*快斗+新一 ■□マジックオブラブ■□ 1〜旅立ちの朝がきて〜 朝起きたら半強制的に「さぁ、勇者よ。旅立ちの時が来たわ!」と言われ【勇者募集。奨励金・賞金有ります】と書かれたお城からのチラシを握った母に家を叩き出された。 いつの間にか整えられていたお膳立て。 思えば生まれた時から、勇者マニアだった両親の、勇者だ何だと言って行われる洗脳行為に晒されていた俺だった。 多少光魔法属性が・・とか生まれた時に村の占いオババに言われたからって、ソレをお告げとか、ドンダケなんだ、両親。 「きっと勇者になるって思って、普段の食事に毒を入れて慣らしてて良かったわ!」母さん、俺がよく腹を壊していたのはやっぱりアンタのせいだったのか。台所で見つけた毒の小瓶は、最近すっかり中身砂糖でしたよ。 「私だって、もう少し若ければ、勇者として発てたのに!つまらなくて怪盗くらいしか出来なかった事を思えば、まったくお前は恵まれているぞ。いい時期に魔王が出てきたんだから」とは、どんな犯罪告白だ。危険思想だ、おい親父。 とにもかくにも。 勇者として村を旅立たねばならないらしい俺の次の行動は、目の前に聳え立つ妖しい屋敷に住むという魔法使いを旅に誘い出し、パーティーを組まないといけない、んだそうな。 嗚呼厄介な特質を持って生まれた我が身が少々恨めしい。 どうせなら一人気ままな旅が良かった! よし、旅なんか行きたくないとか、駄目って言われたら、速攻で諦めよう。 そんで、街の出会い喫茶(ギルド的な場所とか)で綺麗なお姉さんな魔法使いをナンパしよう。 俺はそう心に決めて、屋敷に向かって踏み出した。 「すんませーん」 とりあえず正攻法で、と。玄関のドアを叩く。 「はーい」 ・・・普通に返事が来て、少し驚いた。 「あのー、コチラに魔法使いさんはいらっしゃいませんか?」 現れたのは茶髪の少女。 良かった普通の人だ!と一瞬思ったが、扉が開いた途端酷い臭いが鼻どころか目をもツーンと刺激してきた。あと、彼女の背後から聞こえる謎の物音が耳に入る・・・一体何の音なんだ。ニャーはまだしもキシャーだのモゲ〜〜だのって。 「・・・あなたが、勇者?」 「ふぁい。ふーか、何ごのに゙おひ…!」 「そう勇者なのね。確かに此所には魔法使いがいるわ。魔王か何か倒す為、彼をパーティーに誘いにきたのよね?そうなんでしょ、いいえ、この際事情が多少違ってても良いのよ。丁度良かった!」 涙目になって鼻と口を塞いだ俺についてはスルーし、少女は勝手に話を進めていく。 ・・・ちょうどいいって何。 ものっそい嫌な予感―悪寒、が した。 そうして引き合わされた魔法使いは、いくら自宅鍛錬を重ねてもマトモに魔法を使えないどころか、被害甚大な家屋破壊を繰り返していたために、ほとんど厄介払いといわんばかりに追い出されて旅に出ることになった、・・・というのが、俺の眼から見た認識である。 けれど、後に 『俺の勇者だって、ちゃんと分かったから、一緒に旅に出たんだろーが』 と、彼は語るものだから、なんだか非常に驚かされたりもして。 妙に気恥ずかしい感じになったりもした。 いや、出逢ったときに言われてたら、きっとドン引いていたのだろうけれど。 俺との関係において、良くも悪くも多大な影響を与え続けていくグルグルの魔法使い・新一とは、そんな風に出逢ったのだった。 |