afterwards



「はれ?(あれ?)」

思わず、ほんとに思わず。
あたしは近づいてきていたブライアンの唇を手の平で押さえつけてしまっていた。
自分自身の行動に驚いていると、ぺロリと湿ったものが手の平を舐めた。
言わずと知れた、

「何するのよ!!」

ちろり、と大理石のように白い頬に取り付けられた口から出た赤い舌。
否応なしに赤くなっていくあたしの頬。

「それは俺の台詞。どういうつもり、ヴィクトリア?」

にこりと笑ってるけど、目が据わっていることに気づく。
怒ってると認識した瞬間―――。

「ぎゃぁ!」

芝生の上に押し倒されてしまった。
あたしの耳のすぐ傍に両手があって、まるで囲われているよう。

「俺言ったよね? ヤドリギの下に女の子がいたら、キスしていいって」

「そ、それは聞いたけど!」

そう今日は、イエス・キリストの生まれる一日前――つまり、クリスマス・イヴと世間一般では言われる日。
まぁ、あたしはそんなことを気にするタイプではないから、知らなかったのだが、、、

問題は目の前の男であった。

「なのにどうして拒むわけ?」

いえいえ。拒んだわけでは…。
ほんとに、ついうっかり。本能的に。

きっとそう言ったところで、こいつは絶対に納得なんかしない。
(これは予想でもなんでもない。ただの事実だ)
もうすっかりブライアンとのたかが数ヶ月の間で身についてしまった、彼への知識。

「………する、の?」

「?」

擦れた声があたしから発せられた。
弱々しく。――まるであたしが“女の子”だと主張するような涙声。
(確かにあたしは生物学上では女だけど、、、)

「他の人にも、こんなこと、する、の……?」

どうして自分がこんなことを訊いているのかまったく見当もつかない。
目から零れ出そうになっている泪も。
この“自分”という器から溢れ出ようとする感情も。
わからないの――…。

ついに涙腺が崩落しそうになった瞬間。
ブライアンに抱きすくめられた。

自然と硬くなる身体。
肩口に沈むブライアンの手触りのいいプラチナブロンドがあたしの頬を掠めてくすぐったい。

「、ブライアン?」

あたしをきっちりと抱き締めて、何も言わないブライアンが心配になって声をかけると、ゆっくりとその美顔があたしの瞳に映りこんだ。
うっとりするほど、整った顔。
アーモンド形のバイオレットは、まるで星々をやさしく包み込む夜の闇のようで。
意外と小顔。おまけに女中たちが毎朝、一生懸命磨いている大理石も真っ青になりそうなほど色白。
もちろんニキビ痕もないし。

(性格を除けば、)完璧な存在―――。

それだけに、怖い。


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