり本気が窺える低い声で呟いた。―心臓に、悪い。 「何言ってんの」 軽く返しながら、本当に脱いだら面白いのにな、と考えた。 だが、そんな事をボンヤリ考えていられたのは少しの間だけ。 暑さにとうとう頭がイカれたらしい工藤は、俺の腕をひっぱり、とんでもない場所へ連れ込んでくれやがったのである。 貧相な門扉を裏切らない、およそ宮殿らしからぬ薄暗く貧相な入り口付近で、工藤は大型の自動販売機のような機械から部屋を選んで鍵を取り出した。 なんとも言い難い外観の建物でも、中に一歩入ってしまえば、薄暗い雑居ビルの廊下が伸びている素っ気なさだ。無人の入り口で良かったな、と一瞬ホッとしたのも束の間、エレベーターそばの小さな窓口から「ごゆっくりどうぞ」と声をかけられて心臓が縮みあがった。さりげなく有人の入り口だったようだ。男同士の入室に何か言われるかと思ったが、特に注意されることもなく、エレベーターに乗り込んだ。 「とりあえず、風呂!シャワー!」 カードキーを通し、部屋を開けて。部屋内部をぐるりと見回ったのも束の間。「お、ここか」と背後から聞こえた声に振り向けば、同行者のとても迅速な行動に、俺の意識がまたも遠のく。大層湿って脱ぎにくくなったシャツをたくし上げて頭を通そうとしている姿。肩甲骨の浮いた背中が、俺の目の前に。 一体今日の工藤は何なのだろう。無防備にも程がある。 いやいや、俺が単なる友人で、工藤の目的がサッパリすることである以上、その行動はごくごく当然の事なのだ。 「先いいよな?」 「おー。ごゆっくりー」 既に脱いでる相手に否も応もない。さっさと行けよ、と俺は手を振った。出来るだけ、声の発生源を見ないように。 「・・・ラブホ、だなー」 部屋の入り口すぐに設置された浴室の向こうへ相手が消えてから、俺は室内を検分する。仕事柄、泊まり客の素性を詮索しないこういった場所を一時的な簡易隠れ家にしたこともあり、別段物珍しいわけでもない。だが、仕事柄使う以上、盗撮や盗聴には格段に気を使って使用していた過去があるため、殆ど習慣のように、あちこちをひっくり返し、自前の道具でオカシナ仕掛けがないかを見回っていた。 音を拾うにはベッドの周り。撮影ならベッド横斜め上方向。もしくは天井。あるいはカーテンの陰。 窓のカーテンを確認し、それから室内部へ一部出っ張ている部屋の壁に掛かっていた布切れを引っ張って、俺は硬直した。 そうだ、ラブホなのだ、ここは。 何で外界と繋がらない窓のないはずの場所にカーテンがあるかといえば、壁向こうが透けているからで、この場合透けて楽しい場所などただ一つ、風呂場、なわけで。 外界ではなく桃源郷がそこにはあった。 俺の前には、壁に掛かったシャワーヘッドに向かって目をつむって首を振り仰ぎ、勢い良く降り注ぐ水流を全身に浴びている工藤の姿。 もちろん、全裸だ。 ちょうど、真横から眺めるような、透かしガラスの位置だった。 俺は慌てて、カーテンを戻そうとした。 だが、その瞬間、ボディソープに手を伸ばそうとした工藤が、こちらを見る。 うわ、バッチリ目が合うじゃねぇか!と俺は一瞬硬直した。―いやワザとじゃない。これは興味本位でカーテン引いたらこうなってて、別に覗くつもりとか、いやその、うわああああ! ・・・一瞬のうちに走馬灯のような言い訳が脳裏をよぎったのだが、工藤は、視線をさらりと手元に流して、水に漬けると膨らむタイプの簡易スポンジを液体ソープの入っているボトルに押しつけていた。 「・・・あれ?あ、」 どうやら、向こうには、こちらの行動はバレていないようだと解り、俺はホッと息を吐いた。 この向こうの壁はマジックミラーになっているらしい。 「つーことは、見放題・・・」 呟いてから、俺は首を左右にブンブン振ってカーテンを戻そうとした。なのに、俺の意志に反して手が動かない。理性は今直ぐこの光景を視野外へ!と警告するのに、俺の体は実に本能の命じるままの行動をとっている。 出る前に―シャワー音の切れる前にサッとカーテンを引いてしまえばいいのだ、大丈夫―と囁きかける声がどこからか。大丈夫、気づいてない。大体風呂から出た後に、この窓の存在に気づいたとしても、まさかラブホに連れ込むくらい気楽に無警戒につるんでいる友人が覗き行為をしていたなどとは思うまい。 いや、いっそ盛大にカーテンを開けたまま、いやぁ、ついつい開けてみた!とか笑ってやるくらいでいいのだ。 