女子高生しんいちとお久しぶりのお友達
*幼少の君のやつ(性転換のアレ)


現在、工藤新一は帝丹高校に通う17歳の女子高生である。
花も恥らうお年頃の彼女はしかし、今日も今日とて、遅刻ギリギリにしか間に合いそうに無い時間に玄関を開けて―右手に通学バッグを持ち、左手で口元から半分ほどはみ出したトーストを抑えるというスタイルで―『工藤家』と表札のかかった門前で待っていた幼馴染の前に現れた。

「新一!遅い!!」

待ち構えていた新一と同じ高校に通う毛利蘭はジリジリと睨んでいた腕時計から目を上げて、キツく叱責を飛ばした。既にこれで四日目のことではあるが、今日は特に遅い。
なのに、まだ朝ご飯が口からはみ出ているとは一体何事だ。
しかし立ち止まる暇はないと判断し、新一の手から鞄を取り上げるとさっさと走り出した。

「あひ、おぇん、ふぇぼー!」(わり、ゴメン、寝坊!)
「ああ、もう情けない、早くパンは食べる!ほら、もういいからさっさと足動かして」

学校にたどり着く前に、ぴょんぴょん跳ねている髪を梳かして、ついでに自分と同じクラスで同じ授業を受けるにもかかわらず妙に軽い鞄の中身をチェックしてやらなければ、と思いながら、毛利蘭は隣を走る彼女を急かし、自分もまた急いで学校への道を走った。




「はぁー・・・間に合った!」

ガラガラーと教室の扉を開ける。新一の髪の毛はてっ辺付近の強い癖毛を残してそれなりに整えられて、ひんまがったネクタイも綺麗に整えられていた。幼馴染の男の、手際の良い世話のお陰である。

「あっら、もーまた同伴出勤〜?相変わらずラブラブだねぇ、あんた達。1年のブランクがあったとは思えない」
「ちょ、園!」
「何言ってんだバーロ!」

軽くシナを作り、わざと高い声音を出して揶揄を飛ばすのは、新一と蘭の共通の腐れ縁、もしくは蘭の親友といえる鈴木園琥―ソノコと読むが、園と幼馴染達は呼んでいる。彼も女性名に聞こえる元の呼び名よりもそう呼ばれるのが好きである―だった。

「新一君、靴下さがってる。コレ使う?」

彼女のバーロ、などという憎まれ口が照れ隠しなのは知っている園は、ざっと彼女の全身を見渡し後、ソックタッチをポイと渡す。

「身だしなみ位自分で出来るようになって帰ってくると思ってたんだけどねぇ・・・スイスの全寮制女学院なんて花園で、一体なにしてたんだか」

見渡す限り女しかいないような空間で、彼女の事件引き寄せ体質とソレに付随した推理力が必要とされる場面など、そうなかったろうに。レディとして修行してきた帰国子女には到底見えない。

「うっせー。まだ時差がキツイんだよ・・・つか、何でも持ってやがんな」

こんなの男は使わないんじゃねぇ?と少しばかり不審がりつつ、新一は椅子に座ってから、ソレを塗り、脹脛あたりでダレていた膝下丈のソックスをシュッと本来の位置まで上げた。足を軽く前に蹴り上げて行う動作は、色気はないが、可愛らしい。隣の席の園は眼福眼福と目を細めて見守った。

「備えあれば、お洒落に死角無しってね〜」

園は、明るい色をした髪の毛を肩まで伸ばし、前髪を女子の如くカチューシャで上に上げている。ネクタイを緩く申し訳程度に締めてブレザーの中のシャツのボタンもまた二つ分外しているロン毛の茶髪など、およそ鈴木財閥の御曹司には見えないけれど、本人は至ってお洒落のつもりであるらしい。

「お洒落はいらないから、せめて最低限のことしてから外に出ないと」
「なに?パンでも咥えて出てきたわけじゃないっしょ」

もう片方の隣からの声に、園はクルリを身体を蘭に向けた。

「来たね。しかも、焼いてすらいない食パン」
「・・・・・」
「ハッハー!期待を裏切らない子だね、ホント。で、待ってた蘭とぶつかりでもした?」
「なんでだ、バーロー。そこまで鈍くねぇ」
「そこでぶつかったら、完璧なフラグじゃないか」
「なにいってんだ」「なにいってんの」

頭の上に「?」を出している二人など知ったことかと、園はウンウンと肯いてなにやらブツブツと呟く。

「ある意味転校生とのドッキリイベント!かつては何でも知ってたけど、いつの間にか成長した姿を距離ゼロの場所で色々再確認!見詰め合う瞳と瞳!」
「パン食ってる奴と見つめあって楽しいのか」
「イベント?」
「照れない、照れない。今更じゃないのさ。蘭は遅刻しない、蘭は新一君と一緒に学校に来る、つまり新一君も遅刻しない。これって三段論法?」
「新一の足が遅かったら破綻する論理だね」

一番後ろの窓から横並びに、新一・園・蘭の順で隣り合った席について、周りに朝の挨拶を投げていれば、キーンコーンとHRの鐘が鳴り、同時に担任教師が入室してきた。

「そんときゃ、蘭が新一君を抱えて走れば問題解決!ってね〜。蘭なら新一君の一人や二人軽いもんデショ」
「まぁ、・・・新一がいいって言うなら、出来ないことは無いと思うけど」
「ふざけんな!イイ、なんていうわけねーだろ」

お姫様抱っこでご登校なんて、素敵じゃな〜いと更にからかい続けようとする園をギリと睨み付け、優しいけれど優しすぎるのかふざけているのか判断のつかない蘭にべっと舌を出し、それで話しは終わりとばかりに新一は身体を教卓に向けた。

一年ぶりに復帰した日本の学校に通うのを、彼女は楽しみにしていた、ということになっているのだ。

そのため、視線を外した向こうで、園が少しばかり大きく開いた目許を赤くしていることにも、悪態をつかれたはずの蘭がクスクスと笑みを浮かべたことにも、偶然拗ねた新一の姿を目撃した他のクラスメイトが赤面したりゴクリと喉を鳴らし―即座に蘭と園に殺気混じりに睨みつけられ真っ青な顔色になったことにも、新一が気づくことは無かった。





***

男児コナン化した後の女子高生しんいち復帰の図。留学してたことになってる。
男児時代に怪盗にちょっかい掛けられてて、この後会いにいくとこまで書いてあったけど適当に切り上げ。
男児化なので、コナンくんは蘭兄ちゃんや園兄ちゃんの男ぶり(一緒にお風呂やプールしてた)など、知ったりして意識したりしなかったり。コナンキャラは全て性転換妄想だったんで、歩くん、光子ちゃん、元子ちゃん、哀くん、がいたり。
妄想してる時が一番楽しかったよね、という残骸です。


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -