世界は狂ったんだ




今まで、自分がこんな風になるなんて思ってなかった。
いつも何処か線を引いて、少し離れた場所から見守る。
それが、俺のスタイルであり、大切な人を守る手段だった。
なのに、


いつのまにか沖田くんは線を飛び越えていて、無遠慮に俺に近づいてきて、
混乱する俺をよそに、心をぐちゃぐちゃにして去ってしまうのだ。
そんなのって、ズルいじゃないか。
自分ばかりが乱されて、心が沖田くん無しじゃいられなくなった。
守りたいやつらに心配をされる始末だ。


「沖田くん・・・・」


その名を呼ぶだけで、胸が苦しくなる。


「はっ、情けねぇ・・・」


いい年したオッサンが何を悩んでいるんだろう。
悩む余地なんてない。
これでいいんだ。


沖田くんは、まだ若い。
これから先、いろんな人に出会って、そこで出会った女と恋に落ちて、子供作って幸せに暮らせばいいんだ。
そこに俺が入るところなんて、ない。


最初から分かってたことだ。


全部、俺じゃ出来ないこと。
全部、他の誰かとすること。


だけど、


「・・・っ、く・・・・」


今だけは、泣かせてくれ。

そしたら、今度はちゃんと笑って見せるから。

だから、その時は、沖田くんも笑って・・・?










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