うん、その手で行こう。 俺はさっさと結論を出すと、視線はそのままでさりげなくリモコンを持ってベッド脇に備えられているテレビを点けた。とたんに「いぁあああん」とスピーカーから漏れ出てきたAV女優の喘ぎに、慌てて音量を下げまくる。ガラス越しに一瞬工藤が妙な顔をして、こちらー部屋の方へ視線を投げてきた。何か声を掛けてくるかと思ったが、少し首を傾げただけで、体を洗う作業に戻る。 へぇ・・・首から洗う派なんだな、名探偵は、などと俺は思った。 俺の背後の画面では男女が熱く些か嘘くさいほどの情熱的絡み合いをしている。覗き付きシャワールームにAV視聴が標準装備とは、実は結構いい部屋なのかもしれない。広さも結構あるし。 部屋を選んだのは工藤だったが、一体何を基準に選んだのか。後で聞いてみたいなぁと思った。 しかし、今は。 するすると白い泡が日差しの下にあっても白かった肌の上を滑っていくのを楽しみたかった。 右手で持ったスポンジを首から左腕へ、脇の下、胸元、スポンジを持ち変えて今度は反対側。 肌は泡で覆われることなく、首や肩先の一部に残る以外は絶え間なく流れるシャワーによって、すぐに肌を滑って下へ下へと落ちていく。流れを追うように、工藤の手が腹へ下腹部へ、それから届く範囲だけでも、という感じで背中へと。 「んー・・・で、足は?」 そのまま立って全身を洗うのかな、足あげたりすんのかな、と見守る中、工藤は壁に向かって片足をあげてー足の指先から脹脛、膝の裏、太股と手を動かし。次に足を上げ変えて、同じ順序で太股まで洗った後、そのまま股間にも手を伸ばした。 「マジか」 俺の居る側の足が後から上げられたおかげで肝心の局部を洗う姿が拝めなかった。 心底から舌打ちした。くっそ、一番いいシーンなのに! いや、しかし、見えないからこその手の動きは妙に卑猥でもあった。 そうして時折視線を工藤からはずしながら(なにせ勘の鋭い相手である。ずっと注視し続けるのは不味い気がしたのだ)、じんわりと自分の股間が熱を持ち始めてきたのも他人事のように感じていた。 背後から音量は小さくとも普通に聞こえてくる女優の喘ぎ声や濡れた音よりも、目の前のガラス越しに微かに聞こえてくるシャワーの音や工藤の体が立てる音ばかりを拾うことが大事で。視線をさまよわせながらも、工藤の表情や肌質や筋肉の張り具合といった情報を視覚から得ていくことの方が重要だった。 よしんば、工藤におっ勃ててるのがバレたところで、AV見てたらさー、とでも誤魔化せるし。 いっそ抜いてても良いかもしれないな、とチラリと考えたが、さすがに後が気まずいだろうと自粛した。 外を歩いているときからびしょびしょで、今もシャワーの水を浴びて滴るほどに濡れている工藤に対して、外にいた時から今もなお、むしろ先ほどよりも酷く、俺はカラカラに乾いていた。 風呂を終えた工藤は、バスローブを適当にひっかけて出てきた。いや途中まで見てたから解っていたが、「次、入るかー?」と『背後から』声を掛けられて振り向いたときの、正面から見た感じは、正直覗き見た時の数倍の破壊力だった。 工藤が出てくる前に何とか俺を萎えさせた嘘くさい女優の媚態効果が切れて、熱をぶり返しそうになったくらいに。 「わ、てめ、何見てんだ」 「えー、勿体ねーじゃん、せっかくだしさぁ」 「・・・いくらご休憩っても・・・オメーまさか、」 「してねー!抜いてねーよ、さすがにしねーよ、つかあんま面白くなかった」 「んー、OLモノ?」 「いや、白衣の女医だったんだけどさぁ」 「脱いだら意味ねーな、確かに」 「顔もケバすぎだしさ。俺も軽く風呂さしてもらうわ」 「おう、ジャグジーあるから結構楽しいぜ」 「マジ?通りで長湯だと思った」 「風呂で選んだ部屋だからなー。パネルんとこに、ここの風呂が写ってたから」 「へぇ」 俺の脇を通り抜ける一瞬の清潔な―どこか甘い匂いに、目眩がしそうだった。ぐらりと体が勝手に動きそうになるのを、工藤の身体に手を伸ばしたくなるのを、とにかく堪えて、俺はすれ違いに風呂場へ向かう。工藤はTVの側に置いておいたリモコンを取って、番組を変えようとしていた。 「つっか工藤ってさ、こゆとこ結構来たりすんの?ずっげ慣れたように入ってきたわけだけど。何か意外」 「客としては殆ど入ったことねーな」 「は?」 