A防犯について in...対・怪盗


帰宅後つい家の鍵をかけなかったのは、すぐにまた出掛けようと思っていたからだった。まさか着替えの途中で呼び鈴が鳴って、ガチャリとドアを開けられるとは思っていなかったのだ。
しかも、家主の返事も確認せずに誰だコンニャロ知り合いならともかく勧誘押し売りの類なら通報してやるぜ、と脱ぎかけのシャツを羽織り直しながら慌てて玄関に戻ってみれば、あろうことか勧誘押し売りよりタチの悪い即通報対象である白い怪盗の姿。

そして、探偵は、なに堂々と現れてやがるテメェという暇もなく、直しかけのシャツを肌蹴られてその場で押し倒されたのだった。
−のは、まだ良かった。
何だかんだで、二人はそんな間柄だったりする。そもそも探偵がすぐに出掛けようとした理由も彼にあることだし。
ただ、行為の最中に更なる来訪者によって玄関の扉が開けられたのは、どうにも具合が悪かった。
おそらく、彼らもまた今夜の怪盗によるショウについて探偵同士の話をしにきたのだろうが、まさかまさか、彼らの獲物が東の名探偵と呼ばれる友人宅にいるなどとは思いもしなかったはずだ。しかもなんかとんでもない状態で。

仕事前でテンション上がって何か落ちつかないし、予告状に気合い入れすぎたせーで妙に観客増えてるらしいから俺達の特別な時間に二人きりになれるかわかんねーし、今のうちに少しちょうだい?なんて睦言に流された己が恨めしい。時間あまりないしね、とか言う理由でロクに服も脱がず色々濃厚に事が進んで扉一枚向こうの気配に気付いた時には手遅れだった。いやそれよりも、とんでもない状態を他人に見られたにも関わらず、いけしゃあしゃあとしていた押し倒している人物がちょっといやかなり憎い、と彼自身の迂闊さを棚に上げて探偵が思ったのは致し方ない事だった。


「てめ、抜きもしねーって、何なんだよ!?」
「あー、白馬が一緒で助かった」
「何がだ!この変態、離れろ!抜け!」
「アイツ紳士ぶってっから、西のも連れて退場してくれたじゃん。倒れた西の探偵の横であんあん言いたかったワケ?」
「言うか!―!ぁ、あっ、ちょ、おまえ」
「出ろって、無理言うよなー。締めてたの、名探偵だったのに」
「!?、ちが、だって」
「ビックリして?でもさ、アレは抜けねーって。すっげきゅうきゅうしてたし…今も、なに?思い出した?見られると感じる?」
「違、ぅ…あ、んん、鍵掛けろ」
「だから、無理だって。大体、名探偵がさ、不用心な事してるから、悪いんじゃん?いっかいイこ、な」





一体、この後あの探偵仲間というかライバルでもある彼らに、白い怪盗との親密さについてどう言い繕えばいいのか、いや繕うってどうやったら可能なのか、いっそ何も見なかったことにしてもらえるよう、ちょっと彼らの頭に軽く数分の記憶が飛ぶような衝撃を与えさせてもらったりなんかしてみるか、つうかもう怪盗の予告も嘘でしたとか無かった事にだってほらApril foolなんだから−と目まぐるしく算段していた思考は身体を穿つ熱と揺さぶりに散り散りになり、辛うじて脳裏に残ったことはといえば、

−おうちの鍵はちゃんと閉めましょう

という、実に単純にして重要な防犯の心得なのだった。






fin...12.04.01


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