「もうっ! これどーすりゃいいのよ!!」
一方ヴィクトリアは姿見でその“印”の場所を見つけうんうん唸っていた。
隠すにしても。
チョーカーで隠し辛い場所にあるし。
暑いから首のあるのドレスは着たくない。
あんにゃろう…!!!
これを隠さないと女中たちに冷やかされるし、
国王たちには確実に“やっと婚約を認めたのだな! 今すぐにでも挙式を挙げよう!”とかなんとか言って勇んで教会へ連れて行こうとするに違いない!
けど、首のあるドレスは絶対、絶っッ対! 着たくない!!
「どーしたの。ヴィクトリア」
「ブライアン!? いきなり抱きつかないで!」
いきなり首に腕を回され、引き寄せられ中性的に整った顔がヴィクトリアの頬にじゃれつくように触れる。
首に回された腕を気にしながら振り返った。
「ただいま」
「……おかえりなさい」
向けられたその眩しいくらいの笑顔に仕方無しに言葉を紡ぐ。
太陽だって直射日光だと目が痛くなるし、残像が残るのよ!
眩しすぎて痛い!!!
「あれ? この男は?」
目敏く(?)ディーファに気がついたブライアンが飄々とした口ぶりで訊ねる、が。
ヴィクトリアも気づかないくらい小さく首に巻きつかれた腕に力が籠った。
「ディーファよ。従兄の」
その瞬間、一瞬だけ。ブライアンの面差しが鋭くなった気がした。
しかし目を瞬く間に元の笑顔に戻る。
少し顔を強張らせながら。
「?」
「天気がいいから外で日向ぼっこでもしよう?」
元々ヴィクトリアより身長の高いブライアンがヴィクトリアの顔を覗きこみながら提案する。
「え、暑くない?」
「木陰で寝転べば風通しがよくて気持ちいいよ」
それは確かに気持ちよさそうだ。
意外と草木の間を吹き抜ける風は心地良さそう。
そこでヴィクトリアは今まで黙っていたディーファに声をかけた。
「ディーファも一緒に……」
「彼はいいから行こう?」
渋々ながら、ヴィクトリアはブライアンに手を引かれ歩き始めた。
――そして、部屋にはディーファだけが取り残された。
He was left all alone in the room.
(彼は部屋に1人取り残された)
Crimson Trail
(そう簡単に渡すわけないだろ)