遠ざけてごめんなさい
あの決意から数週間、1回も旦那と話すことなく過ごした。
見かけたら見つからないように別の道を通り、旦那がいそうな場所の近くにはいかなかったり・・・・・。
あからさまではあったが、とことん旦那と関わるのを拒んだ。
そうでもしなければ、俺はまた同じことを繰り返してしまう。
忘れるまでは、旦那に近付かない。
だが、忘れようとすればするほど色濃く記憶に残ろうとするその気持ちに、俺は正直参っていた。
「旦那なんか嫌いでさァ」
普段からそう想うようにしてれば嫌いになれる。
そう考えて毎日思ってみても、むしろ、その言葉の違和感に圧倒されて、結局はどれだけ好きなのか思い知らされるだけだった。
「はぁ・・・」
無意識のうちに溜め息をつくと、
「また溜め息〜?」
なんていう声が聞こえた。
そのこえの主は・・・・
「旦那・・・・・」
油断していた。
後ろからの気配に気付かないなんて・・・。
そんなことをぐるぐる考えていると、旦那はいつも通りの口調で、一番聞かれたくなかったことを聞いてきた。
「なぁ、なんで最近俺のこと避けてんの?」
「・・・・・・・」
「黙ってちゃあ分かんないんだけど〜?てか沖田くんて黙りこくるようなキャラじゃないでしょ」
「・・・・・・・」
あんまり近付かないでほしい。
理由も言わないでそんなこと言ったら、旦那は傷つくだろうか。
でも、理由なんて言えるわけがない。
言ったところで困った顔されて終りだ。
じゃあ他にどうすればいい?
旦那も、俺も傷付かない方法なんてあるか・・・?
答えは、否、だ。
だったら俺はひたすらこの気持ちを隠す。
「おーい、沖田くーん」
黙り続ける俺に、痺れを切らしたかのように、旦那は叫んだ。
「だぁーっ!何なんだよ、ホントに!」
そして、俺の肩を掴もうとしたが、俺はその手を払いのけた。
「え・・・・?」
そんな声をあげた旦那を無視して、走る。
旦那の顔は、見えなかった。