一旦ダイニングテーブル上の自作創作料理から逃亡していた名探偵も戻ってきて、二人で辛うじて黄色っぽく見えないこともない焦げた炒り卵の塊に紛れ込んでいた殻や、ねちょりとした茶色のご飯の塊の中に紛れ込んでいた殻を可能な限り取り除いて。もういっそ、これはあえて塊にして歯ごたえある焼きオニギリにでもしてしまえばいいんじゃないか?と提案してみて創作者に承認されて。作り手交代で俺が再生作業に当たった結果、香ばしい醤油の匂いとかで何とか誤魔化した感じの本日二度目となる昼飯の登場とあいなった。 ガリガリ感とカリカリ感。 交互に口内で謎のハーモニー。 …歯が丈夫なので、気にしないことにする。 歯が丈夫で良かった! 「さすが、月下の奇術師だな」 「ンな事いま言われてもな」 「ああ?じゃあ、キッチンの手品師とでも呼んでやるぜ」 「全く嬉しくねーよ」 口は悪いが、それなりに申し訳なさそうな様子での殻の取り除き作業を経ての言葉であれば、彼なりの態度で表わされる感謝というか、労いの言葉だという事がわかった。 素直に、ごめんとありがとうを言えばまだ可愛げがあるものを…と、考えてみて瞬間そんな名探偵は無し!無しで!と脳内で打ち消す。 駄目だ。 『あれれ〜?』ぐらい気持ち悪い。 「だったらオメーは台所の迷(『め・い』)探偵だな」 「あからさまに迷うほうを付けるな」 「字は確かにその迷うだが、正確には『迷惑』の迷な」 「わかった。俺は心から反省して、料理に手を染めるなんて真似は二度としねーよ」 「犯罪みたいに言うことか。…『もう!そんな事言わないで、これからもお手伝いしてね、コナンくん!大丈夫よー、ちょっとずつ上手になるから!』」 「蘭の声真似すんじゃねー!」 ギリっと睨まれても口端上方に焦げた飯粒付では迫力半減だし。 俺は、そのオベントがいつまで彼の顔に携帯されるのか、観察してみる事にした。 結果―。 午後、戻ってきた鳩の様子見についてきた名探偵。 一羽の鳩がそのほっぺたを突いて、乾いたご飯粒を食べ去ったのだった。 |