ぺろ
互いの情動の赴くままに激しい運動をしてしまった後、シャワーを浴びてくると言ってベッドから去って行った相手を待っていた。
無論俺は彼と一緒に(勿論抱き上げて)行くと主張したが、これ以上盛りつかれたら蹴り殺したくなると殺意をちらつかせられたので、相手を犯罪者にしない為にも俺は大人しくその場にとどまる事にした。殺人はいけない。人を害する犯罪に厳しい名探偵がそれを行うとなれば間違いなく事件は迷宮入りになるだろうし。

およそ五分前−
まぁ回数は多かったけど中には出してないし、と俺は彼の綺麗な背中をベッドで見つめていた。

「なぁ、歩けんの?」
「うっせぇ」
「心配してんだぞ」
「余計なお世話」

しんどそうにソロソロと動く様子に、愛しい相手に負担を与えている後ろめたさや申し訳なさもあるにはある。だが、それ以上に喜びが湧くものだ。ダメージを受けている有り様も、白い肌に映える薄赤色やくすんだ色で残る噛み跡も全て俺がしたことを、彼が受け入れてくれた証なのだから。
とりわけ理性が勝っている状態ならば情事の痕跡を残そうとする行為を嫌がる彼が、ぐちゃぐちゃに溶けて「もっと」と強請りだす瞬間。俺が触れて、与える全てを悦んで、一緒になって快楽を追い出す時に得られる快感はとんでもないものだった。
記憶を反芻するだけで、くたくたに溶かされて中身を抜かれたブツにまた熱が集まり始まるくらいに。
だが、それはマズい。
殺人現場が風呂からベッドに変わるだけになってしまう。
部屋の扉の向こうに消える新一を見送った後、俺は優秀すぎる脳内記憶再生モードをオフに。

−すると、だんだん瞼が重くなって…



「んっ、ァ」
「イイ声だな」
「んん、…ん?ンン?!」
「じっとしてろって、も、少しだから」
「うわ、ちょっと新一?!って何、おま、うひゃ」
「動くなって」
「む、り、うひひ」
「…色気消えてんぞ」

重くなりつつあった俺の瞼を一気に引き起こす背中への感触。
ちょうど肩甲骨から脇の下へ潜るように。
ちろちろ動く濡れた舌先とふわふわと肌にかかる吐息。とんでもなくくすぐったかった。



「ったく、何だよ新一」

不覚にも背後を取られ一頻り舐め回された後、俺はベッドに身を埋めて、おおよその彼の行動動機に見当を付けながらも敢えて問い掛けた。

「…痛くねぇの?」
「全然」
「鈍いのか」
「まさか!痛いんじゃなくて、気持ちイイんだよ」
「ああ、マゾヒス」「違うって!」

確かに触れられてピリピリした感じはあったが、その原因が新一からの行為によるものなのだと思えば、俺にとっては何のこともない。

「…いっつも、そんな、なるのか」
「まぁ。今日は久々に抉られたかな」
「……」
「ンな顔すんなよ。俺だって歯止め利かなくて散々新一に痕付けてんだ。オアイコだろ」
「オメーのそれは、怪我だろ。…悪(わ)りぃ」
「あのな、俺とすんのが気持ち良かったって証拠残されて、更にペロペロ舐めて上塗りされるんざご褒美にしかなんねーって!」
「…やっぱマゾヒス」「違うって!」

けれどその後、舐めて労られた傷痕に噛みつかれて痛みより快感を覚えた俺は、己に潜むM性に動揺することになるのである。



※※※

神さまが指南してくれた新一のペロ性に悶々しての犯行である。ペロ性よりM性に傾いてるのは気のせい。



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