変な顔しないで、笑顔を見せて



抱き締められている。
そう気付くまでにかなりの時間を要した。

なんで

疑問が俺の胸の中をぐるぐるとまわる。

なんで、旦那は俺を抱き締めてるのか。
なんで、俺のことを心配するのか。

あやすように撫でられた背中。
いつもなら子供扱いをするなと怒るところだが、今は何故かそれに安堵している自分がいた。
大丈夫。そう耳元で言われ、涙が出そうになる。


「離してくだせェ」


一向に解放される気配がなく、俺がそう言うと、


「やだね。だって離したらまた死のうとするでしょ?」


と、更に強く抱き締められた。

分からない。
分からない分からない分からない。
どうして、

「なんで俺なんかを構うんですかィ」

耐えきれず溢れたその言葉に、旦那は目を見開いた。
紅い瞳が驚きの色に染まる。
でも、それもほんの少しで、その瞳は直ぐに優しさを含ませた色に変わった。
そして、


「そんなの」


と、口を開いたとき、


「総悟?」


酷く聞きなれた声に遮られた。
その声に俺はビクリと肩を震わせる。


「土方くん」

「何やってんだ?お前ら」


心なしか、土方さんの声が鋭い。
・・・当たり前か。
自分の恋人が違うやつを抱き締めているのだから。


「離しなせェ」


今度こそその腕から逃れるべく、俺は強く言う。
その声色に、今度は旦那の肩が揺れた。
そして、腕の力が弱まる。
やっと抜け出すことができた俺は、二人に冷たい視線をくれてやる。


「じゃ、俺はこれで。死に損ないはさっさと仕事にかえりまさァ」


そう言いながら、身を翻した。
後ろで旦那が制止の声をあげるが、それを聞き入れるわけもなく進む。
やがてその声が聞こえなくなり、俺は静かに歯をくいしばった。


あぁ、なんでいつもこうなるのだろうか。










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