「今日は出てくるのかなー」 鍋の中では水が沸騰寸前だった。 時刻は頃合。早めに出てきたら、昨日の予告どおりに飯の支度でもしてもらおうと思っていたが、どうやら子供は律儀に起床時刻を守る…のかもしれない。不貞寝して出てこない可能性もあるが。いや、まだそうなるには早いだろう。 完全にボコボコといい出した鍋の中へ塩とお酢を投入。 それから火を弱めて、浮き上がる空気を抑えつつ、小さめのオタマで鍋内を右回りに回して軽い流れを作る。 コンコンと蛇口の首で卵の殻に皹を入れる。 いまだ気泡の浮き上がる水の中へと落とした。 揺れ動く白身が鍋底に付かないように、少しお湯を掻き混ぜながら待つ。 白身が固まって、卵全体が浮いてきたところで掬い上げた。 「まぁ、こんなもんで」 キッチンペーパーを乗せた皿の上に二つ転がして、少し水気を切るか、と考えている所に、ピー・ピー・ピー の音。 「…いいタイミングだよなぁ。見えてんのか?」 そんなワケはないと知りながら、思わず言ってしまった。 昨日とは違い、忍び足ではない、ドカドカという足音。 ―コレは、怒っているのかもしれねーなぁ…と、ノンビリ思った。 「ってめェッ!!一服盛りやがったな!?」 「あったりー!!」 よしよし、今日の分の正解は今言い終えた。 |