力になるから話してみなよ
「旦那ァ、誰にも動かせない強い想いの行き先はどこか知ってやす?」
いきなりそう聞いた俺に、旦那は怪訝そうに眉を寄せた。
「想いの行き先は・・・歪み。強すぎた想いは誰にも、愛する人にも受け入れて貰えずに、歪み始めるんでさァ」
「沖田くん、」
「俺はもう疲れやした」
「ね、沖田くん、」
「だから」
「沖田くんってば」
「殺してくだせェ」
「沖田くん!!!」
耐えられないとでも言うように旦那は叫んだ。
「・・・・何ですかィ」
「俺は、沖田くんを殺さない」
旦那は、そう言いながら刀を俺に返そうとしてきた。
仕方がなく俺は刀を受け取る。
「じゃあ、自分で死にやす」
刀を眺めながら、俺は笑っていた。
これから、旦那は俺のことが忘れられなくなる。
刀を自分の首に当てた。
後は、力一杯刀を動かすだけ。
旦那は、青ざめている。
そんな旦那に俺は微笑みかけた。
そして、
「さよなら、銀時さん」
刀を動かそうとした瞬間、
「沖田くん!!!」
旦那は刀を素手で掴んだ。
「・・・!?」
滴り落ちる赤い液体に俺は目を見開く。
「何やってんですかィ」
「それはこっちの台詞だ」
未だ刀を握るその手には、随分と力が込められてる。
相当な痛さだろうに、それでも旦那は痛みよりも怒りを露にした。
「その手を離しなせェ」
「絶対離さねぇ」
見つめあい、お互いが刀を握る手に力を込めた。
「なぁ、何をそんなに抱え込んでるわけ」
その目は、真っ直ぐに俺を捉える。
「何で俺を避けるの」
それは俺が愛して止まなかったもので、
「俺が、嫌い?」
刀を持つ手が震える。
その隙を旦那は見逃さなかった。
刃が手に食い込むことも構わず、力を込め俺から刀を取り上げた。
カタン
刀が下に落ちる音が耳に届く。
相変わらず、その目は俺を捉えたまま。
そして、少しずつ俺との距離を縮めた。
「・・・近寄らないでくだせェ」
俺は、ジリジリと此方へ来る旦那に苛立ちを感じる。
俺が一歩下がる間にもその距離はドンドン埋まっていく。
やがて、俺はスナックの壁に追い込まれてしまった。
「近寄るな」
さっきよりも強めに言っても、変わらず距離は縮まっていく。
嫌だ、来るな。
土方さんが好きなくせに。
俺なんか何とも思ってないくせに・・・!
「来るなあああああああっ」
無我夢中で逃げようとする。
がむしゃらに叫んで走り出そうとしたその時、
ぐいっ
「―――っ!?」
旦那に腕を引っ張られ、視界が真っ暗になる。
「ねぇ、俺に話してよ。その内を、さ」
そんな声が頭上から降ってきた。
聞かせて、沖田くんの心―・・