心の声を聞かせて。

 



血を吐いた喉が痛くて休んだ

 (事実だけれど心配で)


名前を呼んでくれた事が嬉しい

 (思い出し笑いは変態の証?)


一応事の真相が知りたい

 (巻き込まれたのだ、権利は有る)








 





「…………奴良、へーき?」

「…、坂本く、」

「………熱出ちゃったね」


今日二度目の部屋で。
多分帰ってから熱を出したのだろう。
氷枕とほんのりと赤くなっている頬が痛々しい。


「…………奴、」

「ったく、人間のおめーはよええなー」

「鴆、くん…」

「ん?誰だぁオメエ。つか人間じゃねえかよ」

「ちょっと鴆様ぁ、坂本様が泣きそうじゃないですかぁ。脅しちゃダメですよぉ」

「………ぇ、いや…ぁの、」


聞こうと思って口を開いたと同時に。
見た目そのままのお兄さんが入って来て。
ぽん、と毛娼妓さんに薬を渡した後、どさりと床に胡座を掻いた。
ずぃ、と顔を近付けられて思わず尻込みした。


「ま、いーや。でリクオよぉ。お前、出入りに行ったことも、妖怪になったことも覚えてねえのかよ」

「……っ…」

「ぁ…、それ、は……」

「あー良い良い。覚えてねえってのは鴉から聞いてるしよ。でも、俺はあのリクオに三代目を継いで欲しいのよ」 

「……ぅ、ん…」

「まぁ、どうなるか判らねえけどよ。…っと、総会の時間だ、じゃあな。人間のオメーも」


あーぁ、と至極つまらなそうに。


「若ー!若様ー!!」

「ッゴフ…!」

「若、申し訳ございません!この雪女普通に学校に行っておりました!どんな罰でもう………ヒィィィ、40度以上ー!?」

「………お兄さん、大丈夫?」

「……ム、リ…」










「…すまねえな」

「………いえ。じいちゃんとは、話したかったから」

「けどな。こっから先は妖怪の世界だ。…戻りな」

「お兄、さん…」


襖の前。
身体の奥で、早く帰れと警鐘がなるのは。
やはり妖怪達が集まっているからだろうか。


「おお、坂本くん。鴆を連れて来てくれたのかい」
「………じいちゃん…」

「鴆、はよう入らんか。…坂本くん、リクオの傍に居てやってくれんかな」

「……おい、人間。礼代わりに後で呑もうぜ」


じゃあな。
そういって、お兄さんとじいちゃんは中に入って。
来た道を辿って部屋に戻る。

あぁなんか煩いな。
開け放している部屋からは、頭が痛くなるほどの清継の声。


「あらぁ、戻られましたよお」

「…毛娼妓さん……。奴良、大丈夫?」

「は、はは…ぅん、まぁ…」

「何故此処に居るんだね、坂本くん!?学校には来ていないだろう?」

「……休んだ。奴良の家から連絡あったから来ただけだよ」


遠慮なく頭の上に有る氷を下ろし、溶け掛けの塊を袋に入れて。
しゃり、と頭に乗せ直す。
歩いて来ていた首無さんに、でかい氷を渡して。


「…………それで?」

「なんだい?」

「………何か考えついたから来たんだろう」

「あぁ、そうなんだ!今度の連休のことなんだ!」

「連休?…あったっけ」

「……GW」


ため息を付いて。
毛娼妓さんにお茶をお願いして。
早く話しが終わらないかな。




 ⇒§




 

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