確かにそうかもしれない。
あたしの中でその気持ちが宿った瞬間から、これは恋なんだ。

どこまでも彼をすきだと思える、感情。

「咲姫ちゃんも、そうなの?」

ポ、と赤く染まる咲姫ちゃんの顔。
見えている肌すべてが赤い。

「…………はい」

項垂れて、蚊の鳴くような小さな声で、小さな動作で、彼女は肯定を示した。

そんな動作が愛らしくて。
かわいいなぁ、と思ってしまった。

+ + + + + + +

水無月くんに迎えられて、咲姫ちゃんは帰っていった。
帰る前。彼を押し止めてあたしの元へやってきた彼女は、こう言った。

『自身を持ってください。先輩は、綺麗でかわいくて、やさしいんです。絶対に諦めたりしないでください。――自分の気持ちに嘘をつかないで。後悔しないで』

凛とした眼差しは、彼女の武器だ。
言うことを聴かなければならない気がする。

パンッ!

頬を自分の手で叩いて気合いを入れる。
あそこまで咲姫ちゃんに言われたんだ。がんばらなくちゃ。

後悔しないように、自分の気持ちをきちんと言う。

それがどれだけ難しいことか、あたしも彼女も理解してる。
でも、言わなかったら、どれだけ後悔するか、それも彼女は理解しているから、あんなことを言ったんだと思う。

「逃げないでね、湊」




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