「今日は出てくるのかなー」

鍋の中では水が沸騰寸前だった。
時刻は頃合。早めに出てきたら、昨日の予告どおりに飯の支度でもしてもらおうと思っていたが、どうやら子供は律儀に起床時刻を守る…のかもしれない。不貞寝して出てこない可能性もあるが。いや、まだそうなるには早いだろう。

完全にボコボコといい出した鍋の中へ塩とお酢を投入。
それから火を弱めて、浮き上がる空気を抑えつつ、小さめのオタマで鍋内を右回りに回して軽い流れを作る。
コンコンと蛇口の首で卵の殻に皹を入れる。
いまだ気泡の浮き上がる水の中へと落とした。
揺れ動く白身が鍋底に付かないように、少しお湯を掻き混ぜながら待つ。
白身が固まって、卵全体が浮いてきたところで掬い上げた。

「まぁ、こんなもんで」

キッチンペーパーを乗せた皿の上に二つ転がして、少し水気を切るか、と考えている所に、ピー・ピー・ピー の音。

「…いいタイミングだよなぁ。見えてんのか?」

そんなワケはないと知りながら、思わず言ってしまった。
昨日とは違い、忍び足ではない、ドカドカという足音。
―コレは、怒っているのかもしれねーなぁ…と、ノンビリ思った。

「ってめェッ!!一服盛りやがったな!?」

「あったりー!!」

よしよし、今日の分の正解は今言い終えた。



2010/12/05 00:51 !
第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -