中学生の君(新一・園・蘭)
*幼少の君からのコナン全キャラ性転換設定。

■工藤さんちの新一くんとお友達■




なぜ、制服などという服装規則が存在するのだろう。いや、同じ年頃の子どもの集まる空間を規則でもってある程度の縛りを持たせることは仕方ない部分もある、と思いもする。
それに学校という単位で生徒を見分けようとする時、特色あるデザインや校章は便利だ。また子供も中学生にもなれば二次成長期を迎え、異性の眼というものが気になりだすお年頃に入る。気になりだすとどうなるか?他の動物を見れば所詮人間も同じこと。まずは見てくれで異性の気を引くことを考える。結果、各々の家庭の経済格差を見せ付けるような服だの、成長期によって突出してきた部分―主に女子の露出があっては、集団生活を送る上では不都合がおきかねない。よって制服自体に意味がないとは言うつもりはない。
しかし、だ。

「スカートとズボンで男女を区分しようというのは、教師の・・社会の怠慢だと思うんだ」

中学への入学を控えたある日。
友人の「制服が届いたよ」との電話を受け、蘭と共に鈴木さんちのお屋敷に向かえば、帝丹高校の女子用が一揃えと男子用が二揃え。
三人は手元に届いたばかりの制服を早速身に付け、見せ合いっこしていた。

「・・・まぁた、言ってる」
「昔の貴族男子はスカートだったって言うよ〜」

蘭にヤレヤレと呆れられようとも、園に意味不明なフォローを貰おうとも、新一は不本意だった。
鏡に映る向こう側で、スカートをひらひらさせて仏頂面をしている女生徒の姿。

「落ち着かねぇ・・・」
「ずっとズボンばっかりだったもんね、新一」
「意外に綺麗な脚してたねー」
「うっせー!」
「褒めてるんだからさー」
「園・・・脚じゃなくて、よく似合ってるとか、いうべきじゃないのかな」

蘭と園は帝丹中学の学ランを着ている。成長期を期待して、少しばかりサイズ大きめで頼んだんだ、と言っていたが、着てみれば二人の制服は身体にピッタリだった。色々特典があるからと、鈴木財閥が経営する仕立て屋に頼んだところ、成長を見越して大きめに全体を作りながらも、野暮ったく見えないように着る時はジャストサイズに詰めてくれるサービスを提供してくれたとのことらしい。
見事な着こなしだった。初々しさはあまりないけれど、ピシリとしていてカッコ良く出来ている。
勿論、新一の制服もそうだった。ストンと上着が落ちないように、ウエストを詰めてあって、スカートもマネキンが見本で着ていたものよりも、数段綺麗なラインを描いている。
元々成長不良気味な新一の身体は、ラインが綺麗な制服にまろく包まれたことによってガリガリではなく華奢な風体を見せていた。小学校時代にサッカー小僧に混じってボールを蹴っていた脚は、ふくらはぎがよく引き締まっていて、園が感心したように綺麗であったし、そもそも色白の肌に生来の父親譲りの整った顔。特に手入れをしなくても綺麗に引かれた眉にすぅと通った鼻筋、ほの赤く心持ちぷっくりと膨らんだ唇に、なにより人の眼を引く大きな青い瞳。首筋が綺麗に見えてしまう髪形はうなじのところで少し跳ねて、短くて強い癖ッ毛が頭の頂きの近くでピンと立っている。幼さを残し初初しさに包まれたボーイッシュな美少女中学生という様だ。ただ、一番の難点は彼女が浮かべている不機嫌な表情だった。

「ん〜もうちょっとこう・・・」

新一が映り込んだ鏡をじ〜っと見た後、園はゴソゴソと衣裳部屋をあさって、黒い長髪のウィッグと何処からともなくメイク道具を出してきた。

「はい、ちょっとココ、座って!」
「んッだよ」
「い〜から、いいから〜」

バサリとウィッグを軽くかぶせて、鏡の前に座らせた新一に園は目を閉じているように言って、なにやら手先を動かし始めた。
男兄弟の鈴木財閥の中にあって、園は父親よりも母親や叔母との付き合いがとても良い。
園の母親といえば恰幅の良い、まさに富豪ともいえるふくよかな風貌をした女性である。彼女は女性として若く美しく在りたいという心のまま、若者の意見がいるのよ!と言っては園を高級ブティックに連れ込んで服を見立てさせてる事が多く、そんな中で、園は自然と女性モノのファッションやメイクに詳しくなった。
相手にフィットする服飾を見立て、どう彩ればよりその人らしい美しさを引き出せるか。
それは外見を着飾るに留まらない、内面に潜む各々が持つ個性を引き出す事であると、誰に教えられずとも園は感性で読み取っていた。

