どういう位置付けに置けばいいのか悩む相手、というのがいる。 顔は似ている(らしい)が、血の繋がりはない(らしい)。 声も似ているが、果たして相手の地声であるかは不明である。 いや、そんな外見的相似性はともかく。 外観的関係性を示せば、俺は探偵で相手は怪盗である。 探偵が謎を解き、犯罪を防ごうと動き、時に犯罪者を探し出そうとするならば、怪盗は謎を作り出し、犯罪を起こし、犯罪者(彼)を追う者から逃げ出そうとする。 そういう相手だ。 とはいえ、怪盗キッドに関して言えば、追いつ追われる関係だけでもない。 少なくとも彼は意図的に人を傷つけるような犯罪をする者ではなく、時に人を助けようとし、救えなかった命に悔しさを覚えるような、犯罪者というには心根の優しい人間である。 江戸川コナンの知る限りは、だが。 ゆえに、台所と思しき部屋で彼の姿を見た瞬間にいくつかの可能性が消えた。 怪盗キッドが身代金目的に?―無い。 怪盗キッドが子供の人身売買を?―無い。 もっともそれらの可能性は始めから低かった。 寝かされていた部屋から脱出するための開錠鍵は、間違いなく『俺』の為に誂たトラップだった。仕掛けることが出来るのは、『俺』が何者かを正確に知っている人間。 組織の残党か、個人的恨みで持って俺を調べ上げでもした人間か。 その辺りが出てくると思っていたから、一目で怪盗キッドとわかるいつもの姿+ブルーのエプロンを着用し、更に元気よく朝の挨拶を掛けられて、色々と脱力感を味わった。 脱力しながらも、怪盗が探偵を捕える理由とはなにかを考える。 怪盗が探偵を個人的に捕まえる必要は―無さそうだ。 まさか依頼があるわけでもないだろう。 怪盗は何某かの探し物をしている(いくつかの怪盗の現れる現場で「俺の欲しい物じゃなかった」とか言って獲物を返却してくる事からそれは簡単に想像が付く)とはいえ、探偵に頼むくらいならワザワザ怪盗なんてものをするワケがない。 ― 依頼・探し物 では。怪盗が、怪盗の意思とは別の、誰かの依頼でココに居る可能性か。 しかし、この自由にフラフラ空を飛ぶのが好きそうな奴が、誰かに頼まれたからと言って唯々諾々と、探偵の世話などするものだろうか。 怪盗を縛るもの―他者を使うときによく用いられるのは脅迫もしくは仕事に見合う報酬。 怪盗の様子に、脅されている者がもつ切迫感や悲壮感は皆無だった。 すくなくとも、俺の―探偵としての嗅覚にそういった焦りだの、訴えかけるものはない。 では、報酬か。 ― 依頼・報酬・探し物 そこまで考えれば、最も簡単な仮説が成り立った。 しかしながら、仮説は仮説にすぎず、相手は奇術師だ。 果たして確認は可能なのか。 とりあえず、命の危険は感じない。 |