ツマミを回して火が点いたのを確認する。 フライパンを、その上に乗せて温め始める。 熱しすぎてしまう位で良い。 低温だと、こびりつく。 油を引いてフライパンを回す。 煙が立ち上ったところで、一旦濡れた布巾の上に置いた。 じ・じゅわゎ… 音と煙が大きく上がる。 直ぐにまた、今度は中火に落とした火の上に戻した。 ガステーブルは流し台の隣だ。 流し台の水道の蛇口の首で、こんこん。 皹の入った部分に指先を充てて、少し力を加えると、とろりと白身が溢れた。 ** ** ** ピー ピー ピー 警告音。扉の開いた合図。 予想よりも早い。 手元を見る。 二つ落ちている目玉はまだ黄身の周りが透明だ。 予想よりも遅い。 「ま、蓋すりゃいーか」 サニーサイド? それはまたの機会に。 そっとフライパンにガラス製の蓋を落とした。 ** ** ** 「おはようございます、名探偵!」 「……」 「おはようございます?名探偵」 「…あのよ、オメー」 「おはようは?」 「…おはよう、怪盗キッド?」 「そうそう、挨拶大事ね、うん」 これからしばらくちょこちょこと顔を合わせることになるのだから、快適な関係作りは一応必要だ。表面上だけでも。 「で、さ」 「朝ごはんは目玉焼きと海苔と味噌汁とご飯です」 「…和食、だな」 「あれ?不満だったか。まぁ明日はさ、材料適当に冷蔵庫に入れておくから、名探偵が作ればいいと思う」 「いや、明日とか作るとかよりもまず」 「食べようか」 「そうでなく」 「冷めると温めなおすとか面倒だし」 「なぁ、ここはドコだ」 「オメーは名探偵で、俺はキッドで。ここは二人が居る場所さ」 「場所って」 「ダイニング・キッチン」 テーブルの上には二人分の和風な食卓。 その一つに名探偵を促せば、渋々といった様子で席に着く。 よろしい。 子供用に椅子の上に更に座椅子かなにか必要になるかと思ったが、大丈夫そうだった。 飯の分量は適当に。 子供用茶碗は無かったから、適当なお椀に適当に。 しかし、彼は顔を顰めた。 「多いな…」 「そうか?」 「身体はコドモなんだよ」 「そうだなぁ…」 手をつけてしまえば無駄になる分が出るらしい。 食糧を無駄にするのは良くないので、さっと彼のお椀から炊飯器に半分くらい戻す。少ないくらいにして、あとは勝手によそえばいいのだ。というか、炊飯器ごとテーブルに置いてやりゃ良かったか。 「いただきます」 「…いただきます」 両手を合わせてそういえば、彼も言葉を合わせた。 |