探偵三人+1
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探偵三人+1
怪盗のショウ終了後
探偵たちの反省会
とかなんかそんな感じ
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とりあえず、なんで探偵が三人も揃っていて怪盗に出し抜かれたか。

原因というか敗因を明らかにしてみようじゃないか、と言い合ったところで、各々が自尊心高き生意気盛りな高校生探偵なれば、己の責任とは思いたくない、のが本当の所で。だからと言って責任を押し付けあったり擦り付けあって喧嘩をするのも馬鹿馬鹿しいわけで。

最終的に行き着いた結論が、ガキは引っ込んでろと探偵の推理と行動の邪魔をした警察と、悔しくも裏をかききった怪盗へのいちゃもんであったのは仕方ない事だった。

「だいったい、あの警部キッド専任ってなんやねん?仮にも警察っちゅう巨大組織の一員が現場を完全独断で取り仕切りっちゅうのはイカンやろ」
「それが許されているくらい、あの警部殿のKIDへの執念は周知されているという事でしょう」

怪盗の現場に行ったんは偶々やと言う参加者にさえ、あの中森警部の姿は異様に映るものらしいと白馬は苦笑気味だ。
今回の現場には世間を騒乱させる怪盗を二課のみには任せてはおけないと、かの警部の上役も居たというのに。彼等すら、あの警部の言い分に敬意というか触らぬ神に何とやら、と一歩下がる様子であっては致し方ない感想だろう。

「執念で捕まえられるなら、時効負けする事件なんかあるかいな」
「取り仕切って、アイツを包囲するために末端まで動かせていれば評価するが、他の警官が警部の後追いじゃ、人員が要るだけ無駄。つーか、むしろアイツが紛れ込む隙を作ってるってコトを考えりゃ有害だな」
「おや…」

辛辣な評価を下すもう一人の探偵に、白馬は苦笑ではなく意外だという表情をした。先ほど共に怪盗を追いかけた現場では、むしろ彼が率先してあの警部と親しげに言葉を交わして様々な助言をし―その幾つかは向こうの捜査にも反映されていたのに。

「工藤くんは、ああいった執念…いや犯罪者逮捕に情熱的なタイプの警官に好意的かと思ってましたが」
「こーいてきぃ?なんや観察眼足りへんぞ、白馬」

工藤めっちゃ現場で苛々しとったやん、と服部は呆れた声を上げた。
現場では怪盗ばかりを追っていた白馬だし、そう工藤と深く長い付き合いがあるわけでもないから、分からなくても仕方ありませんよと肩を竦めた。

「そうでしたか?」
「嫌いじゃねーよ、別に?扱い方のツボが分かり易いし、実際ある程度は聞く耳も持ってくれてたし」

ただなぁ、…と遠い目をする工藤は思い返しでもしているのか。
白馬は興味深く、続きを待つ。

「どこがお気に召しませんか」
「怪盗KIDを前にした時の対処が最悪だ」

冷静に間合いを詰めるでなく、罠を使うわけでもなく、『かかれー!』だもんなぁ、と溜息。

「しかし、うかうかしていたら飛んで逃げますでしょう、彼は」
「盲目的に飛び掛ってドロンされてりゃ結果は同じ」
「あー、盲目的、やな。確かに」

本日とあるビルの屋上で見た光景が甦ってきて服部も乾いた笑いを浮かべた。
『今日こそ逃げられると思うなよ!』『待機中のヘリに貴様の仲間はいない!』『飛ぼうにもヘリがこう近くては翼は広げられるまい?!』『このビルも周辺道路も完全に封鎖している!』『よし、総員、かかれー!』

「アレやな。いちいち必殺技を叫んでから、飛び掛ってくヒーローみたいなおっちゃんやったもんな」

警察の完全なる包囲網を自慢げに披露するのはつまるところ手の内を明かしているのと同じ事。

お陰で飛び掛っていった警察官の影で怪盗の姿が見えなくなり、すわ変装して警官に紛れ込んだのかと『先ほど誰かが階段のほうへ!』という叫びに釣られて警部以下は屋上から退場。これは叫んだ奴が怪しいと服部はドアの影のほうからした声の方へ走り、角度的に警官の影で見えにくかった方向が怪しいのではと白馬は屋上のフェンス外の方へ走った。
ひたすら動かずに、ただ臨場で全ての動きを見逃すまいと一歩離れていた工藤は、ちょうど怪盗の真上にいたヘリが気になっていて仕方なかったものの『待機中のヘリに―』との言に、一瞬上空への警戒を緩めて、それぞれの動きに首をめぐらせた。
その時だ。『じゃーな、探偵くんたち!』とあの人をムカつかせる場に不似合いな楽しそうな声がして、―三人の上空を滑り上がる白い姿。
やはりそこだったか、と工藤は地上で夜空を見上げて舌打ちするしかなかったのだ。

俺だったらヒーローじゃなくて良いから何も言わずに麻酔銃撃つ、それかあの場ならヘリの連携を即座に確認して…不審ヘリ発見が早ければ、絶対にアレは落せたんだ、とブツブツ呟いた。不満げな様子に服部はまぁまぁと取り成そうとする。

「今度ヒーローに会(お)うたら、必殺技叫ぶんは情報漏えいでっせ、いうてやり」
「ヒーローなぁ…」

はん、と工藤は面白く無さそうに復唱し、ふと思いついたことをぽろりと洩らした。

「最終的にアイツを取り逃がす間合いを作ってるのがヒーローだってんなら、怪盗はアレか?ヒロインか?」
「…せやな」
「ああ…では実際に彼を追い詰める僕らが悪役になるわけですね」


「……」
「……」
「……」


「…きっしょいわ」
「同感だ。言ってみて寒くなった」
「全くです」


もういいから、酒でも飲もうぜ。いや違った、未成年の酒は違法だからな、グレープ色のジュースか麦で出来たジュースどっちがいい?琥珀色のは切らしてるんだ。ポンは無いんかー、アテは?なんかあるんか?無いなら買出しいくでー!おや…それならばぁやにワインセラーいえ葡萄エキスの保管庫からいくつか持ってきてもらいましょう。チリ産とドイツ産ではどちらが?チリ!久しぶりに飲みたい。ってかだったらアイツも呼ぶかな。アイツ?ああ、彼ですか。誰や?工藤くん言うところのヒロインですよ。はぁ…今日は仲間外れでええやろ、追いかけた後なんやし。でも後でなんで呼んでくれねーんだ、とかうるせぇんだ、アイツ。…おや窓に鳩が見えますね。…じゃ、放っておく。白い鳩ってよーぅ目立つわ。





ピンポーン

テーブルの上で酒盛りの準備が始まって暫くすると、探偵たちの推理通りに工藤家のインターフォンが鳴った。

「くーどーうーくーん」




「ああ、ヒロインがいらっしゃったようですね」

「よぅ来たもんや、ヒロイン」

「ここは悪の巣窟だぜ、ヒロイン」





「…え、何もう出来上がってんの?」




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色々アバウト。
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