そんな風にはなりたくないって





 




「にゃあ」

「ん・・・」


体を起こすと、そこにはどこから迷い込んできたのか、猫がいた。
辺りを見渡せば、見慣れた机や書類が置いてあり、さっきみたことが夢だったことを教えてくれる。


「夢・・・・」


たとえ夢だったとしても、ダメージを与えるには十分すぎた。
頬には涙を流したあとがある。
そんな自分を自嘲するかのように笑う。

「情けねェ・・・」

夢の中で見た旦那は、とても幸せそうだった。
何度も土方さんに好きだ、愛してると言っていた。
俺にはきっと無理なこと。
土方さんには出来て、俺には出来ない。
弱々しい考えをもつ自分に、もう一度小さく笑った。
この間ちらっと聞いた、隊士たちの話のせいだろうか。

その隊士は、好きな人がいた。
だけどその好きな人は、他に想ってる人がいる。
だから、好きな人の幸せの為に、自分は身を引き、遠くから見守る。
そう言っていた。

そのとき、俺は好きならどんな手を使ってでも、自分のほうへ向かせればいい、そう思った。
ガキの頃から不思議で仕方がなかった。
小説や、ドラマなどでよく見かける、【好きな人の為に、身を引く】と言うことが。
何故、そんなことをするのか。
何故、自分の涙を、想いを隠すのか。

俺は、そんな風にはなりたくなかった。
自分の想いを隠さず、相手を幸せにする。
それが普通だと思っていた。


だけど、実際にその立場になってわかった。
簡単にできるはずがない。
そんなに簡単に出来るのならもうやってる。

無理矢理俺のほうを向かせたところで、拒絶されるのが目に見えていた。
もう、前みたいに接してくれることはなくなるだろう。

だったら・・・
俺は、旦那の幸せを願う。


溢れそうな想いに蓋をし、涙が出そうになるのを堪えた・・・。











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