お手伝い。お手伝い。
俺としては作業分担をして欲しいのである。
それが、相手の能力不足をこっちがサポートするのでは、一体どっちがお手伝いなのか、という話である。

いや、今朝の事は別にいいのだ。
朝は元々俺がやろうと思ってたし。

しかし、これから俺が目を離した隙に一体何が行われるのかと思うと、おちおち他の作業も出来やしねーのだ。
もちろん向こうが何某かを企んで毒を盛るとか、そういう悪意めいた行為に走る危険性もある。だがその点について、俺はあまり心配をしていない。一応世間的に名探偵だの救世主だの言われている人間が、いくら相手が怪盗だからといって完全に息を止める真似はしないだろうと踏んでいるのである。もっともギリギリのラインで生死の境に追い遣られる可能性は多分にある。まぁ、その場合は、大抵の毒物への耐性、生きることへの並々ならぬ執着や、探偵ごときに弱みを見せる気なんざ無ェという怪盗としてのプライドで、乗り切ってみせる気ではいる。
しかしつまり、そういうのはあくまでも。
相手が―名探偵が、罠を張って色々と仕掛けてきた場合への対処であって!
名探偵自身も知らぬうちに、怪盗を追い詰めていました、とかそういう間抜けな事態は、とかく辞めて貰いたいのである。
腹痛とか、内臓攻撃で外部医療が必要になるとかいう事態は、流石に卑怯すぎるだろうが、この野郎。

「いただきます」

といいながら、暫しの間、そんな色々な事を考えていた。
思考に逃避していたとも言う。



「おい、さっさと食えよ」
「あ、ああ」

声を掛けられ、意を決して。
俺は一口だけ、用心深く口に入れた。
見た目はアレだが、意外にウマイかもしれないし。

「……」
「…どうだ?」

「……うーん、と。これ、どうした?」
「レシピにあった物を、レシピ通りの分量つぅか割合?で、レシピ通りの手順で?」
「チャーハンにあるまじき食感がするんですが」

ねちょねちょ ねちょねちょ

ガリガリ ガリガリ

じゃりじゃり じゃりじゃり

うん…、なるほどなるほど。
ある意味意外な料理ではある。

「作り慣れない奴が、パラパラに出来ないのはわかってるぜ?」
「ご理解どうも」
「野菜が生焼けだな。野菜厚く切りすぎ。薄切りで細かくって書いただろ」
「細かいだろーが」
「火が通らないんじゃ意味ないだろ。特にニンジン」
「あー、だな。確かに」
「あとさ」
「ああん?」

名探偵も、とりあえず一口二口と食べている。
……食べれるのか。
生野菜好きなのか、もしかして。
だったら、その点は好みの相違だな。

しかしだ。

「卵の殻の味付けっつーか食感付けって新しいな!ワザと?なぁ、俺のんだけにワザと入れてんのかコレ!?」
「…しょうがねーな。ホラ、交換っつーか、やるよ全部!」
「平等に入ってんのかよ!」
「ったりめーだろー?同じフライパンで作ってんだから」

ホラ食ってみろよ!と言われて、念のために口に入れて確認。
確かに同じものだった。
がっくりと肩を落とした俺を見た後、じゃ、ごっそーさん!と言って椅子から降りる名探偵。

逃げるな、コラ。
どーすんだ、コレ。

言いたかったが、口の中にはまだメシらしきモノが入っていたので見送るだけだった。




「みずみず、っと」

何とか呑み下して、水も飲んでホッと一息。
おそらく、米量と調味料との整合性を取るために追加に追加でもしたのだろう、こんもりと皿に盛られたチャーハンらしき料理。二人分?いやいやもっと。

「勿体ねー」

諦めの境地でもう一口。

ねちょじゃりねちょがりねりょじゃりがりじゃり

舌に、指定した調味料以外の味はしないし、野菜だって生でもまぁ残念ではあるが平気だ。殻さえなければまずまずの出来だったろう。味…は、自分で醤油でも塩でも足すなりすればいいし。

「カルシウム摂取?」

慰めにならない言葉を呟いてみた。




2010/12/16 12:28 !
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