ざんばら気味な睫毛を整える。ビューラーで引き伸ばせば、生来の持ち分だけで十分な綺麗な形を作れる。シミ一つない肌はそのままで、その代わり、不機嫌に引き結ばれがちな唇を少し口の端を上げたように輪郭を作って、あくまでナチュラルにピンクと淡い紅を合わせた色を乗せていく。
適当にかぶせていたウィッグを位置を変え固定してから、何度かブラシをかける。毛先を軽く内に跳ねるように持って行って、前髪は眉に少しかかる程度で自然に流した。

「さ、いいよ」

目を開けてみてよ、と促されて、新一はパチパチと何度か瞬きをして、鏡の向こうにいる己を見た。

「かっわいい!さっすが、園!」
「伊達に美のトータルショップ経営夢見てるワケじゃないからね〜」
「……」

ボーイッシュな風体から一転、流れる黒髪が大人しいイメージを付与し、深窓の令嬢といった姿になっていた。軽く顔にかかる髪と睫毛の落す陰による静かな印象。だが、唇に与えた色合いが可愛らしく、色白でも不健康そうには見えない。
着ている服が制服ではなく、フリルのついたワンピースなどであったなら、そのまま額縁に入れて飾っておきたいような、お人形めいた愛らしさだった。

「元が良いから、ちょっと弄るだけでも、結構違うでしょ」
「新一、髪伸ばそうよ。似合う。面倒なら毎朝髪梳かしに行ってやるから」
「・・・・・・」
「あはは、やっぱ蘭は世話焼き旦那だねー。ま、放っといて誰かに取られたら困るってことかー」
「な、・・・ちが!だって、新一面倒くさいって、いっつも気がついたら髪ショートにしちゃってたから、だったらって。・・・そういう園こそ、顔赤いじゃないか」
「・・・・・・」
「意外に、ホント可愛いかったからね。仕方ないって。リボンするなら、絶対赤かなー」
「んー、眼が青だし、薄い水色っぽい白でもいいな」
「服がそっちの方がいいな。それで―」
「・・・・・・」
「・・・あ、別にいつもの新一くんが可愛くないわけじゃなくて・・・新一くん?」
「新一?」
「・・・・・・」

鏡の向こうの可愛いコは、いつの間にか俯いていて表情が読めない。
新一を挟んで鏡を覗き込みキャワキャワする幼友達二人は、無言を貫く少女が気になって、恐る恐る座っている彼女の頭部へ視線を下げた。鬘なので、あの特徴的ないつも跳ねている癖っ毛が無いのが不思議だな、などと思ったのも束の間、ギンっと二人を振り仰いだ青い瞳に彼等は息を呑んだ。

(おおお、怒ってる!?)
(やっば)

「貸せ」
「え?」
「何を?新一」
「・・・園のが、背が低いよな。うん。園のでいい」
「え、だから、何を・・・って?!ちょ」
「し、新一―?!」

椅子から立ち上がった美少女は、己をそう変身させた少年の襟元を掴んで脱がせ始めたのだった。






「・・・で、どーしたいのさ、新一くん」
「似合うようにしてみせろよ」
「と、いうと」
「美少女に出来るンなら、男っぽくだってデキるだろ?」

ふんぞり返ってそう命令する新一が着ているのは、先程まで園が着ていた男子用の制服だった。少しばかり―いや、結構丈が余ってるのに舌打ちする彼女は、先程の美少女とは程遠い。いや中身は変わっていないから、こっちこそが、本来の彼女らしさである。

