「っ………」

慌てて口を自分の手で覆う。

あの野郎……!

野次馬根性ではないものが――所謂怒りというもの――が湧き上がる。

体育館裏の地べたにふたり座り込んで、熱烈な告白をされていたのは、あたしの怒りを程よく刺激してくれる生徒会長さまだ。
ったく、あいつは会議をサボってこんなとこで油を売っていたのか。

「湊先輩はあたしのことぉ、すき?」

ちろりと見るとやわらかな四肢の少女が湊に擦り寄っていた。
湊の顔は見えないけど、どうせニヤニヤした顔で少女を見ているに違いない――あっ、彼女、1年の橘千花(せんか)ちゃんだー。
そーいやークラスメイトがこの子に彼氏、分捕られたーとか言ってたなー。

魔性の女ってヤツ?

おいおい。大事な女がいるんじゃなかったのかい、湊くん。

「どう思う?」

「やだぁ、質問返しぃ?湊先輩、意地悪ぅ」

「ははっ」

なーにが“ははっ”よ!

あんたのすきな奴に吹聴してやる!わからないけどね!
わからなくても噂好きな友達に吹聴して噂流してもらうんだから!




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