悠の不思議そうな声が聞こえたと共に、あたしは何かの上に降ろされる。
黒のレザーのソファだと気づくのに数秒。(専ら烈火先輩の寝床になっていることは言うまでもない)

そんなあたしを見てせせら笑うが如く。

「相も変わらず見事なマヌケっぷりですね先輩。お似合いですよ」

「ナニがお似合いですよなの!」

「精々肉食動物に喰われることしか脳がない草食動物になってガタガタ震えてればいいんですよ」

くぅ…!このガキ〜〜〜!

「黙ってればなによ!しーまのばかっ」

「語彙が少ない人ほど、最初の悪口はそういうもんですよ」

むむむぅ〜!

「でも、悪口のレパートリーが少ないことはいいんだよ。
美月が“メス豚!”とか“どこの馬の骨ともわからないクソ野郎”だとか“疫病神!”、“下等生物”、“腐れ外道”とか言い出したら、俺立ち直れないよ」

陽斗さーん、あたしのイメージってそんなんなんですか?
確かにあたしは語彙少ないですけど、それだけ思い浮かぶ陽斗が怖いよー?

「で、今回の理由は」

一ノ瀬狼が冷静な声で告げる。
今回“の”ってことは確実に何回か繰り返してるのね。

「この間ぁ、土曜日だったかな。雷いなかったときあったでしょぉ?」

うんうん、と頷く後から組。(つまりあたしと陽斗、一ノ瀬狼、烈火先輩ってこと)

「そのとき私用だ、って言って出て行ったんですよ〜。結乃先輩も雷先輩の家のこととかあるし、黙認してたんです」

「でも居たのよ。雷がラブホテルから出て来るのを見たって言う女子生徒が」

「それで確信したんですよ結乃先輩は。雷先輩が来たと同時に手当たり次第に物投げまくって」

さっきの言葉が、現実に。





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