「こーゆートコは、男女の愛憎のもつれの現場になりやすいんだよな」 だから、システム知ってっけど利用したのって初めてなんだよなーと続く台詞に、俺はホッとしながら深く深く納得したのだった。そして、なるほど、と勝手に肯く。妙に長い入浴タイム中に、浴室のあちこちを妙に調べて回ってたのは、今後の事件遭遇の時のためか。 一番短いご休憩タイムだったのに、支払った料金は普通のビジネスホテル一泊分くらいだった。やっぱ高い部屋だったらしい。だが、工藤に不満はないらしく実にスマートにカードで支払いを済まそうとした。しかし、残念ながら、あそこはエアシューターでの現金払いのみだったのだ。いや、フロントまで赴けばカード払いも可能だったらしいが、人前に出るのを嫌がった工藤に立替を依頼されて、結局俺が払った。 まったく、現金よりもカードな坊ちゃん族には困ったものである。 「悪かったな、付き合わせてさ」 「それは構わねーけど」 「ちゃんと返すからさ」 「おう」 宮殿めいたラブホを背に、汗だくの体をサッパリさせ、俺が交代で浴室に消えた後更にサッパリでもしやがったのか、非常にいい顔で工藤は謝罪した。 ―後でカメラ画像を拝むのが楽しみだ。ソロプレイでも撮影できていた日には、当分俺は俺の自家発電燃料に困らない。 という期待は、実際の所殆どしていない。 なにせ俺がゆっくりと風呂場から出てきたとき、工藤は大変ご機嫌に一人カラオケをしていたからだ。 TVの棚にそんな道具が在ったのは把握していた。だが、一人マイクを手に、ついでにタンバリンも手にして、調子外れな音程で歌う工藤なんてモンが風呂上りの俺の前に出現するとは予想外だった。 その後、目一杯歌う工藤に時間一杯付き合わされたのは言うまでもない。 ひとり風呂場で、雰囲気に呑まれたーな感じでちょっと手ェ出してみっかなー、いやいや、下手打ってようやくお近づきになったの台無しにすんのは嫌だなー、でも抑え切れるか自信ねーんだよな、などとジャグジーの泡の合間で悶々としていた己が馬鹿とか阿呆とか通り越して、可哀想になったくらいだ。 でも少しホッとしたのも事実。 多分いや間違いなく、俺はこの名探偵に一方ならぬ想いを抱いているのだが、身体に兆す情欲のままに手を伸ばす事には、まだ、躊躇いがある。 対峙し冷や汗流れる緊迫感の中で、あの青い瞳に心臓を射抜かれるのも。 肩を並べて隣に立って、まるでただの友人同士のように笑顔を向け合うのも。 俺には大切で、大事にしたい工藤新一との関係で。 時折、心も身体も全部暴いて手に入れたい欲動が沸いたとしても、ポーカーフェイスで押し殺して仕舞えるくらい、近くに在ることのできる今が、本当に、本当に大事にしたいもので。 ―まだ。 そう、まだ。 「じゃ、明日、放課後江古田の本屋行くときメールするな」 「素直に俺の所に来いっての!本屋のついでかよ」 「はは」 「はいはい、じゃーな!」 「おう」 駅の改札を通ってから振り返って手を振る工藤。着ている服はラブホに入る前とは違うシャツだった。汗だくになった青のシャツを一応部屋で干してはいたが、結局諦めて、「予備があるなら貸してくれ」と工藤に強請られたのだ。よって今工藤が着ているのは、俺が変装用に縮小軽量化して所持していたワイシャツ。ある意味俺シャツ。未洗濯で返してもらうには、どういう風に話を持っていけばいいだろうか、とホテルを出てからずっと考えていたのだが、結局良い言い分が思いつかないまま駅で別れた。 「ほんじゃ、鑑賞会といきますかぁ」 いや、視聴会? 自宅へと帰って、俺が早速取り出したるは、ポケットの中の超小型カメラ。 ここには、途中から撮影した工藤の入浴シーンは勿論、俺がシャワーを浴びていた間の工藤が撮れているはずなのだ。 再生用のデッキに繋いで、俺は同時録画をしながら再生ボタンを押した。 前半部は大変に美味しい画像が撮れていた。 なるべく直視しないようにしていた主に工藤の下半身。一人きりの部屋なら見放題である。―ご馳走様。 ずっと乾いていた俺の一部が潤って、欲しい欲しいと呻いていた獣が少しだけ沈黙する。 そして、後半部は、予想通りのご機嫌な工藤の顔。 これはこれで眼福だ。うん。 「・・・ま、画像だけ・・・音声抜いて、いや、むしろコレ目覚ましになりそうだな・・・」 携帯の着ボイスにするには悪目立ちがすぎるかな、と俺は思った。 暑気中る前に水を 微妙なオチとへたれ快斗な夏。 入浴シーンは永久保存。 めもめもより加筆再掲。 |