そんな騒ぎの中心人物は。
湖を渡るためのボートを用意していた。

しかし、ヴィクトリアの性別は女。
“山猿”と評されようと、女であることには変わりない。

なので予想外に時間がかかってしまった。

焦っているのも相俟って、うまくボートを引きずることができない。

「もう! 女って不便ね!」

今度は鍛えてみようかと画策する。
ムキムキになって父を泣かせてやろう。

…ヴィクトリアはやはり父親泣かせなようだ。

取り敢えず湖にボートを浮かべそれに乗り込んだ。
そして、オールを回すとすいー…と動き出す。

「どこに行こうかしら。まずは働き手を見つけなくちゃね」

確実に家には帰らないつもりらしい。

すると大声が聞こえてきた。
警備隊だ。もうバレたのだ。

焦ってなぜかヴィクトリアは立ち上がった。

するとボートがゆらりと揺れてしまった。


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