「すごく気持ちよくなるから吸ってみなよ」
「三回くらいがいいかな」

アーティはそう言う。キミがどんな状況にも歓喜をあげて自信過剰に、また無垢に笑っていたのは、こんな馬鹿げたモノのおかげでだったというのか。幻滅、というか落胆しましたというか。哀れというか。可哀想だと思いながら、好奇心に負けた。いや、自分はそう弱くないと思って試したそれは、気持ちいいなんてもんじゃない。焦点があわなくなった、と思ったら、頭が回転する、と思いきや思考も言葉も体も感覚も宙を舞う。これは相当ヤバい。

「…吐きそう」

全く動かない体。自分の意志じゃ体がいうことをきかない。蛍光灯の光が吐きそうで、目を瞑れば吐きそうで何をしても吐きそうで、

呼吸の仕方が分からない。頭がそれを忘れてる。気を抜くと、息をするのを忘れてる。息苦しくはないけれど、息を吸っても吸っても吸っても吸っても吸った気がしない!死ぬのか?寝ちゃいけない、私は死んでしまうよ。私は死にたくない。今は昼なの夜なのか?

「…ねぇ、いつ効き目がきれるんだい」
「六時間かな、」

ふざけんな、糞野郎、泣きたいのになけない。生き地獄じゃないか。意味の分からないイメージが3D映像で脳みそのなかをかき回す。地面に、コンクリートに足をつけさせてくれ。

口の中に水分がまったくなくなって、そろそろヤバいと思い体を起こすと四回吐いた。胃液しかでない。でも口の中が潤ったコトは救いで。

アーティは一度もこちらを気にかけず、相変わらず意味の分からない絵を描いている。アーティ曰わくコレを吸ったとき、インスピレーションが働きまくって最高だとか。馬鹿げてる。

彼がこちらにきた。私のカラダを弄っている。やめてくれ。

「これ吸った後のセックス…」

「最高だよ、ギーマさん。」

思考が完全にもってかれたところで、


シャットアウト





目を覚ますと、普通に呼吸をしていて、つまり生きていた。自分が生にどれだけしがみついていたか実感する。口に残った胃液の苦さが生きた心地がしないあの時間を明確に思いださせる。

「アーティ、お前、相当イカレてるぜ」



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2011/02/14
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