夢に踊らされていたような気分
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「どこ行ったんだろう・・・」
町に戻ってきたはいいが何処にいるかわかるはずもなく、俺は途方に暮れていた。
ずっと歩いていたせいか、足が痛む。
一向に見つかる気配もなく、そろそろ帰るか、なんて思い、体の向きを変えたら、視界には今まで望んできた姿が映った。
「沖田くん・・・!」
少し遠くにいるからか、沖田くんは俺に気付かない。
逸る気持ちをなんとか抑え、俺は沖田くんに近付いた。
そして、声をかけようとした瞬間、
「旦那なんか嫌いでさァ」
沖田くんはそう言って溜め息をついた。
「・・・・・・!」
心が張り裂けそうだった。
なんだ、これで避けられている理由が分かったじゃん。
早く帰ろう。
そう思っても体が動かなかった。
今、ハッキリと聞いたのに、否定したがってる。
嘘だ。そう思いたがっている。
どうしても信じたくない。
そう思った時には口が動いていた。
「また溜め息〜?」
努めて冷静を装いながら、声をかける。
突然のことにビックリしたのか、沖田くんは驚いたように俺をみた。
「なぁ、なんで最近俺のこと避けてんの?」
一番聞きたくて、一番聞きたくないこと。
意地悪したって、言って欲しくて、さっきのは嘘だって言って欲しくて、俺は今にも泣き出しそうだ。
でも、肝心の沖田くんはさっきから黙ったままだった。
黙って下を向いている。
「黙ってちゃあ分かんないんだけど〜?てか沖田くんて黙りこくるようなキャラじゃないでしょ」
それでも黙ったまま。
「おーい、沖田くーん」
やはり黙ったまま。
そんな沖田くんに段々イライラしてきた。
そして、
「だぁーっ!何なんだよ、ホントに!」
といいながら沖田くんの肩を掴もうとしたとき、
バシッ
「え・・・・?」
手に走る痛みと、心に刺さる衝撃。
どちらも俺を混乱させるには充分で。
俺は、走って行ってしまった沖田くんの背中を呆然とみていた。