――ピシャン!

慌てて生徒会室の扉を閉める陽斗。
い、いったいなに?

「美月、ここは危険だ。ほとぼりが冷めるまで近くで待機していよう」

珍しく真剣な陽斗の眼差しの中には焦りが混ぜ込まれていた。
生徒会の中でなにが起こってるの!?

陽斗に引っ張られて生徒会室の前から退却しようと足を動かしたところで、先程と同じ音がして、驚いて振り返れば、

「ぎゃぁ!生首ぃ!」

あたしの足を掴む生首が落ちていた。
目の前にいる陽斗に思わず抱きつけば、抱えられて足の圧迫感が消える。

生首を見れば、一ノ瀬狼が生首の手を、あからさまに体重をかけて潰していた。

「ら、雷先輩……?」

陽斗に抱えられながら声をかければ、床とキスしていた雷先輩の顔が持ち上がり、力ない笑顔を浮かべた。

「やぁ、美月。それから狼、俺の手に何をしているんだ」

ぎゃぁ!と一際大きな声を出して、また床とキスする。
そんなに床がすきなんですか。

「ら〜〜い〜〜〜?」

その恐ろしい声に顔を上げれば、どす黒い笑顔を浮かべた結乃先輩が仁王立ちで立っている。
情報収集に長け、浮気を決して赦さないヘラさまご光臨。

なぜだろう。結乃先輩の手に死神の鎌があるような気がするのは。

「ま、待ってくれ!な、なにか誤解がっ」

「誤解ですって〜?いい度胸してるわね雷。あたしに嘘吐こうだなんて」

極上の微笑み。
それがいまや恐ろしくて堪らないシロモノになってしまった。

そんな結乃先輩を見るのが怖くて、思わず陽斗の肩に縋りつく。
彼の太陽色の髪に頬を埋めると、くすぐったくなるけど、いまはとりあえず我慢。

ゆさゆさと揺さぶられて、陽斗が歩いているのがわかる。

生徒会室の中に入ったのかな。勇気あるなぁ陽斗。

「待ってたヨン。……美月ナニしてるの?」





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