「では、飛行場までご案内いたします」

そう言って、以前ベル・ツリーT世号に乗船した際に、コナンが目にしたことのある作業服を着た男が、部屋の―この空間から出る扉を示した。

「…まさか相談役が噛んでるのか?」
「工藤優作氏が、鈴木財閥所有物から一機チャーターしたそうですよ。ちょっとした空の客船を」

とはいえ、乗るのはあの飛行船ではありませんけどね。と、作業員がにこやかに告げれば、じゃ、その格好は何なんだよ、とコナンから呆れた声が出る。

「作業員は日本臨海の離れ小島あたりにて落下予定なんですよ。なので、下手にウェイターやメイドや探偵になるワケにもいきませんので」
「…それって俺もか」
「もちろん」

とんでもねー帰国方法だな、全く…とでも言うかのような遠い眼差しをした探偵だが、まぁ仕方ないとは納得しているようだ。
一緒に滑空することについては異存はないらしいのが、怪盗としては少しばかり不思議だった。

「今度は着地でヘマるなよな」
「地上着陸だったら、飛ばされたりしませんよ」

実に数日振りに靴を履いたコナンは、トントンと爪先で床を叩いた。

「じゃ、いくか。…そういや鳩は?」
「ん?大丈夫ですよ。あの子達なら」

検疫とか一体どうするのか気になった探偵だが、あえてそれは口にせず、代わりに一つの提案を怪盗に示した。

「あとさ、オメー、向こう着いたらしばらく俺のトコいろよ」
「…どうしてです?怪盗が―、メイドか医大生が必要ですか」
「『工藤新一』が必要になったら、俺が困るからだな」
「コチラが困るのは丸っと無視ですよね、それ」

オイコラ、と和やかな作業員の顔つきが引きつるのを承知で、コナンはニヤリと笑う。

「勿論礼はするぜ?もっとも、ここまでの礼だと―そうだな…『尾頭付きの鯛』あたりを江古田の『黒羽』さんちに―」「ギャァアアアアアアッ!!」


「……マジか、そこまでか、怪盗キッド」
「黙れ!言うな!金輪際その系統の悪魔の名前を俺に聞かせるな!」

「……ああ、わかった」
「笑ってンじゃねぇええええ!違うぞ、『高木刑事』とこの作業員の苦手な奴がアレってだけだ!」

「…俺さ、高木刑事と刺身定食食ったことあるぜ?」
「うわあぁぁあ、悪魔の料理ー!!」




扉の向こうへ出ても、しばらく騒々しさは続くようだった。





  **   終   **



















<後書き的懺悔的語り>

お付き合い下さりまして、ありがとうございました!
これにて、愛も恋も友情すら生まれて無さそうな怪盗と探偵の共同生活終了です。

二人がダラダラ何となく一緒にいる空間を書きたいだけの話。
オチと時間系列が微妙なのはいつもの事。
驚きのフワフワ感で終了するのは…アレだ、当サイトのカラーとか言っておくか!

以下自白。
*オチは30本目あたりから考え始めた。
*本気でぼんやり設定しかなかった。
*実はオチなくても良いかと思ってた。

…こちらまでお目通し頂きまして、誠にありがとうございます!
あと、この部分を追記に入れようとしたら、何か表示されなくて、どうやら追記の入らないデザインだったのか…と初めて気がつきました。(お前。



2011/03/08 00:03 !
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -