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「あれ?なんか不機嫌?」

カタカタと淡々にキーボードを叩いていたら、見慣れたチョコレートブラウンの髪が視界を掠め取った。

あぁ、もう…!

「何?用?」

「違う。休憩しようと思って」

「……」

この男は。

「か・い・ちょ・う〜〜?お仕事は終わったんですか〜?じゃぁ、あたしの幻覚ですかねぇ。会長の席に見えるこんもりとしたチョモランマに等しき量の紙束は」

「いいじゃん。休憩も大切だろ?」

「“休憩”があんたの仕事の大半になってると思うんだけどね」

いいからいいから。

とわけもわからない理屈で手を取られて、カウチへと誘導される。

その手にドキリとしてしまったのは不可抗力だ。

「蒼ー?」

カラカラと控えめな音を立てて、生徒会室の扉が開かれ、シルバーグレイの髪がさらりと揺れる。

「咲姫」

カタカタと先程のあたしと同じく淡々と作業をしていた、麗しい美青年が腰を上げる。
いつもは無表情に仕事をこなしている彼だけど、彼女の前ではとてもやさしげな、安心したような笑顔を見せている。

うん。やっぱり美青年の笑顔って心の潤いになるよねー。

「それじゃあ」

「おー。気をつけて帰れよー」

ひらひらと湊が手を振り、水無月くんがペコリと頭を下げる。

「カイチョーも必死ですね」

必死?

ひとり首を傾げていると、水無月くんがこちらにも頭を下げてきたから、ひらひらと手を振る。
咲姫ちゃんもふわりとお花満開の笑顔で手を振ってくれた。




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