3Z

走れ。走れ。
行き先はあの担任教師。
どこまでも器用で、どこまでも不器用なあの人のもとへ。

「先生!」

やっと追いついた背中は、少しだけ寂しそうで。そんなことを言えば自惚れんなと失笑されるのだろうから、何も言わない。だけど分かる。何せずっとアンタを見てきたんだから。
そう、見てきたんだ。なのに。
僕は弾んだ息を整え、目の前にいる銀八先生を睨み付けた。先生はしれっとした顔で頭を掻いてある。

「…なに」

そう切り出したのは先生だ。僕はそんな先生の胸板をドンと叩く。「ってーな」不満そうに呟いたそれは、僕の怒声によってかきけされた。

「何ですか、あれは!」

さっき、下駄箱で見た紙切れを思い出す。そこには確かに先生の字で、さいならと、そう書いてあった。

「何の嫌がらせですか。今度は何ですか。パフェですか?イチゴオレですか?それともジャンプですか?どれにせよこんな冗談は…っ」
「冗談じゃねェよ」

先生の一言に、ピシッと固まる。
じゃあ何だ、アレは。

「分かりやすく言わなきゃわかんねェ?」「…っ」

「別れよ」





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