無理ってわかってるけど



するりと旦那の腕をすり抜けて、言った。


「俺も、好きでさァ」

「あれ、嫌いじゃないの?」

「気が変わったんでィ」

「そりゃ有り難いことで」


クスクス笑う旦那に、もう一度、今度は軽いキスをする。
あぁ、夢みたいだ。
あんなにも望んでいた関係が今、成立しようとしている。


「旦那、」

「浮気したら殺しやすからね」

「おっかねぇこと言うなよ」

「・・・・・・・」

「しないって。どれだけ片想いしたと思ってんの?」


旦那をぎゅうっと抱きしめる。


「やっぱり身を引くなんざ性にあってねぇや」

「何、だから俺のこと避けてたの?」

「えぇ、」

「沖田くんなら回り蹴飛ばしてでも諦めなさそうなのに」

「ははっ違いねぇ」


そうだ。それが俺なんだ。
らしくもなく身を引こうとしたから、こうなるまでに時間と疲労を多く要するはめになってしまったのだ。
自分らしくないことはするもんじゃない。
今回のことで痛いほどに学んだ。
ともすれば、後は押して押して押しまくるのみだ。
たった今、俺の辞書からは「引く」と「遠慮」という言葉が抹消された。
どんなことがあろうと話してなんかやらない。


「土方さんにも、チャイナにも、眼鏡にも、誰にも渡さない」


旦那は、


「銀時は俺のもんでィ」


ハッキリとそう言って、抱きしめる腕に更に力をこめる。
すると旦那も同じように力をこめて、


「上等」


と、眩しいくらいの笑顔を見せてくれた。

何度も遠回りして、互いに傷つき、辛い思いをした。
だからこそ、今度は幸せに。
今までのことが帳消しになるくらい、いちゃついてやらぁ。
そのためにはまず、報告からでさァ。


「旦那」

「なに?」

「メガネたちか、新選組、目の前のスナック。報告はどこからがいいですかィ?」


「んー、」


だから、


「とりあえずババアんとこいくか」


その笑顔で俺を照らしてくだせェ。


「じゃ、いきやしょう」

「おいババア」

「なんだい、昼間っから騒がしい。休憩中なんだけどね」

「うるせぇ。今日から沖田くんと」







「恋人同士になったから。一生な」




End








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