渡してくれた人にお礼を言おうと思って、その人に視線を向けると、そこには。 「お、オオカミ?」 そんなはずないよね。確かオオカミってこんなところにはいないよね!? 違うよね!ちょっと大きなワンちゃんなだけだよね! 「オオカミだけど」 あっさりと驚愕の事実を仰らないで下さい! 甘えるように灰色の毛並みのオオカミさんがあたしの脇に鼻をこすりつけてくる。 ふわふわだぁ。いやー、気持ちいいっ!おうち連れて帰りたぁい! 美青年そっちのけでオオカミさんのすべやかな毛並みを撫でる。 「さすが、狩猟の女神」 「え?」 「電話」 「あ、うん」 あたしの手にこすり付けてくる鼻を撫でて、片手で彼のケータイを操作する。 コール音が鳴ったと共に彼の耳にケータイを当てる。 「もしもし?俺だけど。――あぁ、今動けねぇから迎えに来い」 ず、随分とふてぶてしい態度ですこと。 「それと。あいつを見つけた」 ?見つけた? 通話が終わったらしい彼。添えていたケータイを通話終了ボタンを押して、オオカミさんに渡すと、彼は(どちらかというとオスに見えるのだ)利口にも美青年の黒の革ジャンにあるポケットに器用に仕舞いこんだ。 「ども」 「あ、いえ」 完全にあたしは変えるタイミングを逃してしまったようだ。 (あたしの心の中の)秒針がちっ、ちっ、と進む。 甘えてくるオオカミさんに頬を摺り寄せる。 この子のお腹で眠ったら、絶対安眠できると思うなぁ。 [*←]|top|[→#] |