あんたが口にしてくれないなら、いらない



雨が降ってきた。

晴れていた時に屯所を出た俺が傘を持っているはずもなく、近くのコンビニでビニール傘を買うと、盛大に溜め息をついた。
例によってサボろうとしていた俺は、いつもの駄菓子屋へと向かっていたところだった。
「どうしやしょうねィ・・・」
このまま屯所へ帰れば土方コノヤローにいつもの如く怒鳴り散らされるだけだ。
かといって雨が降っちゃあベンチが使えるわけもないので駄菓子屋にも用はない。
暫く考え込んでいた俺の脳裏に、ふと見慣れた顔が浮かんだ。
ふわふわの綺麗な銀髪に、死んだ魚の目と言われながらも引き込まれるような瞳、真っ直ぐ前を向くその表情。
俺を魅了させるには十分過ぎるくらいだった。

そうだ、旦那に甘味を持って行こう。

そう考えた俺は、駄菓子屋へと向けていた足を、ここいらで評判のケーキ屋へと向きを変えた。
旦那に早く会いたい。
そんな気持ちが俺を急かす。
ケーキ屋についた俺は、店で一番人気のケーキを買うとすぐに万事屋へと足を運んだ。
そして、がっくりと肩を落とすことになる。



「え・・・いないんですかィ?」
「すいません。銀さんさっきふらっと出掛けちゃったんですよ・・・」
「わかりやした・・・。じゃあ探してきやす」


まさかいないなんて・・・。
予想外だった。
こんな雨の日にはソファで横になってジャンプ読んでいると思ったんですけどねィ・・・。
探すといってもどこを探していいか分からない俺は途方にくれた。
しばらく探し、今日はもう諦めようかと思ったとき、聞きなれた声が聞こえた。
「沖田くん・・・?」
その声に俺は、勢いよく振り返った。
「旦那・・・!」
会えてよかったと安心したのも束の間、今度は旦那の格好に驚く。
旦那はびしょ濡れになったまま突っ立っていたのだ。
「そんな格好してると、風邪引きやすぜ・・・?」
改めて旦那を見れば、その表情は驚くほど冷たい。
そんな俺をよそに、旦那は
「いーんだよ。今はそういう気分なんだ。じゃあな、沖田くんこそ風邪引かないように」
と言うなり俺の横をすり抜けていこうとした。
が、見過ごすはずもなく、俺は旦那の手をとった。









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