「えー・・・」

「園、で き る ん だ ろ?」

制服を脱がされた上、なんでそんな楽しく無さそうな事を!と不満げにする園に、新一は笑いながら詰め寄る。笑ってはいるが、勿論同時に怒ってもいるのは伝わってきたから、園は仕方なく櫛を手に取った。
彼女の姿で遊んだ分は、彼女の望む姿にしなければ許されないらしい。
背後で、彼女の理不尽を見ていた親友は苦笑いだ。止める気はないようだった。
―だったら、蘭よりカッコよくしちゃうよー?と、そんな事を思った。
園は彼女に触るのは好きだ。いつも好き勝手に跳ねる頭を整える名目で、小学校の頃から何かと(例えば、朝の寝ぐせ直しや、プールの後とか)弄ってきたのだ。彼女の髪のさわり心地の良さもあるが、園はその持ち主である彼女の事も好きだった。かといって、それが恋かどうかはよく判らない。母の秘書を務める父親が、知り合いの人気作家さんのお子さんが同い年だからと引き合わせてくれて以来、女傑である財閥総帥によるフェミニストであれ、という教えを超えて、ついアレコレ手や口を出してしまう程には、大事な大事な友達なのは確かだったが。
母の仕事の関係で縁を持った美形かつ有能な弁護士がある日屋敷に連れて来た同じ年の男の子とはすっかり親友となった―と、思う。そして、その親友が、この女の子を自分と同じかもしかしたらそれ以上に大事に思っているとある日解かってしまってから、一層彼女への気持ちは良く判らなくなった。しかしながら、園が将来経営したいと思うようになった女性の為の店は、母親の影響も勿論ながら、この自分の事に無頓着な彼女のように、誰かが磨かなければ埋もれてしまう美が勿体無いから、と考えた事が一因としてあるから、園にとって工藤新一がそれなりの影響力がある相手なのは間違いなかった。

「一回、メイク綺麗に落すから・・・眼ェ瞑って」
「うん」

素直に、ぎゅっと眼を閉じる。やっぱり可愛いなァと思いながら、無抵抗な相手の顔に乳液を染み込ませたコットンを乗せて油分で油分を落していく。ふと鏡越しに、背後の親友がムゥと眉を顰めているのに気がついて、園は肩を竦めた。恐らく蘭のアレは無意識に違いない。ここで振り返って「気になるなら蘭がやるー?」とか聞いたところで、慌てて首を横に振る事だろう。
端から見る分には、親友がこの少女をどう思っているのか非常に判りやすいのだが、本人はよくわかっていないらしかった。

でも、きっとそういうモノなのだろうな、と園は思う。

きっと、そう。

きっと蘭も、そんな顔をしている彼自身の事も、その気持ちも判然としないのだ。―自分のように。

園にとって、蘭と新一が一緒にいる姿は、見ていて安心する世界だった。
けれど自分がいなくても笑いあう二人を見るのは寂しくもあって。だからといって、新一から俺の親友だからと蘭を取り上げるのも、蘭の眼を盗んで新一と仲良くするのも園が望む事ではない。
―そんな事をおっとりした母に相談した事があるが、答えは「君たちはまだ若い、いや幼いのさ。時間が経たないと分からない事もあるよ」というモノ。おっとりした母を守る少々気性の激しい父からは「本当に大切にしたいものを見極めなさい。どんなに時間がかかっても」と言われた。
もしかしたら、端から見ている蘭には、園の気持ちがわかりやすく映っているのかもしれない、と逆に考えて、聞いてみたいなと思ったことがある。
けれど、それは多分、しない方が良いことなのだ。
両親の言うように、時間をかけて互いを―彼等を大切に見続ければ、いつか本当に望む関係が見えてくるのではないかな、と今は思うようになっている。

「よし。綺麗。・・・んー、男らしく、ってーと」

独りごちながら、眉のラインを整えるべく道具に手を伸ばす。

「ウィッグじゃなくて―」

鏡越しに、マネキンよろしく大人しい少女を見れば、忙しなく手を動かす園を、新一がマジっと見ていた。
興味を引けているのかな、と思うと園は少しばかり得意になる。なにしろこの少女は色んな事を知っているのだ。財閥家の子として結構な教育を受けてきた園でも知らぬ事や言葉を話せる彼女の知識は豊富でいつも驚かされてばかりだから、彼女の気を引けているというのは、非常に心楽しい事だった。

「新一くん、興味あるなら、メイクの基礎教えるよー?女の子なんだし、覚えてる気は」
「ない。でも
お前がやってんのは面白い」

あるんでしょ?と続く言葉を見切って、新一は途中で返事をする。

「そう?」

面白い、といっても笑うわけではなく、実に真剣な顔だ。
空手の道場に通う蘭の試合を見に行った時に、よくよく新一がこんな風に真剣に蘭を見ているのを羨ましく思ったりした事もあったから、その眼が向けられていると思うと面映くなる。嬉しかった。

新一の父親と蘭の両親が同じ学び舎で過ごした仲だとかで、園が蘭と知り合ったときには、彼等は既に仲良く手を繋いで遊んでいた。紹介されたとき「新一」という名前だけで男の子だ!と思い込み、「新一くん」と一日呼んで過ごした後、実は女の子だったとドッキリよろしく知らされたのだが(その意趣返しとして園は今日に至るまで新一をくんづけで呼び続けているわけだが)彼と彼女の仲の良さを知るには一日も必要なかった。
同じ年だというのに「新一くん」に何かと甘く、引っ張りまわされる空手有段者だと言っていた男の子の姿に実は呆れたりもしたのだが、全部読んだ、と言う見た事の無い本の並ぶ本棚を自室に持ち「ホームズごっこ」などという奇抜な遊びを所望して、時に大人顔負けの言葉を吐いて、興味の引かれた事に突き進む姿は、なんとも放っておけるものではなかったのだ。

工藤新一という少女は、少々だらしない母親を持つ少年の世話焼き魂を打っただけでなく、お金では決して得られない面白い存在を求めていた少年の好奇心にも火をつけるような子どもだった。



「完成〜」

眉を引いて少しばかりキリリとさせ、色白すぎる肌に、そうとわからないよう液体系黄系のファンデを少し乗せて実に健康的に。長い睫毛を切るのは憚られたので、眼の大きさを落すように下向きにしてそのまま。髪の毛は地毛を流行のイケメン風に整えて、軽く整髪料で撫で付けてやった。
卸したての男子用制服とあいまって、男女の性差がまだ曖昧な―けれども肌色効果でちゃんと男の子に見えなくも無い、可愛い少年が、姿見の前に現れる。

「ど?」
「おお!」

先程の深窓令嬢風にさせられた時とは違って、感嘆の声が新一の口から上がった。

「うわー・・・カッコ可愛い・・・って感じ?」
「カッコイイだけでいーだろ!」
「可愛いのは消せなかったねー。ゴメンね、力量不足で!」
「でも、まぁ・・・いいな、これ」
「いいなって、新一・・・?何か企んでない?」
「俺も制服着よっと。並んで写真撮ろうよ!」
「え、園。制服あるのか?」
「洗い替え用にねー。あんたらは、一着で三年間間に合わせるもんだって言ってたけどさ」
「?そういうもんだろー。夏服はともかく」
「成長期ってモン無視なわけね、新一くんは」
「洗い替えは関係ないだろ・・・」
「・・・別にあるならギャーギャー脱がされてないで、そう言えば良かったんじゃ?」
「妬くな、蘭。女の子に脱がされるって、ホラ、ある意味ロマンじゃん」

ジットリした眼を向ける少年にフフンと笑い返す少年を尻目に、新一は口元に手を遣り、フム・・・となにやら思案顔で鏡を見つめていた。






それから彼等と彼女が中学校の入学式を終え、暫くしての事だ。
とある事件現場にやってきた帝丹中学の男子制服をきた少年が、颯爽と事件を解決していったのは。
少女めいた可愛らしい顔なのに、唇から紡がれる言葉は少年の声音のそれで、容赦なく現場の可笑しな点を突き、居合わせた人間の矛盾した発言を暴いて、犯人を見つけ出した。
君は一体・・・?と現場を仕切っていた体躯の良い帽子を被った女性警部が呟くように聞けば、【彼】は少し笑ってこう答えた。

「僕ですか?・・・工藤新一、探偵ですよ」









*** *** ***

男装して事件現場にいくようになる新一。
多分中ニ病。(中一でも中ニ病!本当に恐ろしい中ニ病!/伊○院光ラジオ(深馬鹿)ネタ)
痴漢避けの為に普段も段々男装が増えてく頃。



園⇒鈴木財閥家息子。園琥(そのこ)と書いて音を残すか、園男(そのお)でそのまま転換にするか悩んだ記憶があるけど別にどうでもいいか。
母・太目の財閥総帥女性おっとり/父・その秘書。割と気性が挑戦的で荒い(笑。/兄・おっとりめで優しい人。/叔母・相談役。うん、相談役。

蘭⇒毛利家一人息子。世話焼きな空手少年。
父・美形有能弁護士/母・酒癖のわるい自由奔放な女探偵。旦那に浮気を疑われた事を怒って別居してる・・・的な!

某警部⇒幸せ太りだけど、有能な警部だよ!旦那様(みどりくん)は元不良(笑。
部下にてらイケメンな佐藤くんとかドジっこの高木さんとかいるような気がする。


何か、ファイルにあったから適当に加筆して置いておきます。
思ったより分量あって驚いた。
コナン期と女子高期もあったけど未完。

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