まずい、と思うより先に、
バッシャーンと水に叩きつけられる。
背中に尋常じゃないくらいの衝撃が走った。

「…………っ」

思わずヴィクトリアは息を呑んだ。
肺が圧迫されて、息をすることが出来ない。

その瞬間ヴィクトリアは水に沈んだ。
足が攣ってしまったのだ。

突然のことに驚いてしまって、口がパカっと開いてしまう。
空気がない。呼吸が出来ない。

苦しい……っ!

思わず死を覚悟する。

父に思い残すことはないけれど、
母や姉。親友のマイアにはやっぱり謝りたかった。

こんな不出来な女でごめん―――と。

刹那。

腕を引っ張りあげられた。
圧迫されていた肺に空気が入り込んでくる。

その急激な空気に身体が反応し、咳き込む。

「ゲホッ! コホ…」
「大丈夫?」

そう男性特有の低い声がヴィクトリアの耳に響いた。


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