『彼』が目覚めて三日が経過。 大きな異変は見られない。 真っ直ぐな、真実を求める眼差しの鋭さは、かつて対峙した時のまま。 現状の不安定さを承知して、それでも自身の手による解決を諦めない潔さ。けれども使えるものは何でも使おうとするしたたかさ。 夢のない、リアリスト。 『彼』は、俺の知る名探偵であり、江戸川コナンである。 と、同時に。 『彼』は、俺の識る名探偵であり、工藤新一だ。いや、その認識が正確であるかどうかは、実際の彼と対面をしたことがない俺には言い切れるものではない。けれども、少なくとも、俺がコナンという子供を見て、触れて、―彼を通し、あらゆる資料を通して俺自身が再現していた工藤新一という人物と酷似しているのは間違いない。 一度でも工藤新一と会っていたら、彼が工藤であると、コナンと同一であると、そう言い切っただろう。いや、現時点でも言い切れるが、それはあくまでも俺が俺自身に対してだけだ。 体が伸び縮みするなど俄かに信じがたい話でも、あらゆる事象と証拠をつき合わせて、しかも自白なんてモノまで揃ってその上否定が不可能ならば、肯定するなりそうであることを前提とするしかない。 「無線傍受した時は、トンデモ話にしか思えなかったけどな」 最初は自白。盗聴ともいうが。とかく本人が『工藤新一』を肯定していた。 まさかと思うより前に、直ぐに江戸川コナンの小学生らしからぬ思考(推理)に基づく行動に言動から、中身が只者ではない直感したワケがソレだったのかと納得したものだ。 「江戸川コナンが工藤新一ってのは、…やっぱ面白れぇなー」 あんなナリの、手先の不器用な、まんま見た目そのものの一面を持つ小僧の中身が、実は己と歳の変らない探偵野郎なのだ。 「あー、面白れっ」 もう一度言ってみた。 少しでも、この生活を楽しいものだと捉えるために。 「怪盗と探偵が。小学生と高校生が。野郎と野郎が一つ屋根の下〜」 あれ。あんまり楽しくねーぞ、それ。 ツッコミは脳内だけに留めた。 |