探偵三人
疲れた疲れたと三人で言い合いながら、工藤邸前にさしかかる。
一体、探偵が三人も雁首揃えて怪盗一人にしてやられるとは何事かと言い合いながら、気がついたら米花町。
どうせなら反省会だ、と言って連れ立って歩いていた。

「白馬と服部がトモダチだったとはなぁ」

工藤が東都にやってきていた服部と共に向かった怪盗の予告上現場にいたロンドン帰りの男。あれ、アイツ…と工藤が考えるより先に、服部が「よぉ!お前もきとったんかー」と呑気に声をかけたのだ。
そして、現場撤収の際にも「どうせなら、お前も歩いてつきあえや!」と言って、颯爽とお迎えの車に乗ろうとしていた白馬を引っ張った。

「おー、アレや、覚えてるやろ探偵甲子園ンとき」
「…おや?あの時、確か工藤くんは」
「いなかった。俺はいなかったな!なァ服部ィイイ?!」

不用意な発言を、工藤がガンを飛ばしながら締め上げてやれば、焦る関西人。

「せやった、勘違いしとった!スマン!まぁ工藤がおらんかったあの時に知り合うて、そんで先週や。東都駅で偶々会ったんや」
「先週…って、アレか。留守電の時」
「工藤がおらんかったから、どーしたもんかと駅ぶらついとったらな、ひったくりに出くわして」

ほうほう、と工藤は適当に肯く。
『くどー?俺や、服部くんですよー、なんやおらんのんかい』と言って切れていた留守録メッセージを思い出した。ああ、いねぇよ。と帰宅してソレを聞いて思ったものだ。用件が無かったから掛け直しもしなかったが。
探偵としてとか、何か重要な用事があったなら、先ずは携帯に連絡をしてくるだろう。きっと何かの用事の『ついで』に寄ろうとして声をかけようとしただけなのだ。休日だったし、出先までは追いかけはしない。もし家で本を読んでいるなら相手をしろ、という時はそんな連絡をしてくる奴なのだ。

「で、二人で追いかけたのか」
「いえ」
「ちゃうわ、コイツ被害者やってん」
「…白馬探偵?」

あえて探偵に力を込めれば、慌てて弁明する貴公子然とした男。

「なにぶんロンドンから戻ったばかりだったので、少々ぼうっとしてしまいまして」
「とろっくさい兄ちゃんやな、て思ったらどっかで見た顔やったからな。そんで鞄取り返してくれた礼がしたい、ゆーから」
「一緒に観光でもしたのか?それとも警察庁に事件探しにでも行ったのかよ」

初対面ですら気安い男なのだ。顔見知りで探偵同士となれば、一体何を見返りに要求したものだろう。面白い話でもあるのか、と工藤は思ったが、白馬はやや俯き加減に首を横に振った。

「…いえ」
「自家用車あるゆうたから、工藤ン家まで送ってもろたんや」

あっけらかんとした発言だが、ちょっと待てよ、と工藤は眉を顰めた。

「…何してんだ服部。留守電だったろ?いなかっただろ?」
「おー、留守やった。おらんかったなホンマに」
「…驚きましたよ。向かった先があの工藤くんの家で、しかもまさか不在と知って訪ねに行くとは」

僕には理解不能です、と白馬は言う。
まったくだ、と工藤も肯いた。
服部はそうか?と不思議な顔をした。

「帰りの新幹線の時間までココでだべってたわ」

ココ、といって工藤家の門前を―地面を指した。
それは、なんというか。
不憫だったな、白馬…という目で工藤がそっと彼を見やれば、察したのか肩を竦めて苦笑いをしている坊ちゃんな風体の彼。
何が哀しくて他人の家の前で、そんな時間潰しに付き合うのか。

「ま、今日はソファで話せるからな」
「それは嬉しいですね。ズボンが汚れなくて済みます」
「何や、そんな小さいこと気になるんか?自分。潔癖ゆうやつか」
「違います」
「んじゃ、なんや。工藤の家の前が汚いっちゅうはなしか」
「違うだろ、てめ」

軽く工藤が服部を小突けば、その様子を見ていた白馬がフッと笑った。

「なんだ?白馬」
「いえ、本当に仲が良いんだな、と思っただけです」
「そーか?」
「通りで、二時間も服部くんが工藤くんについて語り続ける訳です」

「…何してんだ服部」


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