そんな騒ぎの中心人物は。
湖を渡るためのボートを用意していた。
しかし、ヴィクトリアの性別は女。
“山猿”と評されようと、女であることには変わりない。
なので予想外に時間がかかってしまった。
焦っているのも相俟って、うまくボートを引きずることができない。
「もう! 女って不便ね!」
今度は鍛えてみようかと画策する。
ムキムキになって父を泣かせてやろう。
…ヴィクトリアはやはり父親泣かせなようだ。
取り敢えず湖にボートを浮かべそれに乗り込んだ。
そして、オールを回すとすいー…と動き出す。
「どこに行こうかしら。まずは働き手を見つけなくちゃね」
確実に家には帰らないつもりらしい。
すると大声が聞こえてきた。
警備隊だ。もうバレたのだ。
焦ってなぜかヴィクトリアは立ち上がった。
するとボートがゆらりと揺れてしまった。
-4-
[*←]|top|